ミャンマーの政治経済に詳しい政策研究大学院大学の工藤年博教授(東南アジア研究)は17日、日本アセアンセンター主催のウェブセミナーで、2021年に始動する予定の第2次アウン・サン・スー・チー政権では、経済成長施策により力点が置かれると見通した。
スー・チー氏が率いる与党・国民民主連盟(NLD)は、11月8日に行われた総選挙で上下院の改選議席の83%を獲得し、15年の前回総選挙を上回る地すべり的勝利を収めた。工藤氏は、国民に軍事政権への強い拒否感が残ることに加え、過去との比較で生活水準の向上が実感されていることがNLDが勝利する要因になったと説明。新型コロナウイルスの感染拡大への対応を含め、短期的にも課題が山積する中、「次期政権では、より早く成果を出せる経済成長に力点が置かれていくとみている」と述べた。
また、民主化進展の妨げになっている現行憲法の改正については、国軍系野党・連邦団結発展党(USDP)が大敗し、国軍にとって「頼れない存在」になったことで、国軍側の改憲協議への対応がより慎重になると分析。与党との関係に緊張感が生まれる懸念もある中、来年に定年を迎えるミン・アウン・フライン総司令官の去就が大きな焦点になると語った。
5年後に80歳になるスー・チー氏の後任に関連しては、「現状ではおらず、同じようなカリスマは育成できない。スー・チー氏自身が指名するしかない」と指摘。「将来的には、党としての組織を近代化して政権を担える仕組みをつくる必要があるが、スー・チー氏が5年後に健康であれば続投するのではないか」と予測した。
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