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【アジアで会う】番匠麻樹さん 自然商品ブランド代表 第374回 共助生む「フェアトレード」(フィリピン)

ばんしょう・まき 1985年生まれ、熊本県出身。立命館アジア太平洋大学を卒業後、商社に就職。大学時代や国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊としてフィリピンを訪れた際、起業のヒントを得る。帰国後、古くから薬や健康のために利用されている「奇跡の木」とも呼ばれるモリンガを主に使った自然商品の生産・販売を手掛けるガールズビーアンビシャス(Girls, be Ambitious)を設立した。

(本人提供)

(本人提供)

2012年にガールズビーアンビシャスというブランドを日本で立ち上げ、14年に法人化した。商品や生産者、地球環境に合った公平な取引(フェアトレード)の概念の下、フィリピンで無農薬にこだわってモリンガなどを生産・加工し、日本で輸入販売している。個人向けだけでなく、飲食業など約90社とも取引がある。

北イロコス州にあるモリンガの農園などでは約150人が生産に携わるが、一緒に働き始めたころは、とまどいもあった。土地を持たず、農園で指示に従って働く小作人は、雇い主から意見を求められることもなければ、名前の代わりに数字で呼ばれることもあったという。最初は会話をすることも難しかった。

フェアトレードの概念から、仕事内容に見合った給与と雇用者との公平な関係性を構築した。徐々に身内や子どもの夢を語ってくれるようになり、商品に関する意見を求めても答えてくれるようになった。生産者の変化が仕事に向かうモチベーションになっている。

■「心の豊かさ」に魅了

大学の夏季休暇で教会が提供するプログラムを通じ、フィリピンを初めて訪れた。現地では教会が運営する職業訓練校で日本語を教えた。寝泊まりしていた宿舎は、子どもたちが集まる児童館のような役割も担っていた。貧困から学校に通えず、親に夢を語れない子どもや、1日中空腹でもらったバナナ1本を5等分してきょうだいで分ける子どももいた。

子どもたちの現状を知り、日本で都会的な風景に憧れ、お金や学歴などのステータスに魅力を感じていたことに疑問を覚え始めた。物質的な貧しさがあってもよく笑い、周りを思いやれるフィリピン人の「心の豊かさ」に魅力を感じた。「この人たちのために何かしたい」という思いが芽生えた。

現地で買い付けたアクセサリーなどを学園祭で販売した。売り上げはフィリピンの子どもたちの教育費にするため、教会を通じて寄付した。

だが現実は厳しく、寄付を送っていた地域を再び訪れると、学校に行かず家族の仕事を手伝う子どもたち。親からは「お金は食べるために使ってしまった」と明かされた。一方的なお金の支援では、根本的な解決はできないと痛感した。

そんな時、関心を持ったのがフェアトレードの概念だった。ボランティアではなく、魅力ある商品をほしいと思ってもらえる方法で販売し、ビジネスとして成立させたいと考えた。

大学卒業後は商社で2年間勤めた後、青年海外協力隊として中部のバンタヤン島やセブ市に派遣された。モリンガを使った商品の生産や、物流マーケティングに携わった。

モリンガは栄養成分を豊富に含み、二酸化炭素(CO2)の吸収量は普通の木の約20倍ともいわれている。欧州から買い付けに来るバイヤーは健康にも環境にも良い食品として注目しており、健康意識が高い日本でも販売できると考えた。

中部に滞在していた時のホームステイ先の家族は、農業や畜産業を営みながらサリサリストア(小規模雑貨店)を経営したり、会社員をしながらケーキのケータリングをしたりしていた。起業や副業が当たり前だった。青年海外協力隊の任期を終え、帰国した翌日にガールズビーアンビシャスを立ち上げた。

■工場を環境対応に

将来に向けて、既存の工場を持続可能(サステナブル)にすることを目指している。美容品となるモリンガオイルは種から生成するため種の実は残り、お茶には葉を使うため枝の部分が残ってしまう。環境保全効果のあるモリンガを育てていることから、加工工場でも資源を有効に活用したいと考えている。

起業当初とは異なり、今では国連の持続可能な開発目標(SDGs)やソーシャルビジネスに取り組む企業が増えた。いち早く取り組んできた経験から、コンサルティングを担う機会も増えている。ビジネス立ち上げのサポートもしながらフィリピンとのつながりを増やしていきたい思いがある。

学生時代に初めて渡航したフィリピンで、心の豊かさに気付かされた。日本人として、この国に対して何ができるかをずっと考えながら走ってきた。今でもそれが生きがいになっている。(フィリピン版編集・金子汀)


関連国・地域: フィリピン日本
関連業種: 社会・事件

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