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コロナうつは早めの相談を メンタル管理、日系駐在員に助言

新型コロナウイルス感染症の警戒レベルで最高水準「4段階」が適用されている韓国の首都圏(ソウル市・京畿道・仁川市)。在宅勤務が増える中、孤独感など精神的な問題を抱える日系ビジネスマンも少なくない。社団法人韓国EAP(従業員援助プログラム)協会の顧問で、悩みやストレスを抱える日本人駐在員に長年向き合ってきた鄭相坤(チョン・サンゴン)氏は「コロナ鬱(うつ)と感じたら、専門家への早めの相談が大切」と助言する。

――韓国で「コロナうつ」という言葉を頻繁に耳にするようになった。

「メンタルヘルス管理が業績の向上につながる」と話す鄭氏(本人提供)

「メンタルヘルス管理が業績の向上につながる」と話す鄭氏(本人提供)

在宅勤務で仕事と家庭の境界線がなくなり、外で人に会うことも制限される中、ストレスで不眠症や食べ過ぎに悩む会社員が増えている。韓国EAP協会でも、個人だけでなく、大企業の人事部からの対処方法に関する問い合わせが急増している。

■管理者はうつに対する理解を

――韓国企業は最近まで、社員のメンタルヘルス管理に対する理解度が高いとは言い難かった。

コロナ禍を機に、メンタルヘルス管理に対する認識が高まったのは不幸中の幸いだ。ただ韓国も少子高齢化がさらに進み、本格的な低成長時代に入る。売り上げがなかなか上がらなければ、社員が職場で抱えるストレスは大きくなる。一過性のものではなく、コロナ終息後も定着させていくことが大切だ。

――韓国の大企業では、社内にカウンセラーがいる心理相談室を設置したり、ヒーリング(癒やし)を目的に、音楽や美術鑑賞などの講座を運営したりしているようだ。しかし、韓国に進出した日系企業の中には、小規模でメンタルヘルス管理に手が回らないところもある。

韓国企業の中には、自宅にプレゼントを贈るなどのサプライズを提供することで在宅勤務のストレスを解消しようとしているところもある。そういう取り組み自体は素晴らしいが、メンタルヘルスは人によって管理の仕方が異なるため、残念ながら「社内キャンペーン」だけで解消できるものではない。

企業の規模に関係なく、大切なのは管理職のうつに対する理解だ。日本でも韓国でも、産業カウンセラーとしての教育を受けた管理職はほとんどいない。しかし専門知識がなくても、社員のつらい気持ちを理解し、受け止め、深刻な場合は病院への通院を認めるシステムを整えることはできる。

――ストレス耐性において、日本人社員と韓国人社員の違いはあるか。

一般的に、韓国人に比べて日本人は我慢する傾向があり、ストレスをため込みがちだ。1対1で話を聞いてあげて、不満を吐き出させるのが良いだろう。

日系ビジネスマンの苦労は察して余りある。ただでさえ言語や文化の違う海外での仕事は、日本の職場以上にストレスがたまりやすい。特に、単身赴任者は孤独を強く感じがちだ。駐在員はほかにも「日本に帰任しても、自分の居場所があるのか」といった人事上の悩みや子どもの教育問題など、さまざまなストレスを抱えている。

そこにコロナ禍による行動制限まで加われば、うつ状態になったとしても不思議ではない。間違っても「あなたの精神力が弱いからだ」などと否定してしまわないことだ。

また、同じ日本人だからといって他人の悩みに対して自分が何とかしようとするとストレスが増す。専門のカウンセラーに任せてしまって楽になった方がいい。

■大切なのは「命を守る行動」

――コロナ禍で、管理職のストレスも大きくなっている。「自分や会社の誰かが感染して、事業の存続に関わるような事態になってしまったら」と、気が気でないだろう。

普段から1人で悩みを抱えて苦しんでいる日系社長は多い。実は、最もカウンセラーが必要なのは管理職だ。そのために、私のような、日本や韓国の企業文化の違いや事業現場に詳しい産業カウンセラーがいる。相談場所はコーヒーショップやホテルのラウンジなどどこでもいい。日本語でいろいろと話しているうちにすっきりする。

日本は最近の集中豪雨で大きな被害を受けており、政府は国民に「少しでも危険を感じたらちゅうちょなく避難するなど、早めに命を守る行動をとってほしい」と呼び掛けている。

コロナ禍は非常事態で、終息までにはまだまだ時間がかかるだろう。カウンセラーへの相談も「自らの命を守る行動」だと認識してほしい。(聞き手=坂部哲生)

<プロフィル>

鄭相坤:

韓国EAP協会の顧問。ソウル大学卒業後、大宇グループに入社。大宇ジャパンに7年間駐在した後、同グループを退社し、韓国産業能率協会を運営。ベネッセの韓国法人を立ち上げ、同法人の社長も務めた。日本と韓国の企業文化の違いや日韓の企業が抱える課題を長年見てきたことから、韓国に進出した日系企業の顧問も務め、駐在員や日系企業に勤める韓国人社員を対象とするカウンセリング経験も豊富。<seoulchung@gmail.com>

韓国EAP協会:

心身の健康管理によって企業の生産性を向上するEAPなどを提供している。1,000人以上の専門のカウンセラーを擁し、会社員の心理相談に応じている。<http://www.keapa.co.kr/


関連国・地域: 韓国
関連業種: マクロ・統計・その他経済雇用・労務

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