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【アジアで会う】アンバラシ・デュライパンディアンさん 配給会社CEO 第278回 エンタメと笑顔を届ける(インド)

1982年生まれ、インド南部タミルナド州出身。日本で働くインド人男性との結婚を機に、2008年に来日。14年10月、日本でインド映画の配給を手掛けるスペース・ボックスを設立し、最高経営責任者(CEO)に就任。関東地方を中心にインド映画の上映会や映画祭などを開催。18年からは上映規模を順次拡大し、19年には3本のインド映画を公開した。20年初頭にも新作映画の公開を予定する。

きっかけは、インドへの郷愁だった。日本で働いていたインド人の夫との結婚を機に、11年前に来日した。当時は日本在住のインド人と知り合う機会もほとんどなく、映画のストリーミングサービス(インターネット経由でコンテンツを配信する)も、今ほど普及してしなかった。インド映画はどこで見られるのか夫に尋ねると、「日本では難しい。ほとんど上映していないから」と返ってきた。

その代わり、英語の映画を見に行くようになった。アンバラシさんの日本語能力は、邦画を楽しむにはちょっと心もとない。映画大国のインドに育ち、「楽しみといえば映画」だったアンバラシさんにとって、日本での「楽しみ」は必然的に英語の映画に限られた。「(日本に来て)最初の4~5年はずっと英語の映画を見ていた。でも映画館で、大勢のインド人に会ったの」。英語の映画を見に来ていたインド人もまた、アンバラシさんと同じ気持ちを抱えていた。インド映画が見たい――。

映画以外でも、インドに関わる催しがあれば積極的に参加した。東京で毎年開催される文化交流イベント「ナマステ・インディア」に出向くと、インド好きな日本人と多く知り合った。ダンスや食など、インドの文化が大好きという日本人もまた、日本でのインド映画の上映を切望していた。日印双方の需要を目の当たりにしたアンバラシさんは「それなら、私がやってみようか」と14年の秋から小規模な上映会を始めた。

「最初はどうやって宣伝していいかも分からなかった」ので、上映会に来てくれた人たちの連絡先を聞き、次の上映会の知らせを地道に伝えた。そのうちにウェブサイトを立ち上げ、フェイスブックなどでも告知をするようになり、だんだんと来場者数が増えていった。「主に日本人が見に来てくれた。熱心な人だと、同じ映画に3日連続で来たり」。そうした熱の入ったファンが、次はこれが見たい、あれを日本で上映してほしい、と次回作を提案してくれた。日本にいるインドの友人からも、今度のディワリ(灯明祭、ヒンズー教の大祭)はこれが見たい、と要望が出された。そうしたアドバイスを受けつつ、自分でも気になった映画の予告編や前評判を調べ、面白そうだと思ったものを選んで買い付け、日本で配給していった。

■基準は「自分が見たい映画」

スペース・ボックスで上映するインド映画は多種多様だ。実際、アンバラシさんは南インドの出身だが、これまでに上映した作品は出身地のタミル語映画だけでなく、南部のIT都市ベンガルール(バンガロール)のカンナダ語、ビーチで知られるケララ州のマラヤーラム語、ボリウッドで有名なヒンディー語など多岐にわたる。

上映する映画は主に英語字幕があるため、その言語を話さないインド人が見ても理解に問題はない。ただ、日本の観客の要望に応え、17年からは日本語字幕付きインド映画の上映会を開始、好評を博している。当初は東京など首都圏に限って上映会を実施していたが、回数を重ねるごとに人気が広がり、上映範囲を名古屋、大阪、京都、神戸などに拡大している。

また、今年はスペース・ボックスにとって記念すべき年になった。1月はヒンディー語映画「バジュランギおじさんと、小さな迷子」、6月にも同「パドマーワト 女神の誕生」を配給した。11月には同社初の全国上映となる同「盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~」を公開。来年も2~4本の公開を予定している。

アンバラシさんは今後の目標を、「これからも面白いインド映画を積極的に上映し、浸透させていくこと」と定める。競合他社は複数あるが、「私たちの強みは、どこよりも早く柔軟に上映できること」と指摘。権利関係や手続きが複雑なインド企業とのやりとりの末、日本での上映自体が立ち消えになることもある中、スペース・ボックスは関係先インド企業と密に連絡を取り、インド公開の翌日に日本で上映会を実施した実績もある。「(インドと日本で)ほぼ同時公開できれば、インドの家族とも共通の話題が増えるし、日本の観客も喜んでくれるから」。スペース・ボックスは映画で日印をつないでいる。(インド版編集部・福井円香)


関連国・地域: インド
関連業種: サービスメディア・娯楽社会・事件

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