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新型肺炎、日系企業に打撃 武漢・華東で休業延長も視野

新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大していることを受けて、中国各地にある日系企業への影響が懸念されている。ホンダをはじめ日系製造業が集積する湖北省武漢市は事実上「都市封鎖」されているほか、上海市は企業に対し2月9日までの操業禁止を通達、江蘇省蘇州市も春節(旧正月)による休業の延長を企業に求めている。操業停止などが長引けば、サプライチェーン(供給網)が大きな打撃を受ける可能性もある。

武漢大学中南医院の重症患者隔離病棟で新型肺炎患者の治療をする医療従事者=27日、湖北省武漢市(新華社)

武漢大学中南医院の重症患者隔離病棟で新型肺炎患者の治療をする医療従事者=27日、湖北省武漢市(新華社)

帝国データバンクによると、武漢は自動車産業が集積する中国有数の都市となっており、武漢市内には日系企業199社が進出する。感染者の急増を受け武漢市は23日、市内全域で地下鉄、路線バス、長距離バスなどの運行を停止すると発表したほか、武漢発の航空便・列車への搭乗を禁止、市民に対しては特別な用件がない限り武漢を離れないよう呼び掛けるなど、事実上「都市封鎖」した。

ホンダは、武漢に3つの工場を持ち、年産能力は60万台。従業員は1万2,600人に上る。同社広報によると、28日午後2時現在、春節休暇明けの2月3日から操業を再開する予定だが、事態が長期化した場合について「(操業開始日など事業計画を)変更する必要があれば2月3日以降に、武漢現地と連携して対応していく」と述べた。

日本政府のチャーター機が29日未明にも武漢に到着する予定となっている。ホンダは駐在員やその家族ら約30人を帰国させる予定だが、工場の責任者など数人は武漢に残るという。

日産自動車は湖北省襄陽市などに合弁工場を持つ。同社広報によると、駐在員は多くを帰国させるが、現地には少数が残る。もともと2月5日から操業再開の予定だった。「(今回の事態を受けて)他地域も含め、操業再開時期は現地の様子や地元政府の方針を注視して決める」と答えた。サプライチェーンへの影響については「情報を収集している。影響があるかどうかは言えない段階だ」と話した。

武漢には日系部品メーカーも多く進出する。デンソーは武漢の合弁会社で自動車メーター用ソフトウエアの設計・開発を行っている。従業員は約90人。同社広報によると、日本からの出向者や出張者には現地の宿泊施設での待機の指示を出した。チャーター便などで帰国させるかどうかは検討中。「これほど(事態が)大きくなっている中、情報収集を進めながら、営業再開の見通しを検討している」とした上で、都市封鎖などが長期化した場合については「顧客の動きを注視しながら対応していきたい」と話した。

ブリヂストンは武漢工場で自動車シート用ウレタンフォームを製造している。従業員は約100人。駐在員2人のうち、1人を帰国させた。春節休暇明けの操業開始時期について、同社広報は「様子を注視していきたい。状況判断をしている段階だ」と話した。

■イオンモールやユニクロは臨時休業

武漢には日系の小売・流通企業も多く事業展開している。イオンの総合スーパー「イオン」は市内に5店舗ある。同社広報によると、時間を短縮した上で営業を継続している。生活必需品である食品や衛生関連用品を取り扱っており、行政から安定供給確保の要請を受けているという。仕入れなど物流面などに大きな支障はない。春節に合わせて商品を多めに確保していたためだ。都市封鎖などが長期化した場合、「事業へは一定の影響があるとみている。早く沈静化してほしい」と話した。

一方、市内に3店ある「イオンモール」は営業を休止している。今月30日まで休業する予定だが、「以降は未定。事態の推移を見ながら判断したい」と話した。

カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、新型肺炎の影響を受けて市内17店舗全てについて23日から休業した。さらに湖北省周辺などを中心に約100店舗を臨時休業している。いつから再開するかについては「当局の動きを注視し、出店している商業施設の運営企業と情報を共有しながら対応を検討したい」(同社広報)と話した。

■上海や蘇州でも操業再開の延期要請

上海市政府は27日、市内の企業が2月9日より前に事業を再開することを禁止すると発表した。そのほか公共交通機関の一部区間で運行を停止し、市と各省をまたぐ国内移動に規制をかけている。江蘇省の蘇州市も26日、市内企業の操業開始時期について、2月8日午後12時まで認めないと通知した。

三井化学は、2月9日まで操業ができなくなっていることについて、「当局の指示に従って、事業の再開やプラントの稼働を調整していきたい」(同社広報)と話す。春節で日本に帰国していた駐在員は適宜中国に戻る予定だという。春節休暇で国内各地に帰省している中国人従業員への対応についても「日本人従業員同様に検討中だ」と話した。

リコーは「湖北省への出張を禁止するなどしている。現在のところ、物流などでも特に混乱はない」(同社広報)。ハウス食品も「今後の対応については当局の指示に従う」と説明した。

ある大手製造企業の広報担当者は、「春節後に操業再開する予定だが、従前の計画からは1~2週間程度の遅れ。今回の混乱は中国経済全体にも影響を与え、グループ全体へのネガティブな影響を予想している」と話した。

■終息に2カ月以上か

日系企業の操業や地域経済への影響拡大が懸念される中、新型肺炎の終息時期が注目されている。

東京海上日動リスクコンサルティング・ビジネスリスク本部の青島健二主席研究員は「1900年代初頭に流行したスペインかぜなどを参考にすると、1都市での発症からパンデミック、終息までのサイクルは2カ月程度と予想される」と指摘。世界全体の終息時期については、世界で猛威を振るった新型インフルエンザ(H1N1)などを例に挙げ、「半年程度でワクチンが開発され、約1年後には終息するケースが多い」と説明した。また新型コロナウイルスが変異すれば死亡率が高まる可能性もあるという。今後も各国・地域が連携した防疫対策などが不可欠になりそうだ。

中国国家衛生健康委員会は28日、中国本土における新型コロナウイルスによる肺炎の死者が同日午前0時時点で106人に達したと発表した。地域別では、27日に新たに北京市と海南省で各1人が確認された。感染拡大が深刻な湖北省では27日だけで24人が亡くなり、死者は100人となった。

本土の発症者数は4,515人と、前日の2,744人から一気に増えた。このうち重症者は976人。感染の疑いは6,973人。


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