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【アジアで会う】アムロ・アヌアルさん AFジェッツCEO 第265回 人工降雨で干害を解消(マレーシア)

アムロ・ニザル・アヌアル 1973年生まれ。クアラルンプール出身。父が所属するマレーシア国軍のクアラルンプール基地の官舎で生まれた。高校時代、交換留学生として長崎に短期留学した後、政府給費留学生として千葉大学・工学部に派遣され、1997年に同大を卒業した。大阪での社会人経験を経て、2000年、マレーシアに帰国。06年に小型ビジネスジェットサービスを手掛けるAFジェッツを設立した。近年は事業領域を広げ、政府から灌漑やヘイズ(煙害)対策のための人工降雨サービスも請け負う。

今からさかのぼること17年前の2002年5月。当時、AFジェッツの前身となるAFエンジニアリングを立ち上げ、洪水・干ばつを含め、「マレーシアが抱える『水』問題の解消をビジネスの核に掲げていた」。マハティール首相(当時)の訪日に合わせ、ゲリラ作戦に出た。台風被害の多いマレーシアで救助用として水陸両用の船「ホーバークラフト」の需要を見込み、首相の宿泊先となる東京・帝国ホテルに張り込んで売り込みをかけた。「日本語が話せるマレーシア人であることを武器に首相の後を追い、ホテルですれ違うたびに声をかけた」

首相との面談に成功し、マレーシア国内でのデモンストレーションの機会も得て、100艇の購入が決まった矢先にマハティール氏は失脚する。受注は白紙となったが、ホーバークラフト事業を通じて得た資金を元手に06年、ビジネスチャーター機の手配・運航を担うAFジェッツを立ち上げた。事業環境は厳しく、一度は経営破綻するものの、09年にマレーシア気象局から受託した「人工降雨サービス」が流れを変えた。

「水問題を空から変えようと、気象観測の統計収集のために飛び続けていたことが形になった」。熱帯気候のマレーシアは湿度が高く、雨雲ができやすい環境にある。「塩の吸水性を活用すれば、人為的に雨を降らせることができ、干害を解消できるのではないか」。小型機に塩の散布装置を取り付け、雨雲づくりと人工降雨に成功。これに気象局が目を付けた。現在は人工降雨サービスと航空機観測サービスを中核事業に据える。

■日本留学、「タモリ」が先生

AFジェッツは、クアラルンプール近郊スランゴール州の航空宇宙産業地区にオフィスを構える。滑走路に直結したオフィスにはマレーシア空軍やマレーシア気象局からの許認可状のほか、クアラルンプール日本人学校からの感謝状が並び、壁にはエレキギターが数本飾られている。「遠いところまでわざわざ……」と迎えてくれた日本語は流ちょうだ。

航空機への情熱と日本語は幼少期の環境が培った。「父が勤めるマレーシア国軍の基地内で生まれ、転勤先のジョホール州でスカイダイビングやヘリコプターの訓練を見ながら育った。テレビでは『ウルトラマン』シリーズが放映され、隊員のアスカに夢中になった」と前のめりに語る。だが、6歳の時に父親が他界。3人の息子を育てる母親の姿に覚悟を決めた。「奨学金で学生生活を送る」。中学・高校は寄宿学校に進学し、第2言語として日本語とフランス語、アラビア語の選択肢がある中、「『ウルトラマン=日本語』しか頭になかった」。高校2年の時、日本語試験で国内2位の成績を収め、日本・マレーシア間の短期交換留学生に選出。長崎・佐世保の高校で学んだ後、政府留学生として千葉大の工学部に進学した。

理系人材の育成を推進するマレーシア政府の方針に沿う形だったが、「とにかく日本の全てを吸収したかった」。高架下の家賃1万5,000円の風呂なしアパートに暮らし、「学友とバンド漬けの日々だった」と屈託ない。バラエティー番組「笑っていいとも!」で司会者タモリのトークを参考に日本語に磨きをかけ、エレクトロニクスの聖地、秋葉原にも通った。

千葉大を卒業後、大阪の鉄工所に勤めた後、母親からマレーシアに呼び戻された。夢だった小型機の操縦免許を米国で取得し、8年ぶりにマレーシアに帰国。「机1つ、椅子1つ、ファクス1台」でAFエンジニアリングを立ち上げた。国際協力機構(JICA)によるマレーシア政府機関向けのパソコン導入事業を受注し、台湾の宏碁(エイサー)と組んで「米マイクロソフトの基本ソフト(OS)で作動するパソコンを組み立てて、納入した」。

■新パーム油燃料、日本で商談

攻勢をかけたホーバークラフト事業でマハティール首相(当時)の後ろ盾を失ってから、「いつも、はい上がってきた」。湿度は高いが水不足というマレーシアの気象環境を利用し、事業を軌道に乗せた。次なる課題は環境の視点をさらに広げた、エコ性能の高いパーム由来の燃料販売だ。試行錯誤を繰り返し、既にバイオマス発電を手掛ける日本の独立系発電事業者(IPP)から引き合いがある。

既存燃料と比べて価格が2割程度安く、20年1月に日本で初の供給契約を結ぶ予定だ。「(マレーシアの基幹産業である)パーム栽培も雨が必要。雨づくりは貯水池の適切な貯水量が洪水を防ぐこともあり、生活水の原点だ」。

小型機14機を保有し、50人(うちパイロット10人)のスタッフを束ねる。マハティール首相が返り咲いたいま、「国産の飛行機をつくりたい」と大きな野望を抱く。(マレーシア版編集部=久保亮子)


関連国・地域: マレーシア
関連業種: 運輸天然資源マクロ・統計・その他経済社会・事件

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