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【アジアで会う】野田沙良さん 認定NPO法人アクセス事務局長 第326回 スラムに寄り添い心を育む(フィリピン)

のだ・さよ 1980年生まれ、三重県出身。学生時代に観た映画をきっかけに国際協力の道を志す。大学在学中に初めてフィリピンに渡航し、貧困街(スラム街)の状況を目の当たりにした際、支援活動への思いが強くなる。教育業界で2年間働き、認定NPO法人アクセスでインターン、事務局員を経て、現職。フィリピンの支援活動で、学生たちの成長を日々実感している。

(本人提供)

(本人提供)

アクセスは、フィリピンの貧困層の子どもや女性に教育・就労を支援する団体。就学に必要な文房具や制服などの支給、心を育てる授業やモノ作りの仕事を提供するなどしている。

事務局長の仕事は、現状を伝えて協力者を増やすこと。現地スタッフから情報を得て会員制交流サイト(SNS)で発信したり、報告書にまとめたり、学校で講演することもある。

今年は新型コロナウイルスの影響で、参加費を募ってフィリピンでボランティア活動や現場の視察などをする企画を中止。例年500万~600万円ある売り上げがゼロになった。事業の縮小も頭をよぎったが、窮状を知った支援者から「活動をやめてほしくない」と、売り上げを上回る寄付が集まった。

■バンド解散で留学を決意

学校は好きではなかった。複雑な人間関係がストレスで、登校前から体調を崩す日も。大好きな日本のロックバンドの曲を聴いて、気持ちを奮い立たせて通っていた。

しかし20歳のときに大好きだったバンドは解散。ファン仲間と大泣きしたが、これを転機に、これまでライブに行きたいために躊躇(ちゅうちょ)していた留学で米国へ。「もし解散がなかったら、今の仕事には就いていないかも」。夢への第一歩だった。

帰国後は国際協力系のイベントに足を運ぶようになり、あるイベントで上映されたフィリピンのゴミ捨て場で暮らす貧困層を撮った映画「神の子たち」に衝撃を受ける。イベントの主催団体はアクセス。アクセスでボランティア活動を始めるきっかけとなった。

大学4年の夏、アクセスの企画で初めてフィリピンに渡った。スラム街の背景に高層ビルが立ち並ぶ景色が忘れられない。これまで貧困地域は無力で絶望的な暗いイメージだったが、実際に出会ったスラム街の人たちは明るかった。日々関わるうちに一人一人の顔や名前が分かるようになり、他人事だった貧困問題が、自分のことのように変わった気がした。

憧れた国際協力関係への就職は難しく、修行のつもりで教育系企業に就職し、2年間働いた。その後、活動すると決めていたフィリピンに行くため、アクセスの事務局長(当時)に「給料はいらないので働かせて下さい」と頼み込んだ。熱意が伝わったのか、二つ返事で快諾され、インターンとして働くことが決まった。

■自分の無力さを受け入れる

途上国での1人暮らしは慣れないことが多かった。米を鍋で炊く方法も知らず、スラム街に住むおばちゃんに教えてもらった。「スラム街の人を支援したくて来たのに、逆に助けてもらっていることが辛かった」

オフィスから徒歩10分の位置に活動するスラム街はあったが、タガログ語も話せず、少し怖い気持ちもあり、最初の半年間はほとんどオフィスにこもっていた。「このままでいいのだろうか」と悩んでいた矢先、スラム街で約200世帯が巻き込まれる大火事が発生した。

現場は混乱し、何をすべきか適切に判断できなかったことに落胆したが、上長から「自分の無力さを受け入れることも大事だよ」と教わった。この一言で、できることから始めようと、毎日スラム街に通って被災状況を調査し、日本事務局に報告。支援のための寄付を募った。これを機に住民との仲も深まり、その地区に足を踏み入れると子どもたちが駆け寄ってきて、活動に協力してくれるようになった。

■働けない悔しさばねに

2年間をフィリピンで過ごした後、日本事務局で働き始めたが、激務で精神的な疲れが出て、長い時間をかけて治療することになった。他の人のようにバリバリ働けないことを悔しく思ったこともあったが、夫の支えもあり、「ちゃんとしなくてもいい」とありのままの自分を受け入れられるようになって楽になった。

今後は精神面で悩みながらも働いてきた自分だからこそできることにも取り組んでいく考え。国際協力の現場では貧困や災害の現場を目の当たりにすることで、精神的な悩みを抱えてしまう人が多い。自らの経験を基にSNSで発信していくことで、心の支援もしていきたい。(フィリピン版編集・金子汀)


関連国・地域: フィリピン
関連業種: 社会・事件

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