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【アジアで会う】デディ・ワヒューディさん 建築設計事務所LABO.共同代表 第362回 異業種間の交流を大事に(インドネシア)

Deddy Wahjudi 1972年4月、東ジャワ州マラン市生まれ。バンドン工科大学卒業後、日本大で修士号、千葉大で博士号を取得。2006年、配偶者でもあるネリ・ロリタ・ダニエル氏と建築設計事務所「LABO.」を設立した。設計した自邸が15年のインドネシア建築家協会賞(小住宅部門)を受賞。首都ジャカルタのブンカルノ競技場一帯の再整備のマスタープラン(基本計画)など大規模プロジェクトを手掛ける一方、異文化や異業種間の交流や情報発信にも力を入れている。

LABO.共同代表のネリさん(左)とデディさん(NNA撮影)

LABO.共同代表のネリさん(左)とデディさん(NNA撮影)

建築設計事務所「LABO.」。デディさんとネリさん夫婦が共同代表を務める。スタッフは約10人。全国からインターンの学生もやってくる。「インドネシアではアカデミックと設計の世界が交わる機会が少なかった。わたしたちにとって設計は研究の一環でもある。大学の研究とプロの世界は別ではないという認識を広めたい」。デディさんは事務所名の由来についてこう話した。

2人も授業を受け持っているバンドン工科大に近い住宅街、木深い傾斜地に拠点がある。森のように茂る大木をできるだけ生かしたいと、この場所を「LABO. The Mori」と名付けた。敷地は1,300平方メートルを超えるが、建築面積は300平方メートル強に抑えた。

自邸やオフィス棟に加え、ネリさんのきょうだい家族が住む家もある。4世帯13人が暮らす共同住宅でもあり、イベントスペースでもある。空いている1棟は宿泊施設としても利用しており人の往来が多い。猫も7匹住み着いている。

各住宅棟はいずれも狭小住宅。必要最小限で機能的な空間での暮らし方は、日本で影響を受けたことの1つだという。

■夫婦で日本に留学

デディさんは20代後半から計7年間を日本で過ごした。大学卒業後、現代的なモスク(礼拝所)の設計で知られるアフマド・ノーマン氏の下で実務経験を積んでから日本に渡った。当時は欧米への留学が人気だったが、「同じアジアの国から学べることがあるのではないか」と考えて次の学び場を日本に決めた。

日大で修士号を取得し、約1年間バンドンに戻った際に結婚。長男も生まれた。千葉大の博士課程に進むため、今度は3人で日本に渡った。数年してネリさんも同大大学院に入った。在籍中に長女も生まれた。慣れない土地での研究と子育てを両立し、2人とも無事に博士号を取得。06年にバンドンに戻り、LABO.を立ち上げた。

■歩行者に配慮したまちづくり

日本の都市部では公共交通機関が発達し、歩行者が快適に移動できるまちづくりに感動した。こうした経験は2人の設計にも影響した。

18年のアジア大会に向けたブンカルノ競技場一帯の再整備では、全体のマスタープラン(基本計画)などを担当。配置計画では歩行者の動線を優先し、どの道路からもアクセスしやすく、施設間も徒歩で快適に移動できるよう心がけた。ジャカルタではアジア大会を機に、主な通りの歩道も大幅に改善した。

直近では、南ジャカルタにある国営紙幣印刷造幣所(ペルリ)保有地の再整備計画のコンペで優勝した。19年に開業した商業施設「M Bloc Space」を含めた5.4ヘクタールを再整備する。ここでも歩行者の移動や視点を意識した。既存の建物をできるだけ残しつつ再開発する案を提案した。

LABO.はコンペに積極的に参加しているが、デディさんは「インドネシアではコンペ制度がまだ十分整備されていない」と指摘する。独立記念塔(モナス)周辺広場の再整備計画ではアイデアコンペで優勝したが、政治的問題も絡んでうやむやになった。

■創造都市への貢献

LABO.は横のつながりを広げるための活動にも取り組んできた。

LABO. The Moriではプレゼンイベント「ペチャクチャナイト」など多数の催しが開かれた。11年9月には東京でインドネシアの建築家を紹介する展示会を主催した。東日本大震災の復興を支援する目的もあった同展示会のために、約50人のインドネシア人建築家が訪日した。昨年は、自宅近くの住宅を改装してコワーキングスペース兼カフェを開業した。現在は、バンドンの創造産業のハブ(拠点)となる施設の設置を計画している。

設計と両立してイベントなどで多数の関係者を束ねるのは容易ではない。公私にわたるパートナーのネリさんは、デディさんについて、「リーダーシップ精神と強い意志を持ち合わせている。人のため、家族のため、自分のために公平に気を配ることができる人です」と全幅の信頼を寄せる。

バンドン市は「創造都市」として名をはせる。デディさんの大学の同期でもあるリドワン・カミル元市長(現西ジャワ州知事)の貢献が大きいとされ、15年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「ユネスコ創造都市ネットワーク」にデザイン分野で認定された。こうした評価の背景には、LABO.のような個別の活動の積み重ねがある。(インドネシア版編集部・多田正幸)


関連国・地域: インドネシア
関連業種: 社会・事件

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