• 印刷する

【アジアで会う】唐駿さん マイクロソフト(中国)終身名誉総裁 第294回 AIで日中企業の連携後押し(中国)

とう・しゅん 1962年中国江蘇省生まれ。上海市在住。85年に国費留学生として来日。90年に渡米後、94年に米マイクロソフト(MS)に入社し、グローバルテクニカルセンター社長を経て、マイクロソフト(中国)総裁に就任した。2004年以降は、中国の大手オンラインゲーム企業や複合企業のトップを務め、15年1月に上海微創軟件(ウィクレソフト)董事長に就任。マイクロソフト(中国)終身名誉総裁を兼務する。

1980年代に名古屋大学大学院で情報通信工学を専攻し、音声認識技術を研究した。「40年前には実現が困難な技術だったが、今や音声認識をはじめとする人工知能(AI)技術は産業や人々の生活に浸透し始めた」と時代の流れを振り返る。

現在は、2002年にMSと上海市政府が共同出資で中国に設立した合弁会社、ウィクレソフトで董事長を務める。日本や欧米など23拠点に社員約6,000人を抱える世界的企業で、AI技術の開発に力を注ぐ。同社が開発した自動応答システム(チャットボット)の「LIVE800」は、華為技術(ファーウェイ)や阿里巴巴集団(アリババグループ)をはじめとする約20万社が導入しており、中国のチャットボット市場でシェア約20%を占める。

■日本でビジネスの基盤築く

唐さんは中国で経営の達人としても広く知られる。MSに入社後、システムの欠陥を見つけ損失を防いだことを機に、中国事業のトップに抜てきされ、事業を拡大させた。その後、大企業の最高経営責任者(CEO)を歴任したことから、経営の達人を意味する「打工(サラリーマン)皇帝」とも呼ばれる。講演会やテレビ番組にも引っ張りだこで、出演料が1時間で約40万元(約600万円)に上ることもあるという。

そんな唐さんが価値観やビジネス手法で最も影響を受けたのは、生まれた中国でもキャリアを積んだ米国でもなく、若い頃に留学し人生やビジネスの基盤を築いた日本だという。「日本人から真面目さやチャレンジ精神、厳密な考え方などを学んだからこそ、MSで成功できた」と振り返る。

■中国企業の連携を呼び掛け

先進国を中心に各国がAIを国家戦略として競い合う中、中国は市場規模とビッグデータを強みにAIの実用化を推進し、トップの米国を猛追する。唐さんは「中国のAI産業に日本の製造技術を導入すれば、米国をはるかに超える産業規模が生まれる」とみている。

AIの実用化には製造分野との連携が欠かせないとも強調する。「中国企業は技術か製造のどちらかしか持っていない場合が多く、ソニーや富士通、日立製作所のように技術力と製造力を併せ持つ大手企業は中国にはない」と指摘。日本企業が製造力を武器に中国企業と提携すれば、「中国のAI産業の局面を変えることができる」と力説する。

中国ではこれまで、インターネットやモバイルといった技術が重要で、技術さえあればビジネスモデルが成立したという。同国のBAT企業(百度=バイドゥ、アリババ、騰訊=テンセント)は外資規制にも守られ、BtoC(企業・消費者間取引)に特化したサービスで急成長した。

しかし「AIの発達は第3次産業革命を引き起こす」と予測する。その可能性は、これまでに革命を起こしたインターネット、モバイル以上という。「世界の製造は中国、先端技術の開発は米国がそれぞれ担う。中国企業が自らの製造力を高める前に、中国企業と連携してAI活用の波に乗るべきだ」と、日本企業に中国企業との連携を呼び掛ける。

■「日本に恩返しを」

19年からはウィクレソフト日本支社のCEOも兼務。足元では大手メーカーからインフラ関連のシステム開発受注が増えているという。日本支社の売上高や利益はグループの中でまだ小さいが、「特別な感情を持っている」という日本市場で、合併・買収(M&A)を通じた事業拡大を目指す。アジア進出を狙う日本の中小IT企業からの相談も多く受けており、AI分野などで中国進出を後押ししたいと意欲を示す。「日本に恩返しを」――。急スピードで技術革新が進む今でも、40年前に抱いた思いに変わりはない。(東京編集部・江康慧)


関連国・地域: 中国-全国日本
関連業種: 電機その他製造IT・通信社会・事件

その他記事

すべての文頭を開く

財新サービス業PMI、4月は56.3に上昇(16:24)

テイクオフ:いつの間にか家にたまっ…(05/10)

ワクチン接種で隔離期間短縮 日本から到着14日、本土は7日に(05/10)

1~4月の貿易額38%増 外需好調で輸出4割超増(05/10)

中国、豪中FTAの解消検討か 豪への報復措置で(05/10)

東京五輪反対論に高まり=中国報道(05/10)

1~3月のサービス貿易、0.5%増の1.2兆元(05/10)

FII、米ウィスコンシン工場を稼働(05/10)

中国、警備員殺害でパイプライン攻撃に警戒(05/10)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。

の記事は有料サービスご契約者様限定記事です。契約すると続きをお読みいただけます。契約されている方は、画面右側にある各種ログインからログインください。
無料トライアルはこちら
購読申し込みはこちら

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン