キリンホールディングス(HD)は7日、ミャンマー合弁会社2社からの収益を、パートナーが軍事目的で使用していたとの疑惑について、調査の結果、「確定的な結論に至らなかった」と発表した。今後は、パートナーである国軍系複合企業のミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)との協議を続け、進捗(しんちょく)を4月末までに発表する。
キリンHDとMEHLは合弁で、現地ビール大手のミャンマー・ブルワリー(MBL)とマンダレー・ブルワリー(MDL)を経営している。キリンHDによれば、2社からの収益を軍事目的に使用しないことは、MEHLとの「合弁契約の根幹」をなす条件。だが、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(本部ロンドン)によれば、MEHLは、株主である国軍への配当に、2社の収益を原資としていた疑いがある。国軍は、西部ラカイン州のイスラム教徒少数民族ロヒンギャへの迫害で、国際的批判にさらされている。
キリンHDは、合弁事業の収益の使途を明らかにするため、デロイト・トーマツ・ファイナンシャル・アドバイザリーを起用して独立調査を実施した。MEHLの財務やガバナンス体制を調査したが、秘匿性がある一部情報の開示を受けることができなかったため、収益の使途を確定的に判断することができなかった。
今後は調査に一区切りを付け、合弁事業のあり方についてMEHLと協議を続ける。一連の疑惑を受け、キリンHDは、MEHLとの合弁事業の持分所有の見直しも検討している。
収益の使途の問題のほか、新型コロナウイルスによるビール市場の冷え込みもあり、MBLとMDLは「事業環境の見通しが著しく不透明」な状況にある。このため2社は、キリンHDとMEHLへの配当金の支払いを既に停止している。
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