【この人に聞く】ムスリム訪日客に安心感を サムライトラベル、売り込み強化

インドネシアからの訪日旅行客は年々増え続けており、ハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)に対応した観光旅行の需要も高まっている。訪日外国人を対象に旅行先のホテルやレストランなどの手配・予約を専門に行うサムライトラベル(東京都新宿区)の酒井文博(さかい・ふみひろ)社長は、同社として日本政府観光局(JNTO)の訪日旅行展に初参加した。展示会を機に地場旅行会社と提携する訪日旅行ツアーブランド「ジャパン・ハラル・ホリデー(JHH)」の売り込みを強化する。

(左から)サムライトラベルの酒井文博社長、ロイヤルインドネシアのイマドゥディン社長、BNIシャリアのエンダン・カード事業部長(NNA撮影)

(左から)サムライトラベルの酒井文博社長、ロイヤルインドネシアのイマドゥディン社長、BNIシャリアのエンダン・カード事業部長(NNA撮影)

――今回、JNTOの旅行展「ジャパン・トラベル・フェア」に初参加した。

インドネシアからの訪日客数は増加しており、それに伴ってムスリム(イスラム教徒)の訪日客数も増加している。日本への旅行に関心を持っているムスリムのインドネシア人も多いが、まだ訪日旅行について他国より割高、あるいはムスリムにとって食事や礼拝の環境などのハラル対応についてまだ知られていないところが多いなど、敷居の高さを感じているところがある。

サムライトラベルは、日本でハラルジャパン協会(東京都豊島区)と提携している。同協会は、各自治体や企業と協力してムスリム観光客が安心して過ごせる環境を提供するよう努めている。サムライトラベルでは、こうした自治体や企業との協力を通じて個人客のほか、企業のインセンティブ旅行向けのツアーをアレンジして開発し、販売していく。顧客の見積もりや目的に応じてツアーの日程や内容をアレンジすることもあり、例えば日本の芸能事務所と提携して東京都内を甲冑(かっちゅう)姿で歩く体験ツアーや、料理学校と提携してハラル対応したすしの作り方コースを開発して提供している。

インドネシアでは地場ロイヤルインドネシアと1年半前から提携している。同社はメッカ巡礼や、小巡礼(ウムロ)旅行に強みを持っており、最近では日本向けのハラル観光旅行に力を入れている。これまでも栃木県佐野市と共同で昨年10月に開催されたインドネシア最大級の旅行展「ガルーダ・トラベル・フェア」に初めて出展。今回のジャパン・トラベル・フェアでは、初めてサムライトラベルとして出展して、JHHのハラル旅行商品をムスリム訪日客に販売する。

――インドネシアからの訪日旅行客をどのように強化するのか。

巡礼旅行やハラル旅行に実績のあるロイヤルインドネシアが日本向けのハラル旅行の売り込みを強化している。同社のイマドゥディン社長はハラル旅行の目的地として日本を重視しており、サムライトラベルとしてもロイヤルインドネシアとの提携によりムスリム観光客に対して満足してもらえる訪日旅行を提供できる。

ロイヤルインドネシアは訪日旅行販売の強化に向けて地場企業との提携を進めている。今回のジャパン・トラベル・フェアを前に国営銀行バンクネガラインドネシア(BNI)のシャリア(イスラム法)部門、BNIシャリアと提携。同行が米マスターカードと提携しているシャリア適合クレジットカード「ハサナ・カード」保有者向けに、優先的にハラル訪日旅行のパッケージを販売する。第1弾として今年10月の訪日ツアーの売り込みを開始している。イマドゥディン社長は50人前後の参加を想定しているが、100人規模の参加者を見込んでいる。

――日本ではムスリム旅行客への対応はどのように進んでいるのか。

4~5年前から日本でもムスリム観光客とハラルへの対応が盛んになり、ここ1、2年で大きく進展した。やはり2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた動きが本格化したことが大きい。特に地方自治体で礼拝設備や飲食品のハラル対応が目立ってきている。日本は昨年、世界ハラル観光賞(WHTA)で「イスラム協力機構(OIC)非加盟国でのハラル観光旅行先」で1位に入選しており、イスラム圏からの訪日客はさらに拡大することが見込まれる。

今では東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国から日本を訪れる環境客の2人に1人はムスリムといわれている。その中でもインドネシアは最大の人口を持つ市場。所得増を背景に訪日旅行への関心がさらに高まると予測される。

――今後の展開について。

まずはインドネシア市場で足元を固めていく。インドネシア人の訪日客は増えており、リピーターの人数も拡大しているが、やはりまだ華人系インドネシア人がほとんど。ムスリムのインドネシア人で実際に日本を訪れた回数は1回、多くて2回だ。ムスリムのインドネシア人の訪日旅行客はまだ伸びしろがあり、サムライトラベルでは、ロイヤルインドネシアとインドネシア市場へハラル観光旅行商品を提供する。

一方で、日本側ではムスリム観光客に対して、より安心感と満足感をもってもらえる訪日旅行を提供するため、ハラル観光旅行への対応を助言するなど、自治体や企業と協力して、日本を体験してもらえるようなツアーの造成を進めて訪日旅行を双方で促進していきたい。(聞き手=六角耕治)

<会社概要>

サムライトラベル:2016年設立。訪日外国人向けホテル手配事業のほか、受注型ツアー造成事業、インバウンド企画事業などを手掛ける。同年にロイヤルインドネシアをパートナーとしてインドネシアからのハラル観光を強化している。

<記者の目>

ロイヤルインドネシアのイマドゥディン社長、BNIシャリアのエンダン・カード事業部長とも話す機会があり、2人ともムスリムの訪日旅行について、日本が「ムスリムに安心と平安を与えてくれる旅行先」と述べたのが印象的だった。日本のハラル対応について認識が高まっている。ムスリムのニーズに合った新しい発想による「おもてなし」を提供することがさらに重要になってくる。サムライトラベルはそれらを取り込みながら新しい旅行商品を開発できる強みから、事業のさらなる拡大が期待できる。


関連国・地域: インドネシア日本
関連業種: 経済一般・統計観光・娯楽

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