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【アジアで会う】宮川光彩さん バイリンガル司会 第207回:KL生まれ、鳥取にふるさと発見(シンガポール)

みやがわ・みさ 1988年マレーシア・クアラルンプール生まれ、シンガポール育ち。高校、短大の約6年間を日本で過ごす。シンガポールで就職し、クールジャパン事業に携わる中、人気アイドルグループAKB48のシンガポール公演の司会などを経験。2012年に独立し、ラスターの屋号で司会、通訳事業を手掛けている。18年1月には鳥取県から観光PR大使「トットリ・スター・クイーン」に任命された。趣味はムエタイと料理。

3棟のタワーと船を模したデザインの屋上で有名な湾岸部のカジノ統合型リゾート(IR)マリーナ・ベイ・サンズ(MBS)もまだない頃のシンガポールで、宮川さんは小・中学校時代を過ごした。今でこそシンガポールを拠点に活動しているが、当時は日本への憧れが強く、「早くこの国を出て日本へ行くんだ」とばかり思っていたという。高校、短大はそれぞれ大阪、東京で通った。

「最初は日本で働きたかったんですよ」。就職活動の時期はリーマンショックの直後に重なった。日本での就職を諦め、シンガポールに戻ったのは21歳の時。オイルトレーダーの職に就き、安定しているが面白みのない社会人生活を送っていた。

■震災を機に

誰かの役に立てているのか――。そんな疑問が常に心の中にあった11年の春にそれは起きた。3月11日の東日本大震災。津波のニュースをリアルタイムで見ていた。東北、関東に住む友人たちと連絡が付かない中、心の中に不安、焦り、悔しさが渦巻いていた。本当はボランティアに行きたかったが、「今すぐ日本に行っても何もできない。シンガポールで日本のためにできることがあるはず」と考え、クールジャパンプロジェクト推進のため新規メンバーを募集していた日系商社に転職した。

携わったのは、日本のエンターテインメントコンテンツをシンガポールに輸出するプロジェクト。初めて手掛けたのは歌手KREVA(クレバ)のコンサート運営だった。その後、歌声合成ソフトで誕生した仮想歌手「初音ミク」のホログラム・ライブなどに関わる中、人気アイドルグループAKB48のシンガポール定期公演の司会に起用された。これが司会人生の始まりとなった。

商社に勤める傍ら、さまざまな日系企業から声が掛かり、週末の休みを使って司会や通訳の仕事を引き受けるようになった。引き合いが多くなり、商社就職から1年後に独立。現在は日本語と英語に加え、流ちょうなシングリッシュ(シンガポール英語)も巧みに操り、シンガポールの人々の心をわしづかみにしている。

■日本にできた「ふるさと」

両親もシンガポール在住の宮川さんには「ふるさと」と呼べるようなところがなかった。「日本の自治体と一緒に仕事をするたび、ふるさとのために熱くなっている人たちをうらやましいと思っていた」という。ところがそんな宮川さんも最近、自然に囲まれほっとできる「自分の田舎」を見つけたそうだ。彼女が観光大使を務める鳥取県だ。

当初は通訳をお願いされただけの関係だったが、県職員らの情熱に心動かされ、17年に初めて鳥取県を訪問した。鳥取砂丘やしゃぶしゃぶ発祥の店など観光名所だけでなく、地域住民との触れ合いを通して鳥取県の魅力に取り付かれた。「県職員でも、民家のおばちゃんでも、会う人みんながいい人で、話しているとほっこりするんです」と宮川さん。18年1月には正式に観光大使「トットリ・スター・クイーン」に任命された。「鳥取星空王子」を務める香港の写真家ウィル・チョー氏と共に、鳥取県の魅力を海外に発信している。

フリーランスとして活動しているため、孤独や不安を感じることもある。だが裏を返せば、鳥取県をはじめ、さまざまな人と協力し合えるということ。商社に勤めていた時も、独立してからも、国籍を問わずたくさんの人に助けられた。昔はあまり好きではなかったけれど、今は大好きなシンガポールで「ふるさと」がある日本のために働ける。シンガポールにも日本にも育ててもらった。「両方の良いところを知って、どちらの価値観も理解できて、自分はラッキーだと思う」と話す宮川さんの笑顔はまぶしく輝いている。(シンガポール&ASEAN版編集・鈴木あかね)


関連国・地域: シンガポール日本
関連業種: 社会・事件

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