日本経済産業省は20日と21日にベトナムで食品加工業の高度化に向けた日越セミナーを開催した。経産省がベトナム商工省と共同で、地場企業を集めたセミナーを行うのは今回が初めて。ベトナム国内では環太平洋連携協定(TPP)や自由貿易協定(FTA)を背景に食品輸出への期待が高まっている。経産省は来年以降も引き続き支援活動を実施していく方針だ。
同セミナーは、10月に日本で開催した「日越産業・貿易・エネルギー協力委員会」での合意を受けて実現した。食品産業関連の協力は、世耕弘成経済産業相とベトナムのチャン・トゥアン・アイン商工相が合意したさまざまな分野における協力要請のうちの一つ。
経産省通商政策局・アジア太平洋州課の清水正雄参事官は「ベトナム政府は地方における食品加工業の発展を非常に重視している」と述べた。ベトナムの食品を日本に輸出するために、ビジネスマッチング機会の要請も多いという。地場企業は機会創出さえあれば、輸出につながるとの認識がある。ただ、ビジネスマッチングを実施しても成約率は1%にも満たないのが現状のようだ。
そこで、今回のセミナーではまず、ベトナム食品加工産業の課題を提示し、日本企業が懸念する「食品の衛生・品質管理」について、日本の取り組みを事例に説明。20日は農業が盛んな南部メコンデルタ地域のカントー市で、21日はコーヒー生産地の中部高原ダクラク省バンメトート市で開催した。
■ベトナム食品の信頼性の底上げを推奨
清水参事官は2017年の調査を基に、日本企業からみたベトナム食品加工業における「生産」「加工・物流」「販売」の各段階における課題を提示した。主要課題として、加工技術不足や品質管理、トレーサビリティー(生産履歴の管理)などを挙げ、「(日本企業からは)承認制度や安全基準への信頼性に欠ける」との声があると説明した。その上で、ベトナム食品加工製品への「評判」を上げる方法の一つとして国際認証の取得などを提案した。
日本食品マネジメント協会(JFSM)理事の内堀伸健氏からは、日本発のグローバル食品安全規格である「JFC―C」を紹介。グローバルチェーンにおけるJFC規格の活用事例などを用いて、国際市場で戦うためには「価値の見える化」が重要だと説いた。
このほか、イオントップバリュー香港の岸克樹社長が登壇し、同社がトップバリュー商品を通じて実施している「食品安全対策」について、生産から販売に至るまでの取り組みを詳しく説明。参加した約100人の食品加工関係者は熱心に話に聞き入った。
清水参事官は今後もさまざまな支援を実施していく意向だと述べた。ベトナムの加工食品の輸入に関心がある日本企業は、経産省通商政策局のアジア太平洋州課に問い合わせをしてほしいと呼び掛けた。
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