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【アジアで会う】ガンタトーン・ワンナワスさん mediator CEO 第365回 日本とタイ企業に素敵な出会いを(タイ)

Kantatorn Wannawasu 1980年1月生まれ。首都バンコク出身。日本の大学で学ぶため、18歳で渡日。2004年に埼玉大学工学部卒業後、在京タイ大使館工業部に入館。タイ王室や省庁関係者のアテンドや通訳を務める。タイ帰国後の09年にmediator(メディエーター)設立。日本語能力検定(JLPT)で最高レベルのN1、第32回ビジネス日本語検定(BJT/16年)で東南アジア最高得点の語学力を駆使し、日タイ企業の橋渡し役を担っている。休日は日本の雑誌を読んだり、創作料理を作ったりして過ごす。

日本人の知り合いから親しみを込めて「ガンちゃん」の愛称で呼ばれるガンタトーンさん。あまりに流ちょうな日本語に、「本当にタイ人?」と問いたくなるほどだ。ガンタトーンさんが日本への留学を決めたのは、同じく日本に留学経験がある父親の勧めだった。銀行員だった父親は、留学経験と知識を買われ、日本企業相手の案件を多数任せられるようになった。出自が大きなウエートを占めるタイ社会にあって、「日本語を学んだことで『中流の下』から『中流の上』に上ることができた経験」が、自分に日本への留学を勧めた理由ではないかと振り返る。

日本では語学と受験のための勉強を並行した。タイで日本語を学んだことはほとんどなかったが、大学受験に対応できる語学力を習得するため、日本語学校の同胞とすらタイ語を話すことはなかった。「周りからタイ人と気づかれてなかったかもしれないですね」と笑う。

努力が実り、1999年に埼玉大学に合格。機械工学を専攻したが「機械工学は専門知識を『狭く深く』追究する学問。『広く浅い』ことが好きな自分には向いていないことに、勉強を始めてから気づいた」

大学を卒業し、在京タイ大使館工業部に入館した。大使館には理系大学出身の職員が少なく、タイ工業省をはじめとしたエンジニアリング関係の案件はガンタトーンさんが担当することが多かった。タイの王室や省庁関係者のアテンドや通訳として、日本全国を飛び回った。難解な技術専門用語を通訳する必要もあり、ここでも必死に勉強する必要があった。ただし、大学時代での勉強とは異なり、必要とされるのは「広く浅い知識」。「大変だったが苦ではなかった」という。

在京タイ大使館で働き始めて5年。日本での仕事や生活は充実していたが、年齢的にも何か新しいことを始めたいと考えた。思えば18歳でタイを離れ、母国のことをあまり知らないことに気付いた。タイについて学び直し、再び日本に戻るつもりで帰国の途についた。

■転機は日系ドラッグストアの誘致

タイに戻ったものの何をするのかはっきり決めていたわけではなかった。ただ、自分に海外留学の機会を与え、家族以外の他者にもさまざまな親切を施す両親の姿を見て、「自分も人に恩恵を与えられる存在になりたい」と思った。そのためには、会社や役所勤めではなく、起業がよいと考えた。そうして2009年に立ち上げたのがmediator。日本語スキルを生かすつもりだったが、具体的な事業内容はまったくの白紙。当初は日本企業向けの単発の通訳などを手掛けていたが、仕事量は安定しなかった。

転機が訪れたのは、日本のドラッグストアのタイ進出をサポートしたことだった。知り合いと「タイには多くの日本企業が進出しているが、ドラッグストアは聞いたことがない」という話になった。業界に詳しい日本人に話すと、タイ進出に興味があるドラッグストアを探してくれることになった。関心を示したのはツルハドラッグ。同社とタイの消費財大手サハグループを引き合わせたことが実績となり、その後の会社経営の安定につながっていった。現在では、日本・タイ語通訳のほか、調査、営業、PR・マーケティング支援などさまざまなサービスを提供している。約30人の従業員を抱え、25年に年商1億バーツ(約3億3,000万円)を実現したいと考えている。

■タイ企業のニーズを満たすマッチング

現在、特に力を入れているのが、「TJRI(日本企業研究所)」と名付けたプロジェクトだ。「これまで両国の企業の関係は、日本側がタイで売りたい商品やサービスをアピールする例が多かったが、これからはタイ企業が求めるものを提供できる日本企業を探す機会を増やしたい」と話す。今年6月にプロジェクトを始動。これまでに日本企業とのパートナーシップを求める国営石油PTT、食品・小売業大手CPグループ、製糖企業ミトポン・グループ、素材大手サイアム・セメント(SCG)のビジネスマッチングをオンラインで開催した。

社名のmediatorは英語で「調停人」の意味。在京タイ大使館で働いていた際、職員同士が意見の相違で雰囲気が悪くなった際に、自ら調停役を買って出ることが多かったことに由来する。「互いに求めるものをマッチングしながら、両国の企業のより良い出会いを実現したい」。タイに進出する日本企業にとって、ガンちゃんはますます欠かせない存在になりそうだ。(タイ版編集・須賀毅)


関連国・地域: タイ
関連業種: サービス

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