ミャンマー国軍統制下の中央銀行は25日、各政府機関に対し、同国内での外国通貨による決済を停止するよう指示した。米ドルの国内流通が現地通貨チャット安の一因になっていると主張している。日本を含む海外の企業などから反発の声が上がりそうだ。
同日付で、全省庁や地方自治体などに向けて通知を出し、支払いにはチャットを使うよう指示した。この中でウィントー副総裁は、国内取引はチャットで行わなければならないが、ホテルや飲食店、インターナショナルスクール、外国人のアパート賃料支払いなどでは米ドルが流通していると指摘。政府機関や国営企業でも、土地のリース料の支払いや合弁会社との取引など、一部に米ドルが使われていることに言及した。
その上で、国内での米ドル流通を許容すれば、「米ドル需要が拡大し、チャット安が進行する」と訴えた。ただ、現地通貨チャットは信頼度が低く、かさばることもあって、使用が避けられる傾向が強い。
今後はミャンマー当局がどこまで米ドル決済を取り締まるかが焦点だ。最大都市ヤンゴンのアパート管理者は「企業のカネの流れまで調べられ、チャット決済が強制されるようになれば疲弊する」と話した。外資系では、米ドル建てで従業員に給与を支払っている企業も多い。ミャンマー国外ではチャットを外貨に両替することが困難で、特に外国人従業員はチャットを受け取ってももてあますことになる。
中銀は4月、外貨をチャットに両替することを強制する指示を出していた。後に経済特区(SEZ)の入居企業などを規制の対象外としたが、依然として多くの企業が強制両替を強いられており、混乱が広がっている。「海外からの外貨建ての送金は、1米ドル=1,850チャットの固定相場で現地通貨にされる。市中レートとの乖離(かいり)分をコストとして負担することを余儀なくされる」(同アパート管理者)状況だ。市中の両替商で米ドルを売る場合、足元では1米ドル=2,050~2,100チャットが相場となっている。
国軍が投資・対外経済関係相に任命したアウンナインウー氏は4月下旬、チャット相場が安定すれば強制両替規制を解除する可能性があると発言していた。政府は昨年2月のクーデター後、海外からの投資の減退などで深刻な外貨不足に直面しているという背景もある。現地のビジネス関係者は「最近の中銀の指示は合理的でなく、逆に経済を停滞させてチャット安がさらに進む恐れがある」とこぼした。
ヤンゴン市内の飲食店経営者は「過去4カ月ほどで、米ドルで支払う客が減っており、カード払いが増えている」と話した。クーデター後は銀行から現金を引き出せない状況が続いた。現在は引き出しが可能となっているが、米ドル口座に入金されてもチャットに両替されている。カード払いでは店側がチャット安リスクを背負うが、引き受けざるを得ない状況だ。
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