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【アジアで会う】吉野慶一さん Dari K創業者 第339回 カカオを通して世界を変える(インドネシア)

よしの・けいいち 1981年生まれ。栃木県出身。オックスフォード大大学院卒。モルガン・スタンレーで金融アナリストとして勤務。2011年にカカオ豆の輸入・卸売り、チョコレートの製造・販売を行うDari K(ダリケー、京都市)を創業、16年にインドネシアに現地子会社を設立した。京都に直営1店舗を運営。世界第3位のカカオ生産量を誇るインドネシアでの事業を通じて、生産者の努力が報われる社会の実現を目指す。

Dari Kの吉野慶一社長(同社提供)

Dari Kの吉野慶一社長(同社提供)

1月末からコンビニ最大手「セブン―イレブン」でチョコレートドリンク(税込み300円)とチョコレート(同864円)などを数量限定で販売した。大手コンビニエンスストアと組むことでインドネシア産カカオ豆を使用した商品は、一気に全国の消費者に広がった。コンビニの店頭販売価格としては高めの設定だったが、品質の高さを評価され反響は予想以上に大きかったという。今後も販路の拡大は必要としながらも、吉野社長は「目指したい社会や志が一致する取引先を見つけることを優先したい」とソーシャルビジネス企業の創業者として思いを語る。

■カカオ価格はニューヨークが決めるのか

カカオ豆はいわゆるコモディティーと呼ばれる商品であり、投機が絡んだ米ニューヨークの国際先物市場によって価格相場が決定される。つまり生産農家が豆の品質を高めても、実際の価格が上がるとは限らない。農家は市場価格を知ることはなく、生産意欲も生まれない。この努力が報われない仕組みを変えたいというのが事業を始めようとしたきっかけだった。

「人間は生まれながらにして平等ではないと思うんです」――。地方で生まれ、学生時代に家庭環境で苦労した経験などからそう感じている。その分、夢やゴールを求められる環境があることが大切だという気持ちは強い。この経験が、努力しても報われない環境にあったカカオ豆の生産農家を変えたいという思いにつながった。ダリケーがただ単に農家から高値でカカオ豆を買い取るのでは、持続可能にはならない。そこで一般的なカカオ豆製造の工程にあった「発酵」の作業をインドネシアでも導入した。カカオの風味を引き出す「発酵」の作業は、手間はかかるがカカオ豆にそれまでよりも付加価値をつけることができた。ダリケーの契約農家に生産方法を指導し、農家自身が製品の価値を高める仕組みを作った。ダリケーの事業は初年度から黒字を達成できた。

大規模なプランテーションを基本とする中南米などのカカオ豆農家と異なり、インドネシアでは小規模な農家が多い。その分、意欲のある農家を後押ししやすい。ダリケーは現在、500軒の契約農家を持つ。吉野社長は「3年以内に1,000軒規模に契約農家を増やしたい」と意欲的に語る。

■創業10周年、地産地消を目指して

ダリケーは今年で創業10周年、インドネシア法人カカオ・インドネシア・チュムルラン(KIC)は5周年の節目の年になる。近年のSDGs(持続可能な開発目標)や、企業の環境・社会・企業統治(ESG)への意識の高まりが追い風となり、事業に共感する人が増えていることに確かな手応えを感じている。新型コロナウイルスの影響が続き、人の交流が制限されてはいるが、以前実施していた、日本人をスラウェシ島のカカオ農園に招くツアーのように、生産地であるスラウェシ島の自然、気候、人々などへの理解を深める活動を続けたいという。

海の向こうの農園で作られたカカオ豆は日本人にとって遠い存在だが、一般のインドネシア人にとっても身近なものではない。自国に原材料がありながら高価な輸入チョコレートを購入する人は少なくない。ダリケーは地産地消の実現に向けて、数十時間かかるカカオ豆の磨砕プロセスを短縮し、カカオ豆を入れてすぐにひきたてのカカオマスが楽しめる機械を開発中だ。まずは日本国内での展開を予定しており、既にカフェや飲食店から問い合わせを受けているという。

インドネシア産のカカオ豆を日本のカフェでひいて、鮮度の高いチョコレートを楽しめる。産地インドネシアと消費者の距離がぐっと近くなる。そんな日が近くまで来ている。(インドネシア編集部・和田純一)


関連国・地域: インドネシア
関連業種: 社会・事件

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