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【アジアで会う】比嘉昴さん ラグビー・インドネシア代表コーチ 第259回 アジア選手権を指揮(インドネシア)

ひが・すばる 1992年生まれ。沖縄県出身。小学生のときからラグビーを始めた。流通経済大学(茨城県龍ケ崎市)大学院修了後、同大ラグビー部コーチ。2018年7月から国際協力機構(JICA)の海外青年協力隊としてインドネシアラグビー協会に派遣され、各地でラグビー普及と指導に当たっている。19年4月にインドネシアの15人制ラグビー・ナショナルチームのコーチに就任、インドネシア人のヘッドコーチを補佐しながら、6月のアジア選手権(3部リーグ)で中国、インドとの対戦を指揮した。

インドとの対戦を間近に控え、チームの練習には熱がこもった。終了時間を過ぎても選手たちはボールを追い続ける。選手全体の動きが見えるよう巧みに位置取りしながら指示を出す。数日前の中国との試合は63―10で敗れた。「試合後の反省会では自分たちの弱点はみんな分かっていた」。それだけに世界ランキングで中国より格上のインドに対しては弱点を克服し一矢を報いたい。全員がそう胸に秘めた。なのに、練習疲れで手抜きが見える。そんな時、「半分泣きながら」活を入れた。「国を背負って戦う代表選手の意味をもっと考えろ」。成果は表れた。敗れたもののインド戦は42―12だった。「タックルをミスして相手に抜かれる回数が格段に減った。課題だった守備が改善されたことがスコアに表れた」と振り返る。

■初の100%国産代表チーム

インドネシアの15人制ラグビー・ナショナルチームは26人。昨年まではインドネシアに在住の欧米人が主力で、チーム内の公用語も英語だった。ラグビー協会は今年から代表はインドネシア国籍を持つ選手に限り、100%国産のチームを作り上げた。「といっても普通、代表チームは半年くらい前から合同練習など準備を始めるが、動き出したのは中国との試合の4日前です」と笑う。しかし、チームの雰囲気は格段によくなった。世界ランキングはアメリカ領サモア、バヌアツに次ぐ後ろから3番目の103位(7月1日時点)。しかし、オリンピックの競技種目になっている7人制ラグビーは国の支援もあり、そこそこの力はある。「インドネシアのラグビーは成長する可能性を秘めている」と話す。

■思いやりをもって教える

沖縄の読谷村生まれ。ラグビーをやっていた父親の影響で姉、弟ときょうだい全員が小さいときから地元クラブで楕円(だえん)のボールに親しんだ。ポジションは司令塔といわれるスタンドオフ。大学で南アフリカ人のコーチと出会って「本格的にラグビーに向き合うようになった」という。「ボールを守備がいないスペースに運ぶ技術と戦術を学んだ。コーチになってからは思いやりをもって教えることの大切さを教わった」。ちょうど大学がJICAとインドネシアラグビー協会と連携協定を締結。18年から3年間、学生やコーチを毎年10人ずつインドネシアに派遣し、子どもや学生にラグビーを指導する活動を始めた。このプロジェクトの派遣期間は毎年2カ月だが、比嘉さんはこれとは別に海外青年協力隊として1年の契約でインドネシアに渡った。各地で子どもたちにラグビーを教え、ラグビー協会に人脈が広がるにつれ、その熱心な指導ぶりが評価されて、ナショナルチームのコーチ就任を依頼された。

日本ラグビー協会によると18年3月時点の日本のラグビー競技者数は約9万5,000人。インドネシアは1,000人前後と言われる。34州のうち協会があるのは14州しかなく、ラグビーの普及度はまだまだ低い。ナショナルチームについて「個人とチームのスキル向上が課題。ラグビーはコンタクトスポーツという認識が低く、タックルが弱い。対外試合を増やしていけばもっと成長できる」と話す。

■高校教師を目指す   

7月末に任期を終えて帰国する。体育の教員を目指しており、すでに試験も終え結果待ち。1年間の海外生活で「自分に何ができて、何が足らないかがよく分かった。日本にいては得られない刺激もたくさん受けた。10代のときにこうしたことを経験したかったと痛感した」。それゆえ、教師になったら、高校生が短期間でも海外生活を体験できるようなシステムづくりをJICAや教育委員会と協力してやっていきたいと話す。ラグビー部の顧問はもちろん引き受けるつもり。9月にはアジアで初の開催となるラグビーのワールドカップ(W杯)が日本でキックオフする。W杯にインドネシアが出場する日がいつかくるだろうか。選手たちには来年のアジア選手権に向けて今から心技体の準備を怠らないよう指示しながらこう伝えた。「子どもたちが将来ラグビーをやってくれるかどうかは君たちの活躍次第だ」。(インドネシア版編集部・大野圭一郎)


関連国・地域: インドネシア
関連業種: 社会・事件

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