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【日系企業がゆく】万寿家(天津)食品(マスヤ)

◇第50回

天津といえば“甘栗”――。日本人にはそんなイメージがある。実はこの天津甘栗、原材料の栗は天津産ではなく、河北省の燕山山脈で採れるものだ。ただ天津から日本へと輸出されたため、天津甘栗の名称が付けられたという。この天津甘栗のほかにようかんやチョコレートなどを天津市で製造販売するのが、食品業を主体とするマスヤグループ(本社・三重県伊勢市)の合弁会社、万寿家(天津)食品だ。【北京・黒川真吾】

「中国人を対象とした新ブランドを立ち上げ、今後3年以内に売り上げを現在から倍増させることが目標です」――。万寿家(天津)食品の胡粤衡・総経理はこう語る。

同社の設立は1996年。天津のようかんメーカーをベースに、天津市一軽集団との合弁会社として発足した。現在ではマスヤの香港現地法人である万寿家国際(香港)が51%、一軽集団が49%を出資している。2006年には天津市内から現住所へと移転、自社のオフィス併設の生産工場を設けた。

■日本人に馴染みの同社製品

製品はようかん、チョコレート菓子、むき栗、あられの4種類。製品には甘栗を使った「天津甘栗ようかん」、栗やイチゴ、ライチなどを使ったチョコレート、唐辛子と山椒を効かせた「四川風味柿の種」などがある。日系が中国でようかんを製造販売するのは同社だけ。中国ようかん市場に占めるシェアは約1割で、天津では最大手。フル稼働時の日産量はようかんが2トン、チョコレート菓子が0.5トンだ。

同社製品は、北京や天津、上海などの空港国際線の免税店での販売が大きな割合を占めるため、手に取った人も多いはずだ。事実、日本人が現在の販売全体の半数に上る。百貨店やホテル、高級スーパーにもお土産用として置いているほか、北京と天津では地場系スーパーで量販を行う。日本と香港には一部製品を輸出する。

当初は日本にようかんを輸入していたが、日本が頭打ちとなる菓子業界で、消費が急速に伸びる中国市場に魅力を感じ、内販強化に乗り出した。現在では中国向けが全体の8~9割を占める。

中国での販売を強めるのは、輸出リスクという過去の苦い経験が背景にある。例えば08年の「毒餃子事件」の際は、日本に輸出できない状態に陥った。輸出が2カ月間止まったこともあるといい、顧客店舗では棚からおろされる事態にも遭遇した。元高の進行も含め、輸出リスクの回避を目的に、近年は中国販売シフトへと舵を切った。結果は金融危機以降すぐに現れ、世界が景気低迷に苦しんだ昨年も売り上げは前年超えを記録。今年中国での売り上げは2割増の見通しで、過去最高額になるとみている。

■販路を築く難しさ

天津や北京では元々ようかんを食べるという下地があり、日中のようかんに違いはない。原材料は現地調達が可能で、中国で製品を製造するに当たっての困難もない。

ただ中国資本が入る合弁の同社でも、販路を切り開く厳しさ、特に空港に入る難しさは並大抵ではなかった、と胡総経理は述懐する。中国の各空港にはいずれも既得権があり、「競争のない専売」である卸売りに取り入るのに大変苦労した。「最初は会ってもくれない。ある空港では様々なルートを通じて働きかけ、1年かけてようやく商談がまとまった」と苦労談を語る。

今後は「空港の国内線、高速鉄道駅、百貨店で販路を切り開きたい」と胡総経理。これまで外国人が主なターゲットだったが、中国人高所得者層の取り込みに動き出す。そこで、「万寿家」ブランドではなく、中国人を狙った土産用の自主ブランド製品を開発していく計画だ。

主力のようかんシェアが落ちる中、今ではチョコ販売がようかんを上回る。中国ようかん市場が北京、天津を中心とする地域に限られる上、菓子の種類も増えている中、甘すぎることが敬遠されつつあるためだ。同社のようかん生産量は現在、ピーク時に比べ3分の1に減少した。

一方のチョコ菓子市場は伸びしろが大きいものの、外国品が市場の大半を占める現状では普通にやっては勝てないと判断。空港といった特別な販路で、他社がやっていない独自の製品を開発していく方針だ。北京空港と共同開発した、空港ブランドのチョコ菓子はそのヒントとなる。

今後の売上比率はチョコ菓子を5割、ようかんを現在の売り上げをキープしつつ3割、その他で2割とする。市場開拓や自主ブランドの創設などを通じて、2~3年後には売上高を倍増させる目標だ。(了)

<会社データ>

会社名:万寿家(天津)食品有限公司

所在地:天津市空港物流加工区中心大道環河南路323号

電話番号:022-2489-7527/2489-1800

資本金:361万米ドル

従業員数:約140人

<全国>


関連国・地域: 中国-全国
関連業種: 食品・飲料マクロ・統計・その他経済

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