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【アジアで会う】ジブおじさん シンガポール在住ユーチューバー 第304回 動画で両国の架け橋に(シンガポール)

Ghib Ojisan(ジブおじさん=本名非公表)1990年生まれ、大阪府出身。2歳から高校を卒業する19歳までを米カリフォルニアで過ごす。慶應義塾大学を卒業後日本で就職するも、2017年に退職。世界1周を目指して旅に出る。路上でのギター弾き語りなどをしながら27カ国・地域を回り、動画サイト「ユーチューブ」に投稿を続けた。シンガポール人女性との結婚を機に19年、シンガポールへ移住。現在は自身の会社を立ち上げ、日本とシンガポールをつなぐための事業を模索している。

日本以上に治安が良いとも言えるシンガポールで昨年12月、「最も治安の悪い地区」をリポートする日本人ユーチューバーが話題となった。にっこり笑った顔が魅力的なジブおじさんその人だ。

初めてユーチューブに動画を投稿したのは17年7月。世界旅行の途中で訪れたウズベキスタンの街で、有名ゲームの楽曲「ザナルカンドにて」をアコースティックギターで演奏した。その後も、旅で訪れた各地でスタジオジブリのアニメ映画の主題歌やテーマソングなどを弾いては、投稿することを続けてきた。

当初はほとんど再生もされなかったが、18年6月にギターを弾く動画の一つの再生回数が上昇。ユーチューブ公式チャンネルで「急上昇クリエーター」に選出された。100人程度だった当時のチャンネル登録者数は、2週間で2万人まで急増した。日本人ユーチューバーの中でも、まれな伸び率となった。

ギターを弾きながらの旅の中で、シンガポールでの路上ギター演奏が人生に一つの転機をもたらした。「実は、シンガポール人女性との結婚を機に、この国に移住しました」とはにかみながら打ち明けてくれた。ギター演奏に足を止めてくれた彼女と恋に落ちたという。

移住した当初は現地企業で会社勤めもしたが、満足した段階で退職。自身の会社を設立し、ユーチューバーとしての活動に本腰を入れた。

シンガポール移住後は、旅、ギターだけではなく、シンガポールを題材にした動画を多く制作している。食べるのが好きということで、サブチャンネルとして「食」をテーマにした「Taberu Travel」も運営している。

デビュー、結婚、会社設立と順調なようにも見えるが、早々に急上昇クリエーターに選出された分、その後の低迷に苦しんだ。旅とギターでブレークしていたため、ひとところに定住し、シンガポールの食べ物や街に関する動画を投稿するようになると、ファンからのネガティブな反応が増加。「もっとギターの動画が見たい」「旅に出てほしい」といったコメントが寄せられ、動画を投稿する度にチャンネル登録者数が減少した。

シンガポールに住んでいるにもかかわらず、現地のコンテンツを投稿することにためらいを覚えた。興味のある現地のディープなカルチャーや、ギターや旅以外のコンテンツを制作することと、視聴者の反応との間で葛藤する日々が続いた。「とにかく辛かった。」

シンガポールの話題を中心とする今のスタイルに自信が持てたのは、冒頭で紹介した動画が現地コミュニティーでウケてからだ。「シンガポールで最も危険な場所『イーシュン』に潜入」という動画では、外国人の在住者は少ないであろう北部イーシュンを取り上げた。過去に不思議な事件などが起きたこともあるが、いたって普通のシンガポールの庶民が暮らす町だ。

当時の心境についてジブおじさんは「シンガポール人のユーチューバーですら取り上げないであろう、誰もやったことのないネタで動画を作ろうと思いました」と語る。流ちょうな英語にシングリッシュ(シンガポール英語)、日本語を交えながら、イーシュンの通りやホーカー(屋台)を紹介した動画は、瞬く間にシンガポールのネットで人々の注目を集めた。ネットニュースでも話題になり、シンガポールやマレーシア、米国の視聴者が一気に増えたという。

現在のチャンネル登録者数は15万人以上。海外の視聴者が増えた分、日本人の割合は3割程度に低下した。ただ日本語での発信を止めるつもりはなく、英語と日本語を交えながら話すスタイルを今後も続ける。その根底には「海外に出ることをためらっている日本の視聴者に、勇気をもってもらえるようにしたい」という思いがある。

日本の会社を辞め、海外へ旅に出て、自分自身もそうやって人生が良い方向に回り始めたと感じる。「ジブおじさんの動画を見て、旅に出てみました!」視聴者のこうした反応が本当にうれしいという。

新型コロナウイルスの影響で外出が制限される中、現在はシンガポールの自宅で制作した動画を精力的に投稿している。話題の食べ物の話から、日本在住のシンガポール人とのオンライントーク、新型コロナの集団感染が起きた外国人寮に入居する友人とのビデオ通話など、話題は軽いものからシリアスなものまでさまざまだ。

「日本のことをよく知っているシンガポール人はたくさんいるが、その逆は少ない。シンガポールと日本の関係は一方通行だ。ユーチューブやその他の活動を通じ、日本とシンガポールの架け橋となっていきたい。」ジブおじさんは輝く笑顔でそう語った。(シンガポール&ASEAN版編集・鈴木あかね)


関連国・地域: シンガポール
関連業種: 社会・事件

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