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【アジアで会う】三浦俊也さん  ホーチミン・シティFC監督 第204回 プロのサッカー指導者としてより高みへ(ベトナム)

みうら・としや 1963年岩手県釜石市生まれ。駒澤大学を卒業後、岩手の養護学校で教員をしながらアマチュアとしてプレー。91年に単身ドイツに留学し、コーチライセンスを取得。帰国後、大宮アルディージャなど複数のJリーグクラブを率いる。2014~16年にベトナム代表監督。14年の東南アジア選手権でベスト4。18年にホーチミン・シティFC監督に就き、再びベトナムに。3月に開幕したVリーグでの3位圏内を目指し、練習・試合会場と自宅を往復する日々だ。

ホーチミン市の練習グラウンドでミニゲームが始まると、黙ってウオーミングアップを見つめていた監督が豹変(ひょうへん)した。ストップウオッチとホイッスルを手に叱咤(しった)し続ける。「ヨッシャー!」などの叫びが時折英語に交じる。三浦サッカーは練習から球際の強さを求める。優に30度を超える暑さの中、監督より一回り大きい選手らがボールを追ってぶつかり合う。

ピッチ外で話を聞くと闘将は別の顔を見せる。自らの言葉を確かめるように話しながらも視線をそらさない。安定した日本の生活を捨てた理由を聞くと「Jリーグの監督は平均何年で辞めるか知ってます? 2年以下ですよ」と日本でもプロの監督業を取り巻く環境が厳しいと数字で説明された。選手に対してもビデオやデータを使って理詰めで理解を深めさせるのが三浦流コミュニケーションだ。

ベトナムの第一印象は「バイクの津波」。交通ルールに従わない走り方を見て、サッカーの規律も守られないのではと不安がよぎったが、代表選手らは時間を守り、話を聞く態度もできていた。ただ「体のぶつかり合いを避ける。悪い言い方をすれば逃げる」のが目に付いた。ボールを死守し、もぎ取る激しさがなければ国際舞台では勝ち抜けない。日頃の練習から徹底させ、やらない選手は使わない方針を貫いた。

代表を闘う集団にまとめ、東南アジア選手権の準決勝第1戦でマレーシアを破るとベトナム国民は熱狂した。16年に解任されたが「盛り上がるときは日本の何千倍。やりがいがあった」と振り返る。

■「外国人であることを利用」

選手にチームへの忠誠心を植え付けることに最も気を配る。実際、ベトナムで認められたのも「選手を公平に扱ったから」だ。「ベトナムの英雄」レ・コン・ビン選手(既に引退)をスタメンから外し、より走れる選手を起用したこともあった。ベトナム人監督は過去の実績を知るだけに有名選手を外しにくい。サッカー協会や所属クラブ、メディアの声も気にしてしまう。

練習グラウンドの芝生の整備や代表のサポート係の増員も、協会に掛け合って実現した。「外国人だから聞いてくれることもある」。特にベトナムでは親日的な国民感情が仕事を進める上での後押しになった。

■「妥協の線引き、自分の中に」

外国人監督として、理想と現実のせめぎあいはある。キャプテンを任せようとした選手に「僕はまだ若いので」と断られたことがあった。年功序列の文化がサッカーにも残る。糖分や脂肪、白米が多すぎる食事も「そこまで制限すれば選手たちが拒否反応を起こしてしまう」と国際水準を求めていない。

それでも「譲れない一線は自分の中では引いている」。たとえばアジアでよくある協会やオーナーによる選手起用への介入は契約書で防ぐ。一線を越えればいつでも辞める覚悟はできている。プロの世界を渡り歩く中で貫くポリシーが、「自分から『仕事を下さい』とは言わない」。オファーがあれば納得する条件を盛り込んで初めて契約書にサインする。

将来の夢を聞くと「海外でもう少し上のレベルでやれれば」と本音を明かした。「誰も行ったことがないようなところでも開拓してみたい」とも語る、海外での日本人サッカー監督のパイオニアにとってベトナムは通過点。「一番大事なのは自分に対する投資」と今も語学などの勉強を続ける。

主力選手のケガが相次ぐホーチミン・シティFCは28日時点でリーグ11位と苦戦するが、陣容がそろえば十分に上位が狙える。世界中が熱狂するサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会期間中も、三浦監督はベトナムで闘い続ける。(ベトナム版編集・渡邉哲也)


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