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【アジアで会う】高木正雄さん タカギ・マネジメント・オフィス(TMO)所長 第296回 在タイ20年、この先も一期一会を(タイ)

たかぎ・まさお 1950年生まれ。奈良県出身。桃山学院大学卒業(ヨット部所属)。大阪商工会議所(大商)に30年間勤務した後、2003年に独立して日系法人TMOを設立し、17年間運営。00年4月~03年4月は大商から盤谷日本人商工会議所(JCC)に出向し、事務局長を務めた。

バンコクの高架鉄道(BTS)の駅を下り、高層ビルを抜けて住宅街を歩くと、高木さんの自宅兼オフィスに着いた。「ここの雰囲気が気に入って、もう十数年は住んでいます」。いまなお都市化が続くバンコクで、懐かしさを感じさせる一戸建て住宅の庭には、背が高く緑の実を付けたマンゴーの木があった。地に根を張る姿が、タイに渡って今年で丸20年を迎える高木さんとどことなく重なった。

高木さんはJCC事務局長の任期を終えた03年4月にタイで起業した。52歳だった。帯同していた小中学生だった息子2人の「タイに残る」という言葉に背中を後押しされた。TMOでは、大商での経験やJCC時代の人脈も生かし、タイや周辺のメコン地域の市場調査や日系企業の進出支援、人材育成事業などを手掛けてきた。「製造業のタイ進出のピークが過ぎた」という近年は、環境関連サービス事業の市場調査を行うなど事業の幅は広がった。

印象に残った仕事は、07~08年にかけて実施した「東西経済回廊」の活用方法を検討する物流関連のプロジェクトだという。物流の効率化を検討するための調査でメコン地域を奔走する中で、タイとベトナムに挟まれたラオスという小さな国は、効率だけを考えれば通過点になってしまうため、この回廊を使って何を生かせるのか、といったことなどを考えさせられた。同時にメコン地域の当事者間の調整をするのが、日本の役割なのだろうとも感じたという。

「もちろん失敗もたくさんした」と話す。ある日系空調機メーカーのタイ法人の依頼で、タイ企業に部品のサンプルまで製造してもらったが、日本の本社の意向で試作段階で止まったことがある。しかし、一つのビジネスチャンスを失ったタイ企業には、別の取引先を紹介し付き合いが今でも続いているのだと笑う。

起業前の大商時代、官民で設立した複合商業施設運営のアジア太平洋トレードセンター(ATC)に出向したことがある。見込み企業を回って話をしテナントになってもらい、企業の発展を考える。入居後も親身な対応を続けた。

そのためか、高木さんが独立した時と同じような年代の人から、「進路相談」を受けることもある。例えば、駐在後に辞令通り帰任するか、現地でオファーを受けた他社の幹部ポストに転職するか。転職する場合は、その会社との信頼関係は十分築けているのかといったアドバイスを送る。そして、家族がいる場合は帯同を勧めている。「海外ではビジネスを離れた時の家族ぐるみの人付き合いも重要」と考えているからだ。

■独立が遅かった分、走り続けたい

最近はタイ生活20年の経験を若い世代へ引き継ぐ活動もしている。昨年は、奈良県の高校生が海外研修旅行に来た時に、タイの廃棄物やインフラ問題、タイの地方とバンコクの違いなどを話した。今年は新型コロナウイルス感染症の拡大で春の研修旅行の予定は延期されたが、「多感な時期に海外を見てほしい」

東南アジアの青年実業家の成長も見守ってきた。本連載の過去回に登場した、ミャンマーの旅行会社JTBポールスターのチョー・ミン・ティン社長<https://www.nna.jp/news/result/1966200>とは、高木さんが独立して間もないころから付き合いがある。外国人がほとんどいない観光地を一緒に回って観光企画を考えたこともある。「活躍はうれしい。頑張ってほしい」とエールを送る。

実は高木さんには、本連載の前身の連載企画にも登場してもらったことがある<https://www.nna.jp/news/result/927472>。06年当時の記事でも、日本に帰ることに反対した息子2人のエピソードを語っていた。その息子2人は、その後ニュージーランドとオーストラリアの大学を卒業し現地で働いている。

「独立が遅かった分、ご用命があればまだまだ走り続けたい」と話す。「主役はもちろん現地で活躍されている一人一人。一期一会の機会に結び付け、新しい活躍の場が生まれたらと願っている」。独立した時から思いが変わることはない。

取材後、タイ政府が新型コロナウイルス対策で非常事態宣言を発令した。過去にもタイで非常事態宣言の発令やクーデターを経験してきた高木さんは「今は我慢の時。諦めず次に備えましょう。大阪の船場商人の『扇子商法』と同じ。寒いときは扇子を閉じ、暑くなれば広げて風を送る扇子です」と語った。(タイ版編集・京正裕之)


関連国・地域: タイ
関連業種: マクロ・統計・その他経済

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