新型コロナウイルスの影響で2年以上にわたり停止していた香港からの訪日観光ツアーが22日、再開した。第1陣となる東京、北海道7日間のツアーを旅行大手の東瀛遊控股(EGLホールディングス)が催行。香港に戻った後は7日間の強制検疫(隔離)を義務付けられるが、10人の参加者らは待ちに待った日本行きに期待を膨らませ、笑顔で香港を出発した。【福地大介】
今回のツアーは往復に全日本空輸(ANA)の成田便を利用し、札幌、美瑛、富良野、小樽、浅草、スカイツリーなどを回る。料金は香港帰還後の隔離ホテル費用も含めて1万9,999HKドル(約34万7,000円)だ。
参加者は20代から70代までと幅広く、男女比は半々。年配者の夫婦旅行をはじめ、個人で参加した若い男性もいた。ある参加者は「夕張メロンを食べるのが楽しみ。7日間の隔離を受けてでも行く価値がある」と話した。
添乗員を務めるポロさんにとっても、日本行きは久しぶりだ。コロナ前には日本ツアーの仕事が毎月2~3回あったが「パスポートの記録を見たら最後に行ったのは2020年2月。ようやくふるさとに帰れるような気分ですごくうれしい。日本の知人たちに会えるのが楽しみ」と興奮を隠さない。
■日本側も香港に期待
新型コロナのパンデミック(世界的大流行)で海外旅行が制限される以前、日本は香港の人たちにとって最も身近な旅行先の一つであり、日本にとっても香港は一大市場だった。日本政府観光局(JNTO)の統計によると、香港からの訪日旅客数は19年に延べ229万800人に上り、市場としては中国本土、韓国、台湾に次ぐ4位。人口約740万人でありながら、17年から3年連続で訪日旅客が200万人を超えていた。
第1陣の出発に立ち会ったJNTO香港事務所の小沼英悟所長は「いよいよ香港から日本へのツアーが再開される。日本の観光業界では香港市場への関心、期待は非常に大きい」と述べ、香港からの送客拡大に期待を寄せた。今後、他社でも日本ツアーの催行が増えていく見通しという。
ANA香港空港所長の島田俊哉氏は「円安で日本旅行がしやすい環境になっている」と指摘。「これをきっかけに訪日旅行の再開に弾みがついてほしい」と述べた。
今回のツアーの宿泊先の一つ、シャトレーゼ・ガトーキングダム・サッポロ・ホテル&スパリゾート(札幌市)のマーケティング担当者は、同施設にとっても海外からのツアー再開後の受け入れ第1号になると説明。「最初なのでまずはしっかりと対応したい。海外からのお客さまが増えていくことに期待する」とコメント。同じく宿泊先となる京王プラザホテル(東京都新宿区)の広報担当者は「安全が第一とはいえ、ツアーとその先の個人旅行の再開にも大いに期待している」とした。
■7日隔離が最大の障害
日本政府は新型コロナの水際対策を今月から緩和し、1日当たりの入国者数上限を従来の1万人から2万人に引き上げた。世界各国・地域を「赤」「黄」「青」の3グループに分類し、「青」の国・地域からの入国者にはワクチンの接種状況にかかわらず、入国時検査を実施せず自宅などでの待機も求めない。
その上で10日からは外国人観光客の受け入れを、香港を含む「青」の国・地域からのパッケージツアーに限定する形で再開している。EGLは当初、15日に最初のツアーを催行する準備を進めていたが、訪日ビザの手続きが間に合わず22日にずれ込んだ。
EGLのケン国全(スティーブ・ヒュン、ケン=しめすへんによんがしらの下が羽)執行取締役は、現在はツアー参加者本人が申請する必要のあるビザ取得手続きを、全て旅行会社が代行できるようになればよりスムーズになると注文。ただ、訪日客を増やす上で最大の障害は、香港政府が海外からの入境者に義務付けている隔離措置だと強調した。
同社は25日にも今回と同様の訪日ツアーを催行予定で、今後は商品の種類も増やしていく計画。袁文英会長は「お客さまの反応は良い」としながらも、香港の隔離措置が足かせとなるためツアー参加者数は伸びにくいとして「7月に50人集まれば御の字ではないか」との見通しを示している。
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