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【アジアで会う】小林直人さん 金&張法律事務所・前常任顧問 第403回 若い世代に託す日韓関係(韓国)

こばやし・なおひと 1949年神戸市生まれ 1972年に丸紅東京本社に入社し、79年に鉄鋼貿易の担当として95年には企画室長として再び丸紅ソウル支店に駐在した後、99年から日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウルセンターの顧問を務めた。帰国後は社団法人日韓経済協会の業務部長、韓国貿易投資振興公社(KOTRA)の東京貿易館顧問を歴任。2004年に国際交流基金・ソウル日本文化センター所長として訪韓。06年から韓国の大手法律事務所である金&張法律事務所で常任顧問を務めた後、20年に帰国。

ソウル生活は通算26年に及び、韓国の激動期を含め現地で身をもって体験し、日韓両国の政府機関に務めた「知韓派」だ。

韓国を初めて訪れたのは1979年(当時30歳)のこと。丸紅ソウル支店で鉄鋼貿易業務を担うための海外赴任だった。当時の韓国は、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の軍事独裁政権下の末期であり、赴任直後の大統領暗殺という衝撃的な事件以降、非常戒厳令により夜間外出禁止令も午後11時から翌朝5時までの6時間に延長された。

「バスやタクシーの運転手もそれまでに帰らなければならないため、一般市民は遅くとも午後9時までにはバスやタクシーに乗らないと家に帰れない、そんな時代だった」という。さらに、80年には光州事件、後に大統領となる金大中(キム・デジュン)氏の逮捕・死刑判決と混乱が続いた。82年には「第1次教科書問題」が起きて韓国人の対日感情がさらに悪化。そんな80年には長男が、82年には長女が生まれた後、83年に家族4人で帰国した。

2回目の韓国赴任は、95年から99年までの4年間。「88年のソウル五輪開催に向けた民主化宣言や海外旅行の自由化などによって、1回目の赴任時に比べると韓国の雰囲気は一変して明るくなった感じがした。日本理解も進み、まるで(1回目の韓国とは)別の国に来たようだった」という。

ただ、この間にも韓国は大きく揺れ動く。96年に経済協力開発機構(OECD)への加入が認められたと思えば、97年にはアジア通貨危機で国際通貨基金(IMF)の緊急支援を受けることになる。「天地がひっくり返ったようだった」と当時を振り返る。

韓国がマイナス成長を記録したのは過去に2度しかない。1度目が朴正煕大統領暗殺直後の80年、2度目がIMF支援下の98年。加えて、これまで2度しかない朴正煕・金大中両大統領の国葬が営まれた韓国の大きな転換点も、小林さんはソウル現地で居合わせたことになる。

■相互補完を相乗効果に

ジェトロやKOTRA、日韓経済協会といった団体で韓国と深く関わりを持ってきた小林さんは、韓国人の国民性について「良くも悪くもストレートな部分が特徴」と話す。「韓国人の中には、『まず自分のところを良くしなければ、みんな良くならない』という認識がある。よく『ウリ(われわれ)とナム(他人)』と言われるが、仲間うちで利益を最大限にしようという気持ちが強い」

例えば、家族や学校、または兵役時の仲間など、そういった「グループ意識」が強いということだ。政治的には対立の火種になることもあるが、1つにまとまった時のパワーは強力だ。代表的なものが、2019年に起こった「日本製品の不買運動」でもある。

そして、経済における日韓関係においては「欠点を補完すること」が何よりも大事だと、小林さんは強調する。「国民性では日本人は慎重で、韓国人は性急。しかし、それをお互いに補うことで1+1が2ではなく、5にも10にもなるものがたくさんあるはずだ」と語る。反日や嫌韓といった国民感情にとらわれなければ、相互理解を通じて相乗効果を生む方法はいくらでもある。

■「青少年交流の継続」は財産

04年1月、韓国の高校生50人が4泊5日の日程で日本を訪れた。日韓両国の経済協会が主催した「第1回・日韓高校生交流(経済)キャンプ」の参加者だ。小林さんは日韓経済協会側の担当者として、このイベントの立ち上げに深く関わった。

「日韓の経済協会はそれまで大学生の交流事業を行っていたが、自由に日韓を行き来できる時代になったことで、中高生の交流も支援していくべきではないかという話になった。1年間の準備期間は大変だったが、韓国の高校生が日程を終えて帰国のバスに乗る際、日本の高校生と再会を誓って別れを惜しんだ姿は忘れられない」

この経験がその後、国際交流基金・ソウル日本文化センター所長公募への応募のきっかけになったという。

このイベントに参加した高校生は2年後の06年、自発的に相手国のことを勉強して「日韓学生未来会議」を発足させる。新型コロナウイルス禍で3年間はリモート開催となったが、その後も毎年欠かさず開催され、今年で17回目を迎えた。

「人間だから気持ちには変化がある。韓国は反日だけではないし、日本も嫌韓だけではない。人の気持ちとはそういったもので、相手を理解することがやはり何よりも大事だと思う」。

小林さんは「両国のマスコミ報道や教育を鵜呑みにせず自分たち自身が確認し、さらには相手国同世代にホットラインで直接議論出来る若い世代の継続的な交流を見るたび、学生たちに日韓の未来を託すことができる」との確信を深めている。(韓国編集部=清水岳志)


関連国・地域: 韓国
関連業種: 社会・事件

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