ミャンマー国軍の統制下にある外務省は16日、このほど開かれた国連人権理事会の会合での報告内容が公平性を欠いていると反論する声明を出した。声明では、報告が民主派勢力による暴力行為に言及しておらず、政治的な理由で事実がゆがめられていると主張している。
第50回国連人権理事会は13日、スイスのジュネーブで7月8日までの予定で始まった。この中で取り上げられたミャンマー問題に関する特別報告者の最新リポートや現地での被害状況などを示す数値について、ミャンマー外務省は国軍側の主張が盛り込まれていないと指摘。同国の参加が認められない状況での一方的な主張を拒否するとの考えを示した。
具体的には、国連報告はミャンマー国軍によるインターネット規制を批判する一方、国軍が「テロ組織」と呼ぶ民主派のミャンマー連邦議会代表委員会(CRPH)と挙国一致政府(NUG)、国民防衛隊(PDF)による破壊行為に言及せず、意図的に無視していると指摘した。
一例として、民主派武装勢力が携帯電話会社の保有する通信塔など1,240カ所を破壊した結果、150万人が通信サービスを利用できなくなったと主張した。民主派は、攻撃の対象を国軍とその関係者のみとしているが、これまでに公共の場で300回以上の爆弾攻撃を行ったとも強調した。
ミャンマー外務省は、主に国軍が子どもに残虐行為を行ったとする特別報告者によるリポートにも反論した。民主派らが殺した65人の子どもの存在を無視していると主張。「780万人以上の子どもが学校に通えていない」との記載部分についても、6月に始まる新学校年度の生徒・児童の登録数は520万人に上ったとした。「テロ組織」が教員ら教育関係者23人を殺したことを無視している、とも付け加えた。
特別報告者がまとめたリポートは、子どもが「失われた世代」(ロストジェネレーション)となることを防がなければならないとするものだ。この中で、貧しい子どもを支援する国際非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン」が今月1日に発表した「780万人以上の子どもが学校に通えていない」との推定値を引用している。
ミャンマー統計年鑑によると、2014~18年度には毎年、小学生から高校生まで900万人前後が学校に通っていた。ミャンマーでは過去2年、新型コロナウイルス感染症対策やクーデターに対する反発で教育が停滞したが、保護者の間では子どもの学習の遅れを懸念して登校を再開させようという流れができつつあるとされる。
外務省はまた、14日の会合でのバチェレ人権高等弁務官による「国軍により(市民)1,900人が殺された」との発言に、論拠が示されていないと主張。「テロ組織」が約3,000人の市民を殺害したことに言及していないとして不快感を示した。
人道支援に関する国連の「ミャンマーでは1,400万人が人道支援を必要としている」との報告にも疑問を呈した。この数字は、今年1月に発表されたミャンマーの22年の人道対応計画に盛り込まれたものだが、外務省は「このうち1,330万人は国内避難民などではない」と指摘。同計画で、支援には昨年の4倍以上に相当する8億米ドル(約1,080億円)の予算が必要とした部分についても、「国連職員は専門的で正直かつ正確な役割が求められる」との見解を示した。
ミャンマー国軍は昨年2月のクーデターで実権を握り、民主派指導者アウンサンスーチー氏を含む民主派の「政治犯」を軟禁・拘束している。14日の国連人権理事会の会合では、各国の代表が暴力の即時停止や政治犯の解放などを求める声を上げた。
国軍は今月、スーチー氏が率いた国民民主連盟(NLD)の元議員ら4人の死刑承認を発表し、各国から非難の声が相次いでいる。この点についてミャンマー外務省は、死刑囚が「数百の武器とともに拘束された、市民30人以上の殺害を首謀したテロリスト」だとし、死刑が妥当との見方を改めて示した。
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