• 印刷する

【アジアで会う】小林華さん セラピスト 第369回 命のぬくもりを伝えたい(シンガポール)

こばやし・はな 愛知県出身。父親の駐在に帯同し、小学3年生から高校生までシンガポールで過ごす。カナダの大学を卒業後、シンガポールに戻り、現地企業に就職した。IT業界で10年以上勤務してから、セラピストに転身。繁華街オーチャードの自然派美容サロンで勤務している。自宅で発酵ドリンク教室も開催するなど、マルチに活躍する。4児の母で、植物など生き物と触れ合うのが好き。

うちの店でセラピストをしないか――。知人のサロンオーナーに誘いを受けたが、最初は躊躇(ちゅうちょ)した。内面を重視する性格で、男の子3人の育児に奮闘する中、メークに興味もない。美容と正反対を生きる自分には、合わないと思った。

しかし、今後の生き方に思いを巡らせながら、オーナーに親身になって相談に乗ってもらううちに、気持ちが変化していった。決め手となったのは「機械を使わず、全ての施術を手で行う」というオーナーのこだわりだった。

小林さんは、両親に「手を優しく当てるだけでも思いやりは通い合う」と教わったことや、大学時代に5年間滞在したホームステイ先の家族によく抱きしめてもらった経験から、身体に触れることで伝わる命のぬくもりがあると感じていた。オフィス勤めに区切りをつけ、手を使って何かしたいと将来を模索していた矢先、心が「ここかも」と動いた。

しかもオーナーは、業界でカリスマ的な存在の人。そんな人から「技術は一から教えるので、未経験でも心配ない。小林さんの人柄を見て、声を掛けている」と、貴重なオファーをもらっている。オーナー自身の温和な人柄と、自然に寄り添うサロンの雰囲気にもひかれ、意思が固まった。

■「この瞬間がたまらない」

1年半ほど専門学校に通い、国際資格を取得。セラピストとして働き始め、今年で6年目になる。顧客の年齢は11~70歳と幅広い。サロンのコンセプトは、自然由来の製品と手だけの施術で、その人本来の美しさを引き出すこと。顔周りが専門で、妊婦や赤ちゃん向けのマッサージも提供している。

一番のやりがいは、顧客の変化をじかに見られることだ。「施術後に、お客さんが穏やかな表情をしていたり、自分を大事そうにしていたりする。手を通じて、ぬくもりを受け取ってもらえたと実感するこの瞬間がたまらないです」と目を細める。

セラピストの傍ら、今年7月からは自宅で発酵ドリンク教室を始めた。菌類の一種を使って、天然発酵させた飲み物の作り方を伝えている。参加者には、その日から種菌を育てられる道具一式を提供する。

ここでも根底にあるのは、命のぬくもりを伝えたいという思いだ。種菌は、持ち主の性格や体調によって形態が変化する生き物だ。小林さんは「自分の周りにはさまざまな生き物がいて、いつもその命に温かく見守られていることを伝えたい」と語る。今後もニーズがある限り、続けていく予定だ。

■将来はフィリピンで事業を

シンガポールでは、家事の負担を軽減するためにヘルパー(メイド)を雇うことが一般的だ。小林さんもフィリピン人女性に住み込みで働いてもらっている。将来の夢は、現在のヘルパーの故郷で、共同事業を起こすことだ。

「ヘルパーのおかげで、私は仕事をしながら子どもの成長を見られるけど、彼女は自分の子どもの幼少期に隣で過ごせない。そう思うと、複雑な気持ちになります」。ヘルパーが出稼ぎを終えて帰国した後、家族と生活しながら、現地で長く続けられる仕事ができたら――。相談を重ねて、一緒に夢を追いかけることにした。

偶然にも、同じく「身体を触る仕事に興味がある」というヘルパーに、今は小林さんが持つ知識や技術を全て共有している。「マッサージ屋かサロン経営か……。彼女の夢を支えながら、共に人生を歩んでいくのが希望です」と力を込める。既にヘルパーは、出身地カガヤン州の土地を購入し、着々と準備を進めているという。

「お世話になったヘルパーと彼女の家族に恩を返したい。絶対にかなえます」。柔らかくほほえむ小林さんの瞳の奥には、強い光が宿っていた。(シンガポール&ASEAN版編集・上村真由)


関連国・地域: シンガポール
関連業種: サービス社会・事件

その他記事

すべての文頭を開く

テイクオフ:遅ればせながら、現地の…(01/25)

物価上昇率、4カ月連続拡大 向こう数カ月は継続の見通し(01/25)

ノジマ、首都に1号店開業 ブランド認知の向上目指す(01/25)

廃棄物処理業、賃金1.5倍に引き上げも(01/25)

(表)新型コロナウイルス感染者数(24日)(01/25)

データセンター新設、今後は省エネ型に限定(01/25)

ケッペルDC、複合クラウドサービスを開始(01/25)

【日本の税務】現地スタッフ採用時の文化的配慮について(01/25)

ケッペル、ハノイで住宅開発事業の権益取得(01/25)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。

の記事は有料サービスご契約者様限定記事です。契約すると続きをお読みいただけます。契約されている方は、画面右側にある各種ログインからログインください。
無料トライアルはこちら
購読申し込みはこちら

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン