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経済優先、感染急増でも不変 リスク基準改定、観光にも期待

ベトナムではテト(旧正月)休暇明け以降、新型コロナウイルスの感染者が急増し、15日には初めて3万人の大台を超えた。しかし、規制の緩和で経済を成長軌道に戻す政府の方針は揺らいでいない。1月末には新型コロナのリスク評価基準を改定し、地域ごとのリスク評価を新たな感染数ではなく、重症者数と死亡者数を重視する方針に変更。15日からは国際定期便の運航をすべての国・地域対象に認める制限緩和に踏み切り、「ゼロコロナ政策」で国境を閉ざす一部周辺国との違いを鮮明にした。

ベトナム民間航空局(CAAV)は15日から国際定期便に関する規制を解除し、すべての国・地域を対象にした定期旅客便の運航が約2年ぶりに可能になった(政府公式サイトから)

ベトナム民間航空局(CAAV)は15日から国際定期便に関する規制を解除し、すべての国・地域を対象にした定期旅客便の運航が約2年ぶりに可能になった(政府公式サイトから)

新型コロナの国内感染者数は、テト(旧正月、2022年は2月1日が元日)期間の長期休暇に伴う検査数の減少で1日当たりの新規感染者は平均1万2,000人程度まで減少したが、休暇中に帰省や旅行など国内移動が増えたことから、テト明け以降は急増。8日に初めて2万人を上回って以降は連日2万人超が続いており、15日には過去最多の3万人の大台を超えた。

ただ、政府は比較的冷静に受けて止めている。

南部ホーチミン市トップのグエン・バン・ネン共産党委員会書記は先週末開かれた同市の会議で、新型コロナの感染状況に関する担当部局からの報告に、「美しい数字であり、皆が望んでいた数字だ」と満足感を示した。

同市ではテト休暇以降、1日当たりの感染者数は100~200人前後を行き来しているが、過去2日間はコロナによる死亡者は1人も出ず、昨年5月から始まった第4波で震源地だった一時の状況とは一変している。ネン氏は「ワクチン接種を加速する一方、経済などの規制緩和を進める戦略の方向性は正しいと評価できる」と総括し、引き続き社会生活と経済回復を進めるよう指示した。

21年第3四半期(7~9月)に過去最大のマイナス成長に陥り、厳しいロックダウン(都市封鎖)の弊害に直面したベトナム政府は、昨年10月以降、「ウィズコロナ」を前提に経済回復を進める政策に180度方向を切り替えた。禁止していた飲食店の店内飲食や営業時間の規制撤廃、公共交通機関の再開、バー・カラオケ、マッサージ店などの営業許可などを矢継ぎ早に決め、ホーチミン市では昨年末以降、繁華街などの人出はコロナ前の水準に戻っている。

一時はロックダウンの反動で、ベトナムから第3国への生産拠点移転を検討する動きが広がったことも教訓となり、「ベトナム政府は2度と厳しい規制に逆戻りすることはないだろう」(日系企業幹部)と多くの関係者が受け止めている。

■重症者や死亡者数を重視する新基準

今年に入ってからの政府の動きもそうした見方を裏付けている。

ベトナム保健省は先月27日に発出した決定218号(218/QD―BYT)で、新型コロナの感染リスク評価に関する新基準を公表。各地のリスク評価については、重症者数や死亡者数を重視する方針に切り替え、ワクチン接種率や医療体制と合わせて感染リスク状況を評価していくことにした。

陽性率はこれまで人口10万人当たりの1週間の新規感染者数のみで評価していたが、新基準では、酸素療法が必要な患者の割合(重症率)、死亡率を評価対象に付け加えたほか、医療体制では集中治療室(ICU)病床使用率を新たに盛り込んだ。

同省が9日発表した新型コロナ感染リスク評価によると、現在全国に感染リスクの高い「レベル3(オレンジ)」「レベル4(レッド)」の省市は存在せず、いずれも「レベル2(イエロー)」以下と評価された。

政府公式サイトによると、ベトナム政府系のシンクタンクであるベトナム経済研究所(VIE)のレ・スアン・サン副所長は、政府が「4つの指針」に基づいて、経済回復策を実施していると評価。◇分量◇目的◇時期◇病気・経済的困難の要因――の4指標を適切に分析・判断することで、感染抑制と経済刺激の両方を同時に実施できているとの見方を示した。

■15日から定期旅客便の制限解除

ベトナム民間航空局(CAAV)は15日から、国際定期便に関する制限措置を解除し、すべての国・地域を対象にした定期旅客便の運航を約2年ぶりに認めたのも同様だ。

国際定期旅客便の再開で入国者数が増えれば、国外から感染が流入するリスク増加は避けられないが、ビジネス往来や観光客の受け入れで周辺国に出遅れないことを優先したとみられ、経済優先の姿勢をあらためて打ち出した格好だ。

今後は、一部の省市で昨年11月から始まった強制隔離措置なしでの外国人旅行者の受け入れをいつ再開するかが大きな焦点になっており、観光業界からは早期再開を求める声が上がっている。

ホーチミン市人民委員会傘下、サイゴンツーリストのグエン・フー・イ・イエン社長は定期旅客便の運航が再開したが、外国人旅行者の入国に関する規制は引き続き保健省などの指示に従う必要があると強調。一方「政府と保健省は(旅行者受け入れの)完全再開日を迅速に決定し、観光産業向けのガイドラインを設ける必要がある」と述べ、外国人観光の早期完全再開を訴えた。


関連国・地域: ベトナム
関連業種: 医療・医薬品運輸マクロ・統計・その他経済社会・事件

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