【LGBT市場】性のはざまの100万人市場(下) ワコールとAXA、商品投入で先行

タイでもLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)向け商品投入の事例が出てきた。日本の女性用下着大手ワコールは、約4年前にLGBT商品の取り扱いを開始。フランスの保険大手アクサ(AXA)は2017年から事実婚状態の同性愛者が保険金を受け取れる制度を整えた。LGBTのニーズに応える形で、サブマーケットとして取り込もうとしている。【シンチャイ・プラサーンスックラープ/Silpchai Prasarnsuklarp、小故島弘善】

トムボーイ向け商品を説明するタイワコールの担当者=ノンタブリ県(NNA撮影)

トムボーイ向け商品を説明するタイワコールの担当者=ノンタブリ県(NNA撮影)

ワコールホールディングスとタイの消費財大手サハ・グループの合弁会社、タイワコールは、医療用として開始したカスタマイズ下着事業「ボディークリニック」を発展させ、LGBT向け商品を投入した。担当者は「本格的な商品化はワコールグループでもタイが初めてだ」と語る。

同社は、今年1月に開催された「LGBTエキスポ」ではトムボーイ(男装して女性を愛する女性)向け既製品を初めて投入した。締め付けず胸を小さく見せるインナー(クロップトップ、タンクトップ)では、これまでスポーツブラジャーなどを利用してきた消費者のニーズを取り込む。また、機能は生理用ショーツで男性向けデザインのパンツも販売しており、メンズデザインを求めるトムボーイに訴求する。

販売担当者は「オーダーメイドで始まったが、既製品も投入して販売価格を手頃にしている」と説明する。例えば、トムボーイ向けのクロップトップの販売価格は1,500バーツ(約5,100円)。一般的な商品より高いが、高品質でニーズに直接的に応える、満足度の高い商品に仕上がったという。

タイワコールのLGBT向け商品を試す消費者=ノンタブリ県(NNA撮影)

タイワコールのLGBT向け商品を試す消費者=ノンタブリ県(NNA撮影)

LGBT向けのボディークリニックではほか、大柄の人のための下着類や、ヒップを大きく見せるパンツなどプロポーションをよく見せる商品を販売している。タイの4カ所(首都バンコク、北部チェンマイ、東北部ウドンタニ、南部ソンクラー県ハジャイ)に置く専門店で取り扱っており、海外からの問い合わせも増えている。

■同性パートナーにも生保を

金融・保険業界では、グループで「LGBTフレンドリー」を掲げるAXAがタイでもLGBTカップルの生保需要取り込みに乗り出した。AXAとタイ国営クルンタイ銀行の生保合弁、クルンタイAXA生命保険は、17年8月に事実婚状態ならばパートナーを保険金受取人とできるようにした。

同社の担当者は「30代のレズビアンカップルを中心に、『どうすればLGBTカップルが生保に加入できるか』との問い合わせが多かった」と説明する。保険金の受取人は親族とすることが基本で、同性愛者の加入は難しいというのが現実だった。

クルンタイAXAは同性パートナーを保険金受取人に指定できる制度を整えた=ノンタブリ県(NNA撮影)

クルンタイAXAは同性パートナーを保険金受取人に指定できる制度を整えた=ノンタブリ県(NNA撮影)

クルンタイAXAは、LGBTカップルが「ライフパートナー関係を証明する書類」を提出すれば保険商品の購入が可能なようにした。必要条件は、家計や住居、住宅ローン契約などを共有していることを証明できる書類6種のうち2種以上の提出となっている。

同担当者によると、タイ政府は同性婚を認めていないものの、「ライフパートナー」を「長期にわたり資産と住居を共にする者」と定義している。性別に関する条件はないという。

別のタイ系生保2社に問い合わせると、「LGBTへの特別な配慮は実施していないが、ケース・バイ・ケースで対応している」との回答を得た。

■既存の「垣根」を少し低く

ワコールとクルンタイAXAの取り組みは、大きな消費市場を狙いつつ、「男女」「家族」で明確に分けていた垣根を少し低くする、という点で共通する。バンコク・レインボー・オーガニゼーション(BRO)創設者のニコーン氏は「大きな市場を狙いつつ、ニッチにも配慮することで新顧客層の獲得につながる」と説明する。

また、タイの化粧品業界では、「アイライナーを引く男性」の広告など、一目でLGBT向けのPRと認識されないマーケティング手法を取っている企業もある。LGBTフレンドリーを前面に押し出さず、さりげない配慮でターゲット層に届けようとしている。

企業・政府のLGBTに関する取り組みでやや先行する日本では、保険、通信、化粧品、航空でLGBT商品・サービスの開発や導入が進められている。法律面では、欧米先進国で既に同性婚を認める国があり、アジアでは台湾が合憲とする予定。LGBTへの配慮を求める国際的な流れは、タイをはじめとする東南アジア諸国連合(ASEAN)にも波及する可能性がある。


関連国・地域: タイ日本欧州
関連業種: 経済一般・統計アパレル・繊維金融・保険社会・事件

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