• 印刷する

【ASEAN】ホテル業界でのハノイとホーチミンの違いとは

過熱するASEANのホテル投資(3)

10月30日付のNNA記事「ノバランド、南部でエコ都市区開発を計画」(https://www.nna.jp/news/result/1829721)によると、ベトナムの不動産開発大手ノバランド・グループが、南部バリアブンタウ省でサファリパークと環境配慮型都市区の開発を計画しているという。

同記事によれば、サファリパークはスエンモック郡の面積500ヘクタール余りの用地に建設し、ウオーターパーク、リゾート、ホテル、商業施設を併設する。ホーチミン市に本社を置くアードン観光商業社(ビドツアー)と提携して開発する。

都市区はバリア市ロンフオン街区の国道51号線沿いの1,800ヘクタールを用地とし、水面400ヘクタール余りを含む。フランス、スペイン、ベネチア、モロッコ、ギリシャ、オランダなど7つの国・都市の景観を模倣した個別の7区域で構成する。計画はすでに省人民委員会から原則的に承認を受けており、ノバランドは基本計画案の年内完成を目指して作業を進めている。

省観光局によると、2018年上半期(1~6月)に同省を訪れた旅行者は約650万人に上るが、中~高級ホテル・リゾートが著しく不足しているという。

一方で、11月5日付のNNA記事「ホテルニッコーハノイ、1月にブランド変更」(https://www.nna.jp/news/result/1831769)によると、ハノイ市ハイバーチュン区にあるホテル・ニッコー・ハノイはこのほど、2019年1月1日のチェックアウトをもって、「ニッコー・ホテルズ・インターナショナル」ブランドとしての営業を終了すると発表している。

ホテル経営・所有会社のKCCハノイ・プラザとオークラニッコーホテルマネジメントとのホテル運営受託契約の満了に伴った措置。19年1月1日以降は、Plan・Do・See(プランドゥシー、東京都千代田区)が運営会社として営業を引き継ぐ。これに伴い、ホテル名は「ホテル・ドゥ・パルク・ハノイ(Hotel du Parc Hanoi)」に改称される。既に予約されている同日以降の宿泊・宴席については、予約時の料金と内容のまま提供し、キャンセルも無条件で受け入れるとしている。

ホテル・ニッコー・ハノイは、1998年8月に開業。20年余りにわたり宿泊や、日系企業・団体などのイベント会場として利用されてきた。

ホーチミン市の「ホテル・ニッコー・サイゴン」は、これまで通り運営を継続する。20年には、北部ハイフォン市で「ホテル・ニッコー・ハイフォン」、ホーチミン市で「オークラプレステージサイゴン」の開業を予定している。

■ホテルの投資先としてハノイ、ホーチミンはどちらがいいのだろうか

このシリーズでは、ホテル投資が過熱する東南アジア諸国連合(ASEAN)の現況をテーマに記載してきた。上記の記事でも見られるように、ハノイやホーチミンでも、ホテル業界での投資をはじめとする動きは活発化している。今後ベトナムにおいては、さらなる海外からの入国者の増加に加えて、所得水準が上がるに伴いレジャーや宿泊関連への需要が高まることが予想されている。

そこでよく出るのが、果たしてホテルの投資先として、ハノイ、ホーチミンとでどちらが良いかという質問だ。そこで、前回記事でも取り上げたホテルにおける主要指標について、ハノイとホーチミンを見比べながら、今後の市場としての魅力度について考えていきたい。

まずは、ベトナムのホテル市場としての概況から見ていこう。図1はベトナムにおける海外からの入国者数の推移だ。前述のとおり、海外からの入国者は着実に増加傾向にあることが分かる。

一方で、主要都市別にみる海外からの入国者はどうだろうか?図表2は、ベトナムの主要都市別の海外からの入国者数だ。こちらを見ると、ホーチミンが520万人に対してハノイは400万人と、ホーチミンのほうが30%も多い。

一方で、その年率成長率でみてみると、ハノイのほうが20%と、ホーチミンの11%に対して約2倍も高い成長率を示している。つまり、今後仮にこの成長率を維持した場合、2019年にはほぼ両都市の数値は同じになり、20年にはハノイがホーチミンを上回ることになる。今後の成長性も鑑みると、なかなか両都市の優位性について甲乙つけがたい。

なお、海外からの入国者数は、特にハイエンドのホテルにおける重要な需要者ではあるが、それと同様に重要なのが国内の旅行者である。図表3は、ベトナムにおける旅行者に占める国内・国際旅行者の比率である。これを見ると、国際旅行者の比率はベトナム全体の旅行者数の15%に過ぎない。従って人数的により重要なのは国内旅行者だ。加えて、首都であり政府関連で地方から訪問者が比較的多いハノイにおいては、特に重要な要素を占めてくる。

■主要3指標から見るハノイ・ホーチミンホテル市場比較

前回にもご紹介した、ホテルの市場を見る際の基本指標である平均客室稼働率(Occupancy Rate: OCC)、平均客室単価(Average Daily Rate: ADR)、そして最後に一日あたり販売可能客室数あたり客室売上(Revenue Per Available Room: RevPAR)を比較する。

