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【アジアで会う】金子拓さん レッド・リバー・ツアーズ勤務 第358回 フーコック島観光に半生ささぐ(ベトナム)

かねこ・たく 1976年1月1日生まれ。音響機器大手フォスター電機で技術畑を歩み、中国駐在を経て2013~19年にベトナムのスピーカー新工場立ち上げ・管理に従事した。その後同社を退職し、南部フーコック島の旅行代理店レッド・リバー・ツアーズに就職。日本人観光客の呼び込みに今後の半生をささげる。

ベトナム南部フーコック島に滞在する金子さん(本人提供)

ベトナム南部フーコック島に滞在する金子さん(本人提供)

■40代の新チャレンジ

「収入は前職から大幅に減りました」。約20年勤めた大手メーカーを辞める一大決心を実行した。初めての転職で、異業種のベトナム人経営の旅行代理店を選んだ。

前職でベトナムに駐在中、フーコック島には何度も足を運び、観光業の可能性に魅力を感じていた。「ちょうど40代になり、人生が折り返しを迎えたと感じていたんです。1度きりの人生、新しいことに挑戦したいと思いました」

不安は大きかったが、ベトナムの生活費も踏まえた「85歳までの人生計画」を立て、仮に失敗しても大丈夫だと自分に言い聞かせた。やりたいことをやっておきたい。日本への帰任の辞令が出た際、辞職を伝えた。

レッド・リバー・ツアーズはフーコック島で1、2を競う大手。だが、日本人にとってフーコック島そのものの知名度が、タイ・プーケット島やインドネシア・バリ島、フィリピン・セブ島などの著名なリゾートと比べて低い。ベトナムでも中部ダナン市の方が国際的な旅行先として知られている。

その分、伸びしろは大きい。まずは日本人向けの営業担当としてスタートし、フーコック島ツアーの提案などで日系大手旅行代理店をめぐり、ノウハウを学んだ。「観光業界を何も分からない状態でプレゼンをさせてもらい、親切に業界のことも教えてもらい、仕事もいただけるようにもなりました」

■コロナ下、内需取り込みと経営再編

フーコック島への日本人観光客誘致を開始してから間もなく、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が発生した。海外からの観光需要は蒸発したが、国内のリゾートで休暇を過ごす日本人や、ベトナム人の需要を掘り起こすことに頭を切り替えた。

レッド・リバーが所有する遊覧船を活用したアイランドホッピングやシュノーケリング、イカ釣り、ダイビングの機会提供や、近年開発が進むテーマパークや名所の案内など、できることはまだまだある。日本から観光客を受け入れる態勢がまだ整っていなかったこともあり、「海外からの観光客が一時的にストップしたことは、結果的には良かったのかもしれません」と振り返る。

金子さんが勤めるレッド・リバー・ツアーズの遊覧船(本人提供)

金子さんが勤めるレッド・リバー・ツアーズの遊覧船(本人提供)

現在はベトナム人社長の信頼を得てマンツーマンで経営にも関与するようになった。前職の設計・工場管理の経験を生かし、今後さらに会社を大きくしていくために、需要が落ち着いた今、会社の経営システムや事業の見直しなど基盤構築に取り組む。

国内では今年4月下旬から感染第4波が発生し、主要都市がロックダウン(都市封鎖)に入った。島の観光産業が打撃を受けたが、「今は逆に忙しい」という。4波の収束後を見定め、経営計画を練り直す必要があるからだ。

フーコック島は、ワクチンを接種した外国人観光客の呼び込み再開の先行試験地域に選ばれ、10月ごろからの受け入れを目指している。島民へのワクチン接種も急ピッチで進んでいる。現在、島にはベトナム投資グループ(ビングループ)系列の病院も存在するが、緊急時の対応能力は万全とはいえない。「完全とはいえない島の医療体制をどう補うか、が大きな課題です」。失敗は許されない。

■トライの連続、家庭菜園も

「真面目で丁寧な日本人」という第一印象とは裏腹に、金子さんは「いろいろなことにトライしたいんです」と童心をにじませる。

最近は、コロナ禍を受けて家庭菜園も始めた。居住する地元ホテルの畑でキュウリ、トマト、オクラ、インゲン豆などを植えている。「敷地内にはマンゴーやバナナ、グアバなどがなっていて、移住直後からジュースやジャムづくりにも取り組んでいます」

遊覧船に同乗した際にはドローン(小型無人機)を飛ばし、客に写真を提供して笑顔を誘う。住民の環境改善意識がまだ希薄な中、社員らに呼び掛けて清掃ボランティア活動も何度か実現させた。最近は、動画編集も学んでいる。

「自分の力で島の魅力を知ってもらいたいんです」。それが島に引きつけられた元技術者の今の原動力だ。(ベトナム版編集・小故島弘善)


関連国・地域: ベトナム日本
関連業種: 電機医療・医薬品その他製造観光社会・事件

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