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【アジアで会う】アフマッド・ダヒディさん 大学助教授 第197回 雑談から始まる日本語交流(インドネシア)

アフマッド・ダヒディ(Ahmad Dahidi) 1958年2月生まれ。西ジャワ州バンドン在住。インドネシア教育大学(UPI)言語文学教育学部日本語教育学科助教授。82年にバンドン教育大学(IKIPバンドン、現在のUPI)卒業、文部省(当時)の奨学金を得て82~84年に広島大学、90~94年に大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)に留学した。好きな漢字は「愛」「和」「力」「勝」。知人が寄贈してくれた書が、自宅の部屋を飾る。

日本とインドネシアは今年、国交樹立60周年。日本語教育を通じて、35年以上も日本との関係を築いてきたダヒディさんも、今年還暦を迎えた。両国が平和条約と賠償協定を締結したのは1958年1月20日、ダヒディさんはその翌月に産声を上げた。

インドネシアの日本語学習者は、今でこそ世界2位の約75万人に上るが、ダヒディさんが大学受験で日本語学科を選んだ40年前、日本語を学ぶ人はまだ少なかった。ダヒディさん自身、当初希望した分野とは違い、「なんとなく」選択した日本語学科だった。

しかし入学後、日本に留学経験のある教授から話を聞くうちに、「自分もいつか日本に行きたい」との思いが募る。キャンパスで勉強の傍ら日本人と文通を始め、読み書きの力をぐんと伸ばした。文通相手は女子高生2人。学生生活の話題など、たわいないやりとりが多かったが、もらった手紙は今でも大切に残している。

■銭湯で学んだ広島弁

座右の銘は「郷に入れば郷に従え」。念願かなって初めての日本行きとなった広島大での留学時代から、生活する上での心構えとして実践してきた。その一つが銭湯だ。インドネシアでは幼い頃から両親とですら一緒に風呂に入る習慣はないし、人前で裸になるのはとても勇気のいること。それでも大学近くの下宿は、風呂のない部屋をあえて選んだ。

銭湯で学んだのが、日本語の教科書にはない広島弁だ。当初は、地元の人が言葉の末尾につける「~じゃけん」を「ジャンケン」と聞き間違い、「~にゃあ」を「猫がどうしたんだろうか」と戸惑った。話しかけた人と意気投合して「馬が合うのう」と言われ、「どうして2頭の馬が出会う話をするのだろう」と勘違いした。

銭湯の思い出は、84年に外国人留学生による日本語スピーチコンテストで発表した作文につづった。「初めて裸になった時の不安で、恥ずかしい気持ち。あの頃は、心に、目には見えない洋服を何枚も着せていた。銭湯は、私に心の洋服を脱ぐことを教えてくれた」と表現し、広島県知事賞を受賞した。いまも日本を訪れる際は、真っ先に宿泊先近くの銭湯を探す。熱い湯につかりながら、日本人と世間話をするのが何よりの楽しみだ。

■自宅を開放して親交の場に

日本語を学ぶ面白さをインドネシアの人たちに伝える場は、大学以外にも広がっている。5年前に日本企業と提携して日本語塾をバンドン市内に設立し、高校生や大学生を中心とする生徒に教えている。日本の企業で働きたい学生をインターンシップ生として派遣する支援活動も始めた。学生を引率して日本各地の学校などでインドネシアの伝統舞踊を紹介するツアーは留学時代に手掛け始め、2010年からは毎年欠かさず行っている。

今年から毎月1回、自宅を「オープンハウス」として開放し、日本語を学びたい人、日本が好きな人、インドネシア語や文化に興味を持つ外国人が集まり、交流できる場を設けた。35年以上の教師人生で収集した数百冊の書籍を、日本が好きな人たちと共有したいとの願いからだ。

ここでは原則、日本語で話すことがルール。日本語を知らない人にも、参加する前に三つだけ言葉を覚えてきてもらう。持ち寄った菓子をつまみ、意見交換をしながら、交流できる場にすることが目標だ。

日本とインドネシアがこれからも良好な関係を維持するためには、「お互いを理解することが大事」と強調するダヒディさん。好きな漢字4文字を並べて、理想的な2国間関係をこう表現した。「愛情」をもって、友人同士が「平和」な関係を築くことで、「力」を得られれば、必ずや目標を「勝」ちとることができる、と。(インドネシア編集部=山本麻紀子)


関連国・地域: インドネシア
関連業種: 社会・事件

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