まずは部屋の平均客室稼働率からだ。図表4は、平均客室稼働率の比較だ。

ハノイの平均客室稼働率は85%と、ホーチミンの75%と比較しても高い水準にある。これは前回も記載のとおり、ハノイの水準は東南アジア諸国連合(ASEAN)の他の主要都市と比較しても最も高く、その次に来るのがシンガポールの84%だ。海外からの入国者数がそれほど多くないにもかかわらず、平均稼働率が高い理由は、国内旅行者数が多いことと、現在の供給量の少なさにある。

この数を見ると、今後の想定させる海外からの訪問者の増加も考慮すると、ハノイのほうがホーチミンより底堅い需要があるように見えてくる。

■平均客室単価がより高いホーチミン市

2つ目の主要なホテル指標は平均客室単価(ADR)だ。これは「Average Daily Rate」の略で、客室全体の売上を販売した客室数で割った値であり、客室1室あたりの販売単価を意味している。平たく言えば、それぞれの都市におけるホテルの平均の1泊当たり室料になる。

ここでは、ホーチミンのほうが117米ドル(約1万3,200円)に対して、ハノイは113米ドルと、ホーチミンに分があるように見えてくる。ホーチミンのほうがハノイに比べて総じて物価水準も高い傾向にあるが、ホテルの平均客室単価を見てもその傾向が見てとれる。

■一日あたり販売可能客室数あたり客室売上(RevPAR)がより高いのはどちらか?

それでは、客室稼働率と平均客室単価の双方を加味した指標である「一日あたり販売可能客室数あたり客室売上」(Revenue Per Available Room: RevPAR)ではどうだろうか。

この指標は、販売可能客室1室あたりの売上を表す値であり、前述の客室稼働率(OCC)を平均客室単価(ADR)で乗じた値と等しくなる。RevPARは、実際の稼働率を考慮した客室1室あたりの売上高が分かる値であり、ホテルの実力が分かる指標としてとても重要だ。

それではホーチミンとハノイを比較するとどうだろうか。結果、ハノイのほうが96米ドルに対して、ホーチミンは89米ドルと劣後している。これだけ見ていると、ハノイのほうがホーチミンに対して、客室当たりでより多く稼げることが予想される。

今後の需要も含めて考えると、海外からのさらなる訪問者の増加や物価水準の更なる増加などを鑑みても、ハノイの市場としての底堅さは魅力的に映る。一方で、ハノイもホーチミンもともに空港の拡張計画が存在するが、こうした計画が進展した際の受け入れ人数なども影響してくるだろう。

このように都市のホテル立地の比較はこの3つの指標のみで簡単に語れるものではなく、需要の将来性、今後の新規建設ホテル予測、どのような立地が入手可能なのか、地価の動向、どのような協業のホテルが存在するのかなどを含めて、より精緻かつ総合的な検討が必要になるだろう。

今回はハノイ、ホーチミンの両都市の比較として、ホテルの軸で見てきた。次回では、今回も見たハノイとホーチミンのホテル市場の比較について、サービスアパートのセグメントで、より踏み込んでみていきたい。

<筆者紹介>

杉田浩一

株式会社アジア戦略アドバイザリー 代表取締役。カリフォルニア大学サンタバーバラ校物理学および生物学部卒。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)経済学修士課程卒。15年間にわたり複数の外資系投資銀行にて、海外進出戦略立案サポートや、M&Aアドバイザリーをはじめとするコーポレートファイナンス業務に携わる。2000年から09年まで、UBS証券会社投資銀行本部M&Aアドバイザリーチームに在籍し、数多くのM&A案件においてアドバイザーを務める。また09年から12年まで、米系投資銀行のフーリハン・ローキーにて、在日副代表を務める傍ら東南アジアにおけるM&Aアドバイザリー業務に従事。12年に、東南アジアでのM&Aアドバイザリーおよび業界調査を主要業務とする株式会社アジア戦略アドバイザリーを創業。よりリスク度の高い東南アジア案件において、質の高いアドバイザリーサービスの提供を目指してASEAN各国での案件を遂行中。特に、現地の主要財閥との直接の関係を生かし、日系企業と現地企業間の資本・業務提携をサポートしている。


関連国・地域: 日本
関連業種: 建設・不動産

その他記事

すべての文頭を開く

テイクオフ:日系の小売店が多く進出…(12/19)

干ばつ保険開発で農家支援 SOMPO、衛星データ活用(12/19)

日産が後任会長決定見送り、企業統治委を設置(12/19)

中華映管、生産再開へ協議中 原材料の取引先、貸し倒れを懸念(12/19)

日系チェーンは運営見直しも 化粧品市場(下)差別化で攻勢へ(12/19)

トヨタ、グラブと提携強化 車両データ活用し総合サービス(12/19)

日比EPA見直し来年妥結か 日本は完成車関税5%を要求(12/19)

日本人学校の新校舎が完成、生徒増に対応(12/19)

トヨタ販売が3年連続最高、中国や欧州好調(12/19)

EV充電規格、日本式も採用 インフラ投資が活発化の兆し(12/19)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社エヌ・エヌ・エーは一切の責任を負いません。

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン