• 印刷する

【アジアで会う】チャオ・テムラックさん 実業家 第213回 「山田長政この地に眠る」の石碑建立(タイ)

チャオ・テムラック 1964年5月生まれ。タイ南部ナコンシータマラート県出身。日本に8年留学した経験から、両国の友好促進を願って、17世紀にアユタヤ王朝で活躍した山田長政の石碑を建立。若者の日本留学の支援にも尽力する。タイ日人材育成協会会長。福岡県の私立柳川高等学校付属タイ中学校の統括責任者兼副理事長。

古都ナコンシータマラート市(略称ナコン)で、ウェブ作成や旅行業など4つの会社を経営する。流ちょうな日本語で語る半生のキーワードは「石川県」「山田長政」「人材育成」だ。

ナコン郊外の農家に生まれた。裕福とは縁遠く、高校は首都バンコクで寺男を務めながら通った。その境遇が非営利組織、国際ロータリーなどの奨学金による日本留学で一変する。

24歳から天理大学で日本語を学び、金沢経済大学(現金沢星稜大学)の商学科を卒業。金沢大学大学院の修士課程を修了した。石川県警で通訳を務めたり、同県タイ友好協会でタイ語を教えたりと、人脈も多方面に広げた。

オーストラリア留学を経て、2000年にナコンへ戻り、「さて故郷と日本の友好のために、何ができるか」と考えた。

■「求む庭師!」日本庭園で茶会を

行き当たったのが山田長政だ。アユタヤ王朝の傭兵隊長で、日本人町の指導者として活躍した長政は、宮廷の内紛でナコンに左遷され、1630年、この地で毒殺されたと伝えられる。

「長政の縁で、多くの日本人をナコンに呼びたい」。地元の有力者に声をかけ、長政の故郷、静岡県を訪ねて、石碑の建立で合意。当時のナコン市長から、市内のトン・ターラー公園内の10ライ(1.6ヘクタール)の土地の提供を受け、「日本庭園」と名付けた。

「山田長政この地に眠る」。石碑の文字は、石川県出身の森喜朗元首相の筆だ。「知り合いだった森さんに、長さ2メートルの紙を持って行って、お願いした」。2001年8月の石碑除幕式には、バンコクや石川県から数十人が訪れたという。

石碑の建立後、ナコンと日本の交流は進んだ。毎年夏になると、石川県タイ友好協会の訪問団がやってくる。今年も8月8日にナコン入りし、海辺でマングローブの植樹などをする予定だ。

ただ、チャオさんは庭園の現状に不満だ。石碑は立派でも、周囲は手入れが行き届いていない。「石や小川を日本庭園らしく配置し、庭師を金沢の兼六園に派遣して研修させたが、続かなかった。根気のいる仕事は、タイ人は苦手だ」

だから、日本から庭師に来てほしい。「滞在費はこちらで出す。きれいに手入れされた庭園に、茶屋を建ててお茶会をやりたい」

■故郷を担う人材育成に「留学準備校」

チャオさんは、日本への留学生の送り込みにも力を入れている。帰国直後から今までに、400人以上のタイの若者を日本各地の日本語学校や高校に派遣。11年にはナコンに財団「タイ日人材育成協会」を設立し、全国に支部を広げて、日本留学の支援の拠点とした。この間、自身もバンコクの国立ラチャパット大学スアンドゥシット校で経営学の博士号を取っている。

16年、チャオさんは日本留学の準備校ともいうべき柳川高校付属タイ中学校を、自宅の隣に開設した。同高を運営する柳商学園の古賀賢理事長と知り合い、13年から同高への留学生派遣を始めたが、日本語を学ばずに留学すると授業について行くのが難しい。そこで、古賀氏と共同出資で付属中学校を作るという、思い切った手段に出た。

付属中はタイの認可中学校で、タイのカリキュラムに加えて、日本語を学ぶ。日本語能力試験(JLPT)のN3(5段階の中央)取得が目標。開校3年目の今年で3学年が揃った。生徒110人の出身地は全国に及び、9割は寮住まいだ。来年は初の卒業生が16人出る。うち10人が柳川高へ進学予定という。

「日本の高校に留学し、大学に進学して帰国すれば、22歳で4万バーツ(約13万3,000円)の月収が得られる。これは勤続30年の公務員並み。タイの大学を出ても、ナコンの初任給の相場は1万バーツ程度でしかない」

「日本は技術の発展と並行して、自らの文化・習慣を守っている。タイが目指すべき未来だと思う」「私が日本で得た知識や経験は、死ねば無に帰す。それを引き継げる人材を育てたい。若者はバンコクに出たがるが、故郷に帰って、故郷を発展させられる人間が必要なのです」――話すうち、チャオさんの口調はますます熱を帯びてきた。(タイ版編集・沢木範久)


関連国・地域: タイ日本
関連業種: 社会・事件

その他記事

すべての文頭を開く

テイクオフ:経済のデジタル化や、産…(12/19)

日系チェーンは運営見直しも 化粧品市場(下)差別化で攻勢へ(12/19)

イースタン、EV向け軽量ボディー供給へ(12/19)

バンコク航空、来年1月にカムラン線就航(12/19)

東北部コンケンのLRT、入札は来年2月(12/19)

ハウスドゥ、海外初進出先としてタイを検討(12/19)

外国人犯罪の摘発、中国人が75%(12/19)

不動産シンハ、定期収入拡大に580億円投資(12/19)

建設ITD、LNG基地と鉄道地下工事受注(12/19)

新電力開発計画、電気代上限を大幅引き下げ(12/19)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社エヌ・エヌ・エーは一切の責任を負いません。

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン