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【アジアで会う】三井昌志さん 写真家 第327回 「普通の人」の美しさとらえる(インド)

みつい・まさし 1974年京都市生まれ。大学卒業後は機械メーカーに勤務。25歳で退職し、ユーラシア大陸を1周する旅に出て、帰国後にフォトエッセイを発売。主にバイクでアジアを旅しながら「普通の人々」をカメラに収め、発表する日々。代表作は、インドの「働く男」を被写体にした「渋イケメン」シリーズ。インドを中心に華やかな女性の姿を切り取った「Colorful Life 幸せな色を探して」が発売されたばかり。

写真家を目指すつもりは、もともとなかった。「大学を出て就職しなきゃ」と入った会社は、向いていないわけではなかった。だが、「自分が選んだ道だろうか」と考えたときに違和感を覚えた。

会社を辞め、「プータロー」を経て初めての長旅に出る。デジタル一眼レフを片手に10カ月かけて、アジア、中東、欧州を回った。帰国後、ウェブサイトを通じて配信していた旅の写真が編集者の目に留まり、03年に初の写真集を出版。1万部以上売れた。

「無名の新人の写真集で、(当時は)写真の技術、クオリティーも低かった。僕に才能があったというよりは、時代、ですよね。やっている人が少なく、ブルーオーシャンだった」。そう謙遜するが、それからは、1年のうち数カ月をアジアを旅して過ごし、作品を発表するスタイルが定着した。

■モテを意識しない男たち

魅了され、多く撮影し、これまでに3冊の写真集を出してきたのはインドの働く男「渋イケメン」だ。「日本だったらいわゆるシュッとした中性的なイケメンが人気があるけれど、それとは正反対に近い」男たち。(1)目力があり(2)モテや異性を意識せず(3)年を取ることを恐れない――が独自に決めた定義だ。

花を売ったり、農作業をしたり、工場で働いたりしている市井のインド人。例えば真っ赤なターバンを巻いて遊牧をする、西部ラジャスタン州のラバリ族の男性。「彼らは自分がイケメンだともちろん思ってるわけじゃなくて、淡々と仕事をしているだけなんです。でも、お前カッコイイよ、すてきだよと言いたい。だから、写真を撮っているんです」

考えたことなかったけど、インド人ってカッコイイですね――。作品を見た人からそんな声をもらうことが多く、すごくうれしいという。いち労働者でただただ風景の一部であった彼らを改めてまとめてみたら、狙い通りにかっこいいと思ってもらえるんだ。そんな手応えが、喜びになっている。

■変わらない根っこ、豊かさ伝えたい

インドへの第一印象は必ずしもいいものではなかった。07年にバイクで旅をしたことが、本当のインドを知るきっかけとなる。

州や地域ごとに売られている「不正確なロードマップ」を頼りに小道や未舗装のガタガタ道を走り、少数民族や遊牧民が暮らす村を訪ねた。ガイドブックに載っていない田舎を巡り、北も南も関係なくインドの人はよく笑い、とても親切なのだと知る。以後、バイクでインドを8周した。

鮮やかなサリーを身にまとって労働にいそしむ女性の姿にも、シャッターが動く。インドの女性は農作業や水くみのとき、レンガ工場でほこりまみれになりそうなときも、きれいなサリーを着る。「日本でも東南アジアでも、例えば野良仕事で民族衣装を着ないし、そこはやっぱりドレスダウンしちゃう。でもインド人は違うんです。(金銭的には)豊かじゃないけれど、民族衣装にはすごくお金をかけて、日々、それを着ている。美意識をとても大事にしていて、動きやすさよりも美しくありたいというか、カラフルに日常を彩りたいという気持ちが強いんだろうと思います」

旅の途中で、驚く光景を目にすることも。ある男性の家では、「妻が週に1度、カーリー(ヒンズー教の戦いの女神)になる」時間に同席。お金やモノを所有せず裸で暮らすジャイナ教の出家者が、全裸のままで一般道を歩き、説法に向かう姿に出くわしたこともある。

「カーリーが好きで毎日お祈りをしていた妻に、『ある日カーリーが降りてきた』と言う。日本人の感覚だったら妄想だ、心療内科に相談した方がいいんじゃないかって思うけど、(インド人は)そうじゃない。それは名誉なことで、村人たちも、じゃあカーリー様に相談しに行こうっていう展開になる」。ジャイナ教の出家者が裸でいることやサドゥー(ヒンズー教の修行者)が働かずに暮らしているのも当たり前のことで、「この人たちは全てを捨てて修行している偉い人なんだ」と尊敬を集める。

バイクで長い旅をする中で感じる、20年間変わらない宗教観、人生観、死生観。懐の深さに、金銭的余裕とは違う日々の豊かさ。そんなインドの魅力を、美しい「普通の人々」の写真を通じて届け続ける。(インド版編集・天野友紀子)


関連国・地域: インド日本
関連業種: 社会・事件

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