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【アジアで会う】飯田直樹さん ブレズ薬局創業者 第193回 「思い立ったが吉日」の行動力(タイ)

いいだ・なおき 1988年神奈川県生まれ。就職活動中に中小企業の社長らと交流を深めるうちに、起業に興味を持つようになる。やがて出会った社長の1人からITシステムを販売する仕事を請け起業するも、月収は数万円の日々が続く。電子商取引(EC)サイトを通じたタイ雑貨の販売を経て、2012年5月にバンコクで「ブレズ薬局」を設立。現在は薬局5店、内科総合診療を行う「ブレズクリニック」を運営し、設立から5年で年商2億円の事業に育てる。小学校から大学までを野球生活にささげてきた。

タイ在住の日本人なら、一度はブレズ薬局にお世話になったことがあるのではないだろうか。首都バンコクの中心地に構える店舗では、常駐する日本人通訳から薬の説明を聞けるだけでなく、効果が高いと口コミが広がるシミ取りクリームなどの美容製品や、ニキビ用クリーム、育毛シャンプーなどの人気商品が並ぶ。近年は薬を買いに来る客だけでなく、旅行者が土産物を探しに足を運ぶ場にもなっている。

そんなブレズ薬局を設立したのは、当時24歳の青年だった。運営会社のブレズアジアで最高経営責任者(CEO)を務める飯田直樹さんは「そもそもはタイで物を買って、日本に送るというビジネスから始めたんです」と話す。

タイとの出会いをもたらしたのは、システム会社で一緒に仕事をしたエンジニアの男性。幼少期をタイで過ごした彼が利用していたのは、タイの雑貨を扱うECサイト。「ただ、そのサイトがめちゃくちゃしょぼい訳ですよ(笑)。商品が偽物かどうかも分からない訳です」。男性いわく、タイに住んでいた者からすれば、商品の良さや価格の手頃さを見極めることができるのだという。

「これで人は物を買うんだと。俺ならこれより綺麗なサイトにできるけどなと。じゃあ値段でくぐったら(下回ったら)勝ちじゃんて思って。それで面白そうなんでタイに見に行ってきますと」

初めはタイがどこにあるのか見当もつかなかった。降り立った空港でタクシーの運転手に「バンコクに行きたい」とだけ告げ、降ろされたのが、いずれブレズ薬局の1号店を開店することになるアソーク。そこからバンコク各地で雑貨を見て回る日々が始まる。初めは靴に時計、携帯カバー、薬品など、ありとあらゆる物をそろえ、ECサイトで販売していった。「バッグは売れないから、食品は腐るからやめようと。そうしていくうちに、残ったのが薬局の中にあるものだったんです」

■開業後は資金難も

毎日の薬局通いが続き、次第に自分の手で薬局を開業した方が効率が良いと考え始めた。ECサイトでの販売開始から約1年でブレズ薬局を開業したものの、店舗運営の経験は皆無。ランニングコストを全く考慮しておらず、親族からかき集めた資金はすぐに底を尽きた。

「何百通りも計算するんだけど、足りないんです。ぎりぎりまで粘るんです。でも、その時間は無駄なんです。だからさっさと泣きついた方がいいんですよ(笑)」

再び親族に借金するも、業績は上がり始めていたため、いずれ返済できる自信はあった。次第に日本語で接客してくれる薬局の評判はバンコクで広がり始め、客が客を呼ぶように。開業から1年足らずで黒字化を達成した。

■チェーン展開の挑戦始まる

日本特有の薬事情も、ブレズ薬局の成功を後押しした。薬の成分名は世界共通のため、一般的に西洋人は自分の症状にあった成分名を薬局で伝えることができる。ただ、日本では複数の成分で構成された総合風邪薬などが多く出回り、一般人の間で成分名の知識が普及していない。これが日本人が海外で薬を買うことを難しくさせており、日本人通訳の存在が重宝されることになった。

「商機になったのでラッキーでしたね。そういうことは後から知ったんですけど(笑)」

15年には新たな挑戦として、ローカル市場に照準を当てた薬局「未來ファーマシー」を3店相次いで出店。日本の医薬品を豊富に扱うことを売りに、業績は右肩上がりで、「これはタイ全土に広がる」と確信した。現在は地場の財閥と合弁会社の設立に向けた準備を進めており、タイ全土でチェーン展開の挑戦が始まろうとしている。周辺国への進出も視野に入れる。

「幼少期から家にいるのが嫌いで、外で何かしらやっているんです」と話す飯田さん。「思い立ったが吉日」の行動力が、彼に新たな夢を運ぶ。(タイ版編集・安成志津香)


関連国・地域: タイ日本
関連業種: 医療・医薬品社会・事件

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