• 印刷する

【アジアで会う】グエン・トゥイ・アンさん スパ経営 第334回「心をマッサージ」を合言葉に

グエン・トゥイ・アン ベトナム南部ティエンザン省出身。ホーチミン市の貿易大学で日本語を学び、在学中から日系飲食店でマネジャーを務める。卒業後に人材会社を立ち上げたほか、日本、ベトナムでの人材企業の勤務を経て、2016年からホーチミン市1区に「AN'S SPA(アンズスパ)」をオープンした。東洋医学を取り入れたマッサージで、現地のベトナム人や在越外国人、出張者らから人気を集めている。

「お待ちしておりました」――。アンズスパの扉を開けると、オーナーのアンさんが流ちょうな日本語を話しながら、笑顔で迎えてくれる。アンズスパは、ローカルの飲食店などが立ち並ぶ通りの路地裏に立地する。東洋医学を取り入れ、心身の内部から疲れを取り除くマッサージを提供する。「最初は経営とかには興味はなかったんですよ」と話すが、アンさんの人生は経営者になるべく見えない力が働いていたようにみえる。

■学生時代から日系飲食店で奮闘

日本語は大学から学び始めた。歴史の授業で、広島や長崎の原爆被害や戦後の焼け野原から先進国へと成長した日本を知り「興味があり、憧れがあった」からだ。また、進学先を選ぶ際に、貿易大学に通う先輩からは「言語を選択するなら日本語が簡単だよ。友人は3カ月勉強したら話せている」と勧められた。しかし「全然簡単じゃなかった。5年かかりました」と笑う。

大学3年生のときに、日系飲食店の立ち上げメンバーとして働き、マネジャーも務めた。「大学より仕事の方が楽しかった」と語るほど没頭し「ほとんど勉強してないです。卒業できないと思った」と振り返る。

■友人の紹介から経営者の道へ

大学在学中、ひょんな事が経営者になるきっかけとなった。日本語が話せる友人を日本人経営者に紹介する機会があり、何度か依頼を引き受けているうちに「人材紹介事業としてお金をもらったらどうか」と大学側からアドバイスを受けた。勤めていた飲食店の日本人上司からも「自分で仕事をした方がいい。もし入院することになっても会社はあなたを助けてくれない」と助言された。

大学卒業前に人材会社「ステップアップ」を設立。飲食店へキッチンスタッフなどを紹介したほか、ベトナムの大手IT企業から日本語人材の問い合わせがあり「こんなに簡単にお金を稼げるのか」と手応えを感じた。もちろん全てが順風満帆ではなく、紹介したスタッフをめぐるトラブルがあれば、実際に当事者に会いに行き、問題解決に追われることもあった。

■孫に伝えたい人生を

会社を経営した後、13年に日本に渡り1年間人材会社で勤務。その後、ベトナムの人材会社に出向し、約2年半働いた。転機は突然訪れた。退職して何か新しいことを始めたいと考えたときに、好待遇の人事マネジャーのオファーが舞い込んできた。「人事マネジャー」か「起業」か……。迷っていたところ、知人の日本人経営者から「今後、自分の孫にどのような人生を伝えたいのか」と言われ、「自分の道を行こう」と決めた。紆余(うよ)曲折を経て、スパ向けの化粧品の卸売りを手掛けるようになり、化粧品のショールームを開設する際に現在のアンズスパの物件に出会った。その物件は元々スパを運営し、アンさんも以前訪れたことがある場所だったため、運命を感じて即決。そこでアンズスパを始めることとなった。

ただ現実は甘くなく、経営後半年は赤字が続き、資金のやり繰りに頭を抱える日々が続いた。7カ月目からは徹底したコスト管理などが功を奏し、口コミで利用者数も増えた。現在は1カ月で400~500人の予約が入る。

■心を癒やすを合言葉に

アンズスパのスローガンは「マッサー・チャイティム(Massage trai tim、心をマッサージ)」だ。ある日本人が「出張のときは寂しさを感じるが、アンズスパのスタッフは親切で、温かい気持ちになる」と言われたことからヒントを得た。スタッフ教育には「マインドフルネス」を取り入れており、スタッフの幸福感や集中力などをあげることで、サービス向上を図る。

コロナ禍は事業に大きな影を落としたが、昨年実施された社会隔離で休業した際、スタッフは「再開したらまた戻ってくる」と約束。他のスタッフはアンさんとヨーグルトなどを売り、不安な日々を乗り越えた。支援のために1年間のバウチャーを先に購入する常連客もいたという。「私は本当に運がいい。人に恵まれた」と笑顔を見せる。「縁という言葉が大好き。困ったときは多くの人が支えてくれた。だから今の私がいる」――。今後はマッサージスタッフの教育事業やスパのフランチャイズ展開を念頭に置く。(ベトナム版編集・大坪若葉)


関連国・地域: ベトナム
関連業種: 社会・事件

その他記事

すべての文頭を開く

コロナ下の飲食、衛生で明暗 中高価格帯の店舗、集客後押し(02/26)

【ラオス経済通信】総選挙実施、ベトナムとの国際国境開設も 第158回(02/26)

市中感染7人、ホーチミン市は全閉鎖を解除(02/26)

1~2月のFDI流入、16%減の55億ドル(02/26)

1月の港湾取扱量、17%増の6200万トン(02/26)

越航空、ロンタイン空港関連事業に投資計画(02/26)

タンソンニャット空港、30年までの計画変更(02/26)

テト期前後の定時運航率、バンブー航空首位(02/26)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。

の記事は有料サービスご契約者様限定記事です。契約すると続きをお読みいただけます。契約されている方は、画面右側にある各種ログインからログインください。
無料トライアルはこちら
購読申し込みはこちら

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン