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【アジアで会う】スライウムさん、レッドコードさん 漫画家 第244回 「AKIRA」を描きたくて(マレーシア)

スライウム(写真左)。1974年ヌグリスンビラン州生まれ。専門学校のグラフィックデザイン学科を卒業。日系の出版社カドカワ・ゲンパック・スターズでコミック部のチーフエディターを務める/レッドコード(同右)。77年クアラルンプール生まれ。イラストレーション学科を卒業。カドカワ・ゲンパック・スターズでシニア・コミック・アーティストとして活躍。

スライウム氏(左)とレッドコード氏

スライウム氏(左)とレッドコード氏

2人はマレーシア国内で累計93万部を売り上げる学習漫画「どっちが強い!?シリーズ(英語版タイトル:Primal Power Series)」の制作に創刊号から関わっている。2016年には日本に“輸出”され、こちらも累計100万部を突破する人気ぶりだ。

マレーシアでは12年にシリーズ1巻目となる「ライオン対トラ」が刊行され、先月には20巻目が発売された。互角の戦いとなりそうな動物を組み合わせ、主人公となる子どもの調査隊がそれぞれの生息地に飛んで生態を学ぶストーリー。場面の切り替えに設けられた解説ページに学習要素を盛り込み、買い与える側の親の心もつかんでいる。

「下調べから始まり、構成の組み立て、ページレイアウト、下書き、色付けなど1冊が完成するまでに2~3カ月はかかる」とスライウム氏は話す。2種類の動物を並行して調べるため、レッドコード氏は「情報収集に最も時間がかかる」と肩をすくめる。が、この作業が物語の骨格を生み出す。

「ゾウ対サイ」では、調べていくうちに南アフリカの自然環境の危機や密猟の問題が浮かび上がり、同作品では、子どもらの任務が密猟の銃声とともに幕を開ける描写につなげた。日本でのヒットに驚きながらも、スライウム氏は「マレーシアでは学習要素を取り入れた漫画が一つのジャンルとして確立されている」と説明。カドカワ・ゲンパック・スターズでも学習漫画「ラーン・モア」は看板レーベルになる。

「どっちが強い!?」を含め、多くの作品はマレーシアの多様な民族構成を反映し、マレー語と英語、中国語で出版している。販売冊数は民族別所得で富裕層の割合が高い華人(中国語)に偏るかと思いきや、「学校での取り扱いも多く、マレー語の市場も大きい」(スライウム氏)。

■レンタルしてはコピーの日々

カドカワ・ゲンパック・スターズは、日本のメディア大手KADOKAWAが15年に出資した現地同業アートスクウェア(Art Square、1994年設立)が出身母体となる。オフィスは5階建てのテナントビルが連なるショップロットのうち2棟(間口)を占め、現在、デザインチームを含めると約100人の漫画家を抱える。

スライウム氏は02年、レッドコード氏は10年にゲンパックの門を叩いた。「コミック界では老舗の出版社で、給与水準もよかった」と、ペンを支える生活を堅実に見ていた。マレーシアには漫画家の専門学校はなく、それぞれ9歳から独学で描き始めた。手本にしたのは、レンタルコミック店で片っ端から借りた「AKIRA(アキラ)」(大友克洋原作)。「描く線が緻密で真似したかった」と口をそろえる。

80年代当時のレンタル料は0.5リンギ(現在のレートで約14円)。「スラムダンク」「ドラゴンボール」も合わせて借りて、「練習したいページをコピーしては返却していた」(レッドコード氏)。その後、マレーシアでは漫画の潮流が「99年に変わった!」と盛り上がる。「連載を終えたAKIRAがマレーシアのレンタルコミック店に入ってこなくなった」年だ。

AKIRAに代わって登場したのは、「NARUTO(ナルト)」「ONE PIECE(ワンピース)」「BLEACH(ブリーチ)」。いずれにも夢中になった。スライウム氏は男性、レッドコード氏は女性のキャラクターが得意だが、国民の6割をムスリム(イスラム教徒)が占めるマレーシア。宗教上の配慮から「日本のような極端に短いスカートや体の線を強調した作風は控えている」(レッドコード氏)。

■勝敗付くも心は「接戦」

デジタル化の波に漫画家の作業の場も紙からスクリーンに変わった。紙の良さは、「例えば、米国の作品であればコマが多く、ストーリーも複雑で文字も多い。それだけに手書きの愛着を感じる」。ひと呼吸置いて、「日本は人物の表情を細やかに描き、心情を浮かび上がらせる技術に優れている」とスライウム氏は持論を展開する。

日本の漫画に青春を捧げ、「輪郭の楕円をつくり、パーツの配置を決める十字線を引いた後、目は右から……」と基本を教わることなく習得した。直近で世に送り出したのは、「サシハリアリ対グンタイアリ」。シリーズでは毎号勝負が付くが、秘めた力では五分五分だと笑い合う。(マレーシア版編集・久保亮子)


関連国・地域: マレーシア
関連業種: 社会・事件

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