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【アジア業界地図】自動車(ASEAN&インド編)

<ASEAN&インド自動車市場のポイント>

●新車購入促進策の反動や物品税制の改正、前国王の死去で低迷したタイの新車販売市場は回復の見通し

●東南アジア諸国連合(ASEAN)最大市場のインドネシアは商用車が好調

●中国、日本に続いてアジア第3位の市場規模を誇るインドは堅調に推移。30年までには自動車の大半を電気自動車(EV)に切り替える目標も掲げる

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【タイ】

2017年のタイ新車販売市場は5年ぶりの拡大がほぼ確実。インラック政権が実施した新車購入促進策で12~13年に100万台以上に一気に拡大したが、需要を先食いし、14~16年は反動で低迷。16年は物品税制改正やプミポン前国王の死去による影響が響いて通年でマイナスとなっていた。「タイ市場の適正値は90万台」(トヨタ自動車の現法広報)で、17年の販売台数は83万~85万台に着地する見通し。車種別では、セダンやハッチバックなどが含まれる乗用車が好調。ピックアップトラックやスポーツタイプ多目的車(SUV)などが含まれる商用車も堅調に推移している。

18年も市場は上向くとみられる。5年前に実施された「ファーストカー政策」で初めて自動車を購入した消費者層の買い換えが本格化する可能性がある。また東部経済回廊(EEC)政策などによるインフラ開発の経済効果も見込めそうだ。

生産では年間約200万台とASEAN最大の自動車生産国。政府はEECで狙う高度産業の中で、「次世代自動車」の誘致に積極的だ。09年に中型セダンのハイブリッド車(HV)「カムリハイブリッド」の生産を開始していたトヨタや日産に、電気自動車(EV)の生産に関するうわさが出ている。

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【インドネシア】

17年のインドネシアの自動車市場は中央銀行による不良債権の圧縮を目的とした自動車ローンの融資厳格化からスタートした。特に価格の安い乗用車の販売が影響を受け、通年の小売り台数に影響を与えた。これに対して商用車は、昨年上半期の不調から一転し、好調な販売を記録している。石炭やパーム油などの資源価格の上昇と政府が推進するインフラ開発が本格化していることが背景にある。

インドネシアでは多目的車(MPV)の人気が高い。17年には5位の三菱自動車が現地生産の小型MPV「エクスパンダー」の出荷を開始し、話題となった。中国・上汽通用五菱汽車も低価格のMPV「コンフェロ」を発表し、日系メーカーの牙城であるMPV市場への食い込みを狙っている。

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【マレーシア】

原油価格の下落や消費税導入などを背景に16年の販売台数は10年以降で初めて60万台を割り込み、17年も60万台までの回復は厳しいとみられる。ただ、ここに来て原油価格が回復し、国内総生産(GDP)が上向いており、新車市場も60万台を回復したいとの業界関係者の期待は強い。

トヨタと3位を競ってきた国民車メーカーのプロトンは品質問題に起因する販売低迷で経営難に陥り、17年には中国の浙江吉利控股集団の出資を受け入れた。18年から抜本的な事業改革が始まる見通し。

エコカーではホンダやトヨタ、BMWがハイブリッド車(HV)を現地生産し、市場に投入している。EVは行政主導でバスへの導入が進んできており、中国の比亜迪(BYD)が先行する。日本勢では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や東芝インフラシステムズ(川崎市)などの企業連合が行政都市プトラジャヤで電気バスシステムの実証試験に乗り出した。

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【フィリピン】

自動車の販売台数がはほぼ毎年2桁成長を続け、急速に市場が拡大するフィリピン。17年1~10月の販売台数は前年同期比16.0%増の33万9,380台だった。フィリピンの貿易産業省は、17年通年で45万台に、2025年には約100万台に達するとの見通しを示している。

一方で生産台数の規模は小さく、産業の集積は進んでいない。需要は主に輸入車で賄われ、販売台数に輸入車が占める比率は7割に達しているとされる。ただ政府は自動車の現地生産を後押しする「包括的自動車産業振興戦略(CARS)」プログラムを推進し、トヨタ自動車と三菱自動車の2社が現地生産を加速しようとしている。

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【ベトナム】

堅調な経済成長や安定した政治により、ベトナムの新車販売台数は16年に初めて30万台を突破した。しかし、18年の乗用車のASEAN域内の関税撤廃を前に、17年は消費者による買い控えが続き、各社は軒並み販売数を減らした。18年はその反動が期待されるが、各社は17年に大規模な販促を実施済みで、年明け以降の需要を結果的に先食いされているとの指摘もある。

また減税がそのまま自動車の販売価格に転嫁されるわけではなく、消費者の期待通りの値下げが起きなければ、反動の需要は空振りに終わる可能性もある。

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【インド】

2016/17年度(16年4月~17年3月)のインドの乗用車販売台数(UV=多目的車、バンを含む)は、前年度比9.2%増の304万6,727台で、初めて300万台を突破した。17/18年度4~10月は乗用車が前年同期比7.7%増と前年度をやや下回るペース。7月に導入された物品・サービス税(GST)の混乱やスポーツ多目的車(SUV)を含む高級車の実効税率の引き上げなどが影響したとみられる。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、17年の乗用車販売台数は前年比9%増の360万台になると予測。メーカーの値下げと新型車投入を押し上げ要因に挙げている。インドの乗用車販売は18年も堅調に推移する見通し。増加率は7%程度になるとみている。

政府は、30年までに国内の自動車の大半を電気自動車(EV)に切り替える目標を掲げている。17年7月に導入されたGSTでは、ハイブリッド車(HV)に比べてEVの実効税率を低く設定するなど、EV重視の姿勢を示している。マルチ・スズキを傘下に持つスズキとトヨタ自動車は、20年をめどにインド市場向けにEVを投入することに関して、覚書を締結したと11月に発表。トヨタ自動車は、インド政府のEVシフト寄りの政策を受け、インドでセダン「カムリ」のHVの生産を一時停止するなど戦略見直しの可能性もある。業界2位のタタ・モーターズは、「世界一低価格の乗用車」として話題を集めた小型車「ナノ」のEVモデルを近く公表する見通しだ。

※特集「アジア業界地図」は、アジア経済を観るNNAの新媒体「NNAカンパサール」2018年1月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: タイベトナムマレーシアインドネシアフィリピンインド日本
関連業種: 自動車・二輪車マクロ・統計・その他経済

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