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【アジアで会う】市川俊介さん ヤター・ミャンマー社長 第320回 ミャンマー発スーパーアプリを(ミャンマー)

いちかわ・しゅんすけ 1979年生まれ、東京都出身。父母ともに俳優。2006年まで役者、シンガー・ソングライターの夢を追う。都内のタイ料理レストラン、GMOインターネットを経て、18年にミャンマーで飲食店紹介アプリ「yathar(ヤター)」を立ち上げた。成蹊大学卒、レストラン時代の上司だったタイ人の妻との間に1男。

利用者数10万人を抱えるミャンマー最大のグルメアプリ、ヤター。6月には人工知能(AI)を搭載したヤターの提案機能を応用し、美容ショップの紹介を開始。会員制交流サイト(SNS)広告のコンサルティングや、市場調査などにも手を広げる。来年早々には病院紹介の機能も追加予定だ。

こう聞くと、気鋭のIT起業家の顔が思い浮かぶかもしれない。だが、パソコン片手にサービス一つ一つを説明する口ぶりは、常連客にお勧めメニューを紹介するレストラン店長のそれ。俳優としての最後の役は、故・坂本九さんだったと聞いて、昭和のスターの笑顔がだぶった。

曲折が糧になり花開いてきた半生だ。「家賃を半年滞納し、酒に溺れた」芸能界での挫折は、就職先のレストランでのがむしゃらさにつながった。来店客一人ひとりにあいさつして回り、ファンを増やした。月の売り上げは100万円ほど伸びたという。

成長を求めて飛び込んだ次の舞台は、GMOインターネット。「ネットを使う仕事が、世界の人たちに一番影響を与える仕事になる」。ネットの知識は皆無で「プロバイダー(インターネット接続事業者)」の意味も知らなかった。配属先のコールセンターで、サービス利用者からの苦情の嵐にさらされた。

■「熱意だけはあった」

「もう悔しくて…」。睡眠を3時間に削り、技術を学んだ。当時の同僚だった内山光さん(現ヤター最高技術責任者=CTO)は「ものすごい熱意だけはあった」と振り返る。

必死で食らいつく姿が、海外進出を考えていた上層部の目に止まった。バックパッカーとして世界を回った経験が買われ、海外市場の切り込み役に抜てきされる。ベトナムを皮切りに、東南アジアで次々と拠点を立ち上げていった。

そこで民政移管が始まったばかりのミャンマーと出会う。乾期真っ盛りのヤンゴン国際空港に降り立ちターミナルを出ると、むき出しの赤土の路上に石が転がっていた。かと思えば、屋台で注文を取りに来た少女がiPad(アイパッド)を手にしている。過去と未来がないまぜの街に浸かった。「この国には夢がある」――。グルメアプリを切り口に「アジア最後のフロンティア」での起業を決意する。

■店舗網を生かしビッグデータに

15年にGMOを辞し、一家でタイ・チェンマイに移住。ヤンゴンへ出入りし、ヤター構想を温めた。ただ、アプリの開発には資金がいる。コンサルタントとして糊口をしのぎつつ、ヤターを世に出すまで3年が経っていた。

ヤターが目指すのは、生活のあらゆる面に浸透し、ビッグデータを収集できる「スーパーアプリ」。そのためには5,000店に達した協力店舗をさらに増やす必要がある。今後は、店内で使う公衆無線LANや、POS(販売時点情報管理)システムなどもセットで提供し、協力店舗の囲い込みを図る。問題は、先行投資がかさむ点だ。東南アジアの雄、グラブなどもミャンマー市場に進出しており、スピードを緩めることはできない。19年半ば、再び資金集めに入った。

だが日本の投資家にとって、ミャンマーは未知の国。一時帰国してはベンチャーキャピタル(VC)を数十社まわる行脚を繰り返すも、出資は決まりそうで決まらない。自らの役員報酬を払えなくなるまで追い込まれたが、「市川さんだけはあきらめなかった」(内山CTO)。事業会社数社からの68万米ドル(約7,200万円)の出資に、1年がかりでこぎ着けた。

新型コロナウイルスで、ミャンマーの外食産業は苦境にあえぐが、多角化を通じて収益は伸びている。ただ、新型コロナの感染防止策のため3月からヤンゴンに入れない日々が続き、焦燥感は増す。自信と不安で揺らぐ日々の中、オンラインサロンを始めた。「包み隠さず話して、何かを生み出すコミュニティーを創りたい」。今の夢は、ヤターの東南アジア展開。思いを共有できる仲間を募り、上を向いて歩き続ける。(タイ地域事務所・渡邉哲也)


関連国・地域: ミャンマー
関連業種: 医療・医薬品IT・通信サービスマクロ・統計・その他経済

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