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【アジアインタビュー】途上国でコンテナ港を革新 ICTSIのラソン会長兼社長

フィリピンやインドネシア、中国をはじめとするアジアのほか、中東や南米、アフリカなど世界19カ国・地域で32の港湾を運営・管理するフィリピンの港湾運営大手インターナショナル・コンテナ・ターミナル・サービシズ(ICTSI)。米中貿易摩擦が激化し、グローバル経済が不安定化する中でも、エンリケ・ラソン会長兼社長は長期的な視野で世界経済の動向をみつめ、逆にチャンスを捉えることの大切さを説く。途上国の貿易を後押しするコンテナ港の効率化はこれからも必要とされるとして、ICTSIの存在意義に自信を示す。(取材=NNAフィリピン編集部 竹内悠)

■港湾事業の民営化が契機に

「十分に近代化され、効率化が徹底されている国々ではなく、われわれは発展途上国にターゲットを絞っている」と、過去30年間余りにわたってぶれなかったICTSIの戦略をラソン氏は強調する。「日本や欧州はあえて避けている」とまで言う。

フィリピンで港湾事業を手掛けていた祖父から数えて3代目。1980年代に膨大な債務超過に陥っていたフィリピンなど発展途上国では、それまで国営だった港湾などインフラ事業の民営化を進める必要性が生じた。これを契機としてラソン氏は1987年にICTSIを設立し、マニラ国際コンテナターミナル(MICT)を振り出しに各国の港湾事業に次々と参入してきた。

コンテナクレーンや専用車両など最新設備などの導入や車両の渋滞を避けるための位置情報の取得などのIT化で運営の効率化を進め、発展途上国にとってのお荷物だった港湾事業を収益事業に変えていったのだ。

現在のICTSIの時価総額は2,500億ペソ(約5,100億円)以上とされ、世界の港湾事業者のリーダーとして注目されるようになっている。近年は、カジノやホテル開発など多角化経営にも乗り出している。

■途上国の各種事業にうま味

ICTSIが運営管理するマニラ国際コンテナターミナル(MICT)。ハイブリッド仕様のタイヤ式ガントリー(RTG)クレーンなど環境効率の高い設備を導入している(同社ウェブサイトより)

ICTSIが運営管理するマニラ国際コンテナターミナル(MICT)。ハイブリッド仕様のタイヤ式ガントリー(RTG)クレーンなど環境効率の高い設備を導入している(同社ウェブサイトより)

ICTSIは最近、ブラジルのリオデジャネイロで港湾事業を買収したほか、アフリカのマダガスカル、コンゴで事業を開始し、カメルーンでも港湾事業に新規参入した。「今後の成長が見込まれるアフリカは魅力的な市場だ」とラソン氏。同様に、今年10月にはイラクの発電所も完工する見通しであるなど、中東地域でも事業を拡大している。「イラクの港湾事業は最も収益性が高い」

「アフリカだけでも50数カ国ある。すべての国々に参入するには今後100年ぐらいかかるかもしれないが、それだけICTSIの挑戦は続くということ」と、ラソン氏は遠くの未来をみつめているようだ。

一方で、ICTSIはかつて那覇や名古屋など日本の港湾事業に参入したが、いずれも2014年に撤退した苦い経験もある。「日本は運営の免許を持つ港湾大手3社がほぼ独占する形。この3社のうちの1社にならない限り、参入は難しい」と指摘する。

中国・煙台でもコンテナ港事業を手掛けている。「中国は参入障壁もあまりなかった。国内に競合する多数の港湾があるため、中国で儲けるのは決して簡単ではないが、自国企業を保護している日本は中国よりずっと難しい」と笑う。

■貿易摩擦でもチャンス

ICTSIが港湾ターミナルの運営を手掛けている世界の港湾拠点。アジアのほか、欧州、中東、アフリカ、中南米、オセアニアなど19カ国・地域の32カ所に及ぶ(同社ウェブサイトより)

ICTSIが港湾ターミナルの運営を手掛けている世界の港湾拠点。アジアのほか、欧州、中東、アフリカ、中南米、オセアニアなど19カ国・地域の32カ所に及ぶ(同社ウェブサイトより)

「世界経済への影響は実は心理的なものが大きい。世界の二大経済大国が貿易戦争をすることが景気を悪化させるだろうと多くの人々が考えれば、実体経済にもじわりと響いてくる」と指摘する。

ただ「この見方は非常に短期的だ。長期的にみれば状況は改善するだろう。1929年の世界恐慌も、第二次世界大戦の要因となった保護主義も経験しているし、歴史はまた繰り返すもの。私たちは常に長期的な視野に立ってみている。港湾を運営する国・地域が多ければそれだけ、リスクを分散できる。貿易摩擦にマイナスの影響はあるが、その一方で商機もある。どうビジネスを成長させていくことができるかを考えている」とラソン氏は指摘する。

今年は4億米ドル(約425億6,000万円)の新規投資を計画し、向こう3年では10億米ドルを超える見込みだというラソン氏。「5年間ごとにビジネス規模を倍増する目標だ。人々が消費し、モノを行き来させる需要が続く限り、港湾事業には終わりはない」と話した。

<プロフィル>

エンリケ・ラソン

スペイン系フィリピン人の祖父がフィリピンで始めた港湾事業の3代目。1960年3月生まれの59歳。1987年にICTSIを設立した。フィリピンを代表する億万長者として知られる。ICTSIの2018年の貨物取扱量は6%増の973万6,621TEU(20フィートコンテナ換算)で、売上高は前年比11%増の14億米ドルに拡大した。世界19カ国・地域で事業展開するが、「海外でもあまりフィリピン企業だと意識することはない」と言い、グローバル企業であることを掲げる。「仕事を仕事と思わないほど楽しい」と話す。

※特集「アジアを走れ、次世代モビリティー」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年9月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: フィリピン日本
関連業種: 運輸

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