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【アジアで会う】須見ウィディアさん 料理店ワルン・ジャワ経営 第370回 札幌の「みんなの実家」に(インドネシア)

Sumi Widya (スミ・ウィディア) 1973年、東ジャワ州マラン出身。日本人と結婚するために2001年に来日、ハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)のインドネシア料理を提供するレストラン「ワルン・ジャワ」を札幌市で開業。今年で20年を迎えた。通訳や観光分野のアドバイザーを務めるなど多岐にわたって活動する。

須見ウィディアさん(本人提供)

須見ウィディアさん(本人提供)

来日当初は、日本語がほとんど分からず、夫以外には知り合いもいない環境でストレスに悩まされた。

最初は自分のために「ワルン・ジャワ」の開業を決めた。当初は、客が1人も入らない日も多かった。それでも雇った日本人の給料も支払わなくてはならず、軌道に乗るまでに5、6年を要した。苦しい時期が続いたが、当時まだ少なかった外国人や日本人とのつながりもでき、「他の人の役にも立てるかもしれない」との思いで店を続けた。

札幌市内で2回の移転を経て、現在は札幌駅北側の雑居ビル内に落ち着いた。北海道大学からも近い店は、留学生にとっての貴重なコミュニティーの場所にもなった。

北海道ローカルテレビ局の朝の番組で、グルメリポーターを約5年間務めたこともある。その頃は、街中を歩くとよく声をかけられた。インドネシア人歌手のシェリナ・ムナフ氏が来日した際も、北海道の観光PRのために同行した。

地方自治体や民間会社からの依頼を受けて、インドネシアやマレーシアなどのイスラム教徒の観光客の受け入れについて助言も行う。食事については、禁忌とされる豚肉は避けるべきだが、それ以外は、さほど神経質になることもないとアドバイス。「日本人は真面目に対応しようとしすぎて、かえって余計なお世話になることもある」と、一般的なインドネシア人旅行者の感覚をレクチャーする。

■実習生の相談場所に

新型コロナウイルス流行前は、留学生の来店も多かったが、コロナ下では入国制限や外出自粛もあり、以前よりも客数が減った。近年増えている技能実習生や特定技能生が来店することもある。札幌周辺の建設業や介護の現場で働く彼らは、環境やコミュニケーションの問題、職場での人間関係に悩む人たちも多い。店を訪れる実習生たちには、「日本に来るまでの苦労を思い出しなさい」と声をかけ、力強く励ますようにしている。かつて自分自身が抱えた悩みとも重ね合わせながら、慣れない土地で生活するインドネシア人の心に寄り添う。

■みんなにとっての実家

「ワルン・ジャワ」はインドネシア人と日本人の交流の場にもなっている(提供写真)

「ワルン・ジャワ」はインドネシア人と日本人の交流の場にもなっている(提供写真)

コロナ禍で、店の営業も影響を受けた。感染が拡大した20年初頭、インドネシアに一時帰国していたため、日本へ戻れなくなってしまった。同年9月に再入国でき、営業時間を短縮して店を続けた。観光関係の仕事が減ってしまった分、新しい仕事も始めた。そんな状況でも、「コロナ下だからこそ良い仕事を見つけることができた」と前を向く。

今後の目標を尋ねると、「先のことは分からないが、今までやってきたことは必ず役に立つと信じている」と笑顔。「一生懸命に働く日本の環境が仕事好きな自分には合っている」と、はつらつとした表情で話す。

ことあるごとにインドネシア人留学生などが集まり、支え合う場所となってきた。近年は会員制交流サイト(SNS)の普及もあり、昔ほど集まる機会も多くはない。それでも「私にとっても、みんなにとっても実家のような場所。だから続けていきたい」と話す。

これから厳しい冬を迎える北国。札幌在住のインドネシア人にとっての実家であり、日本人にとってインドネシアの食文化に触れてもらう場所にしたいと願いを込めて、今日も生き生きとした笑顔で「ワルン・ジャワ」を切り盛りする。(インドネシア編集部・和田純一)


関連国・地域: インドネシア
関連業種: 社会・事件

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