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【アジアで会う】神澤享裕さん 神澤グローバル・コンサルティング代表取締役 第285回 「相互理解」こそ関係改善への近道(韓国)

かんざわ・たかひろ 1961年 東京生まれ。富士ゼロックスに入社後、93年に社内の留学制度で渡韓し、95年に帰国。韓国に戻りたい一心で01年に富士ゼロックスを退社後の03年に再渡韓。翌04年に日韓合弁出版社「エイジ21」を立ち上げ、07年にはエイジ21の韓国側出資者でもあったブック21の取締役兼海外事業本部長に就任する。09年、日韓台中合弁のユナイテッド・ブックスを設立。13年に設立した「神澤グローバル・コンサルティング」では、駐在員のいない日系企業の顧問を務めつつ、駐在員に対して「現法での経営ノウハウ」を伝える。

若者の読書離れが深刻化する韓国だが、意外にも日本の書籍は人気がある。大手書店の人気書籍コーナーに行くと村上春樹や東野圭吾など日本文学がずらりと並ぶ。ブック21は1990年設立と歴史は浅いが、これまでに東川篤哉著「謎解きはディナーのあとで」などを韓国で発売し、ベストセラーとなった。この翻訳出版事業を手掛けたのが、神澤享裕さんだ。

神澤さんはもともと、事務機器大手、富士ゼロックスの社員だった。1993年に社内の海外留学プログラムにより延世大学で学び、コリアゼロックスで韓国法人の経営を学んだことが、韓国と関わりを持つきっかけとなった。「当時は韓国のことはほとんど知らず、『日本より15年くらい遅れた国』という印象しかなかった」という。

しかし、2年間の滞在でその考えはがらりと変わる。特に韓国人の優しさと深さに感銘を受けた。「交流も大切だが、相手をしっかりと理解することが両国にとって大切なのではないか」。これが今の「相互理解」という理念につながっている。

■キャリア捨て「決意の渡韓」

帰国後、滞在中に提案した現地法人の経営改革に参加したいとの思いから、韓国法人行きを希望する。しかし、なかなか実現せず、40歳になった2001年に新宿の紀伊國屋書店で「最高の報酬 お金よりも大切なもの」という書籍に出会う。世界の偉人の言葉から働くことや生きることの意義を説くこの本の内容に刺激を受け、購入から3時間後には退社を決意していた。

韓国に行きたいという一心で、あてのないまま富士ゼロックスを退社。「妻には絶句されましたね」と神澤さん。韓国基督教放送(CBS)の東京通信員として韓国人向けの韓国語放送に携わった後、03年に家族ごと韓国に引っ越した。

韓国では富士ゼロックス時代の人脈などを生かして食いつなぎ、04年に日韓合弁の出版社「エイジ21」設立。出版業界を選んだのは「日本の書籍を翻訳して韓国人に読んでもらえれば、日本人の心を伝えることができるのではないか」と考えたからだ。

■日韓中台で出版合弁

07年にエイジ21の韓国側の出資会社だったブック21の取締役兼海外事業本部長に就任した神澤さんは、日韓だけでなく中国と台湾の出版社を加えた4カ国・地域合弁で、東京にビジネス書籍の出版を扱うユナイテッド・ブックスを設立した。同じ書籍を4言語で出版するという試みは、日韓合弁事業による経験から着想を得た。

当初は紙媒体のビジネス書籍を10~15冊ほど手掛けたがうまく行かず、資本金が底をつきそうになったという。そんな中で目をつけたのが、当時スマートフォンの普及で広がりつつあった電子書籍だった。「米アップルのアップストアでビジネス書などを発売したところ大当たり。アップストアのビジネス書部門トップ10のうち、7冊くらいはユナイテッド・ブックスの書籍だった」そうだ。

ただ、アップルが独自の電子書籍サービスを始めたことで、電子書籍事業も行き詰まる。神澤さんは「日本の電子書籍市場が消えてしまった」と当時を振り返る。

■相互理解をライフワークに

神澤さんの常に新しいことに挑戦する姿勢は変わらない。日韓企業のビジネスをサポートする「神澤グローバル・コンサルティング」を13年に立ち上げた。駐在員のいない日系企業の顧問を務めつつ、日本と韓国の企業で長年働いた経験やノウハウを駐在員に伝える事業を開始。日韓経済人の「相互理解」に貢献できると考えた。

「例えば、『報連相(ほうれんそう、報告・連絡・相談)』は日本では当たり前だが、韓国人は慣れておらず、むしろ逐一報告することを『上司を煩わせる』と考えてしまう傾向が強い。『報連相』がないことを説明出来る人は多くても、『なぜそのように行動するのか』を説明し、経験を踏まえて解決法を示せる人はほとんどいない」。神澤さんからは自信がみなぎる。

神澤グローバル・コンサルティングは、経済産業省・中小企業基盤整備機構による経営支援アドバイザーおよび海外進出アドバイザーにも任命されている。出版とコンサルの両輪で日韓の相互理解を深める神澤さんのライフワークは続く。(韓国編集部・清水岳志)


関連国・地域: 韓国
関連業種: マクロ・統計・その他経済

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