サンシャインステートの異名を持つクイーンズランド（ＱＬＤ）州のブリスベンは、他州とは異なる独特な陽気な雰囲気がある。石炭資源を中心にビジネスを展開する…

オーストラリア

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――昨年の12月にブリスベンに赴任されて半年ですね。
元々外務省の研修生として、キャンベラのオーストラリア国立大学に２年間通いました。基本的にその間は、勉強しながら人脈を作る期間でした。その後、在メルボルン総領事館で80年代に２年半勤務しましたので、オーストラリアではトータル４年半ぐらいの在勤経験があります。外務本省でもオーストラリアを担当する課に計３回勤務しましたが、オーストラリア勤務は30年ぶりで、その間にブリスベンのＣＢＤ（中央商業地区）には立派なビルが立ち並び、物価や給与も上がって、80年代とは全く変わりました。もちろん当時も貿易経済面で日本とは深いつながりがありましたが、一般の人々はそれほど日本のことを知らなかったように思います。

――キャンベラでは、どんな人脈ができましたか？
前駐日豪州大使のブルース・ミラーさんとはいまだに付き合いがあります。ＱＬＤ州高官とも話す機会がありますが、非常に日本のことを大事にしてくれます。特にＱＬＤの人は非常にフレンドリーだと思います。例えばオーストラリアの国会議員がキャンベラの日本大使館の20代の若手職員と普通に話をする光景もよく見られます。地位を気にしないでフランクに接する文化は昔からあります。パラシェイ州首相も、何かあればすぐ電話で対応してくれますし、非常に親日的で、首相になってからほぼ毎年日本に行っています。

――ＱＬＤ州への日本からの投資は増えていますか？
新しい買収や、小さいものも含めると増えていると思います。観光関係で言うと、ＱＬＤ州としては、多くの日本人観光客に来てもらうことを望んでいます。日本の公館のある主要都市で日本の航空会社の直行便がないのはブリスベンぐらいです。カンタスが４年前に直行便を再開しましたが、是非日本の航空会社に直行便を就航していただきたいですね。ブリスベンであれば、日本とビジネスを行う企業も多く、ビジネスクラス客も狙えると思います。
ＱＬＤ州政府は、水素開発で世界をリードしたいと考えており、最先端技術を持つ日本と協力したがっています。伝統的にある石炭産業に加え、イノベーション、エネルギー、農業協力も非常に強く進めています。農業では、2017年にＱＬＤ州農業省と日本の農林水産省が協力覚書を結び、ＱＬＤ州でお互いの農産物の栽培法を共有する取り組みを進めています。
日豪は季節が逆なので、農産物は市場で競合しません。それを日豪間貿易だけにとどまらずアジア市場に向けて、日豪で協力して輸出していこうというものです。例えば、同種の農産物を、ある季節にはオーストラリアが輸出し、逆の季節には日本から輸出するという形です。そのためには、お互いに品質をより良くしていかないといけない。栽培方法を学び合って協力する目的で２年前に覚書を締結しました。具体的には、日本からアスパラガスの農業者を連れてきて、日本式の栽培方法、例えば休眠を使って作物を元気にする方法などを教えたりしています。後は日本で開発した大豆の新品種を持ってきて、オーストラリアに適した品種に改良しようとしています。

――ＱＬＤ州の日本企業は、資源系が多いようです。
他にも製造業、牛肉輸出業もあります。牛肉の輸出が多く、ＱＬＤ州は全豪の牛肉総生産のうち５割を占めています。日本の全牛肉の輸入の35％がオーストラリアですが、そのうちの６割がＱＬＤ州です。また、日本の石炭輸入の34％がオーストラリアからですが、その約半分がＱＬＤ州からとなっています。我が国にとって石炭と牛肉は、ＱＬＤ州との関係で主要な部分であると言えます。他にも、日本の砂糖輸入の66％がオーストラリアからで、うち95％はＱＬＤ州からです。さらに現在、日本政府は農林水産物や食品の輸出に力を入れていますが、日本産和牛のＱＬＤ州への輸出拡大にもトライしていきたいと思います。お互いにウィンウィンの関係が成り立つように取り組んでいくべきだと思います。
ＱＬＤ州政府の期待が高い、観光産業、水素をはじめとする再生可能エネルギー、先端技術も可能性があると思います。ＱＬＤ州の市場はそれほど大きくないので、新たに日本の大企業が入ってくるとしたら、当地を入り口として、オーストラリア全体にビジネス展開できる可能性はあると思います。

――ＱＬＤ州の日本語教育はどうですか？
15年の調査では、オーストラリアで日本語学習者が最も多いのはＱＬＤ州であり、引き続き支援していきたいです。ＱＬＤ州立学校には日英バイリンガル教育を行っている学校があります。先日視察させて頂きましたが、幼児期から日本語教育を行っており、日本語で学ぶ科目では、生徒同士が英語で話すと注意されていました。先生は日本人が十数人、オージーも１人いました。特に若い人たちは、アニメなどで日本に興味を持って日本語を学ぶことが多いので、この機会をうまく捉えたいと思います。グリフィス大学に日本語学科がありますが、日本語教育ではクイーンズランド大学がより盛んなようです。

――日本語学習者が多いということは、ＱＬＤ州が対日関係で将来性があるということですね。
80～90年代の投資ブームの頃は、日本とのビジネスという実利的な意味で日本語を学ぶ傾向がありました。今の中国語もそういう面が大きいと思います。そういう経験をした上で、現在はむしろソフトパワー的な面で日本の良さを理解して日本語を勉強したい方が増えています。経済に左右されない所があるので、日本語教育の支援を行っていかなければいけないと思います。

――そのほかの文化交流はありますか。
当館では「スクールビジット」をほぼ毎月開催しています。州立小学校の先生が40人ほどの生徒を連れてきて、浴衣の着方、和食（一汁三菜）、箸の使い方など紹介しています。多い時は月２回行い、とても人気です。ホームページ上で募集し、高校からの応募もあります。もう一つは、ラグビー・ワールドカップ、オリンピックの機会を利用して、ＱＬＤ州でも交流イベントをできればと思います。ＱＬＤ州は32年や36年のオリンピック招致を狙っています。受け入れるだけのインフラがあると思います。

――中国資本に対する警戒感はＱＬＤ州でありますか？
ファーウェイ（華為）の第５世代（５Ｇ）移動通信システムの話をはじめとして、安全保障的な観点からＱＬＤでも警戒感はありますが、それよりビジネス面でいかに中国とうまくやるかということがあると思います。ニューサウスウェールズ州では中国系の議員が結構いますが、ＱＬＤ州議会にはアジア系はそれほどいません。むしろ先住民とか、トレス諸島系が結構いますので、催しの時に先住民への感謝・敬意を表する挨拶を入れることが多いです。これも過去30年の間に、国として先住民に敬意を払い、また尊重するようになったと思いますが、特にＱＬＤは、先住民に対する敬意は非常に強いと思います。

――総領事としての使命は何ですか？
いかに日本人の便益を確保するかが我々の仕事、日本の総領事としての使命です。在留邦人や、観光、ワーキングホリデー、留学等で滞在している日本人に無事に過ごしていただき、何か問題があった時にはお手伝いをすることが重要で、ＱＬＤ州政府とも協力していきたいと思います。（聞き手＝西原哲也）

 
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