マレーシアで、ゴム手袋製造・販売の世界最大手、トップグローブ・コーポレーションの国内工場の大半が操業を一時停止していることで、国内外の医療用手袋の供給に支障を来すとの懸念が出ている。同社は、外国人労働者を中心とする従業員に新型コロナウイルスの感染が広がったため、25日時点で工場20カ所を停止している。長期化すれば来年初頭にも市場に影響が出る恐れがあるため、操業再開の時期が注目されている。
トップグローブは25日、スランゴール州クランにある工場20カ所を一時停止したと発表。さらにクランにある残り8カ所の工場を段階的に一時閉鎖する予定だ。同社は先に、工場の一時停止で一部の納品が2~4週間遅れる可能性があることや、2021年度(20年9月~21年8月)の売上高に3%の影響を与えるとの見通しを発表したものの、操業再開の時期は明らかにしていない。
17日から段階的に操業を停止している工場28カ所は、同社が国内で操業する41カ所のうち7割弱を占める。投資銀行Amインベストメント・バンク傘下のAmリサーチによると、28カ所のうち20カ所がゴム手袋工場で、年産能力は計450億枚。トップグローブの年産能力は海外工場を含め900億枚で、操業を一時停止するクランの工場が5割を占める。
26日付スターによると、マレーシア薬剤師協会(MPS)のアムラヒ・ブアン会長は、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)で医療用ゴム手袋の需要は急増しており、世界最大手が工場を一時停止する影響は大きいとの見方を示した。医療用ゴム手袋は一度使用されれば廃棄されるため、国内外で需要はうなぎ登り。同会長は「特に来年第1四半期(1~3月)に影響が出てくるだろう」と述べた。
マレーシア私立病院協会(APHM)のクルジット・シン会長は、「トップグローブの工場停止が短期間であれば市場に問題は出ないが、長期化すれば話は別だ」と話す。同社工場の再開時期が焦点になるとの見方で、長期化すれば、需要を満たすためほかのメーカーによる増産が必要になると指摘した。
マレーシアゴム手袋生産者協会(MARGMA)によれば、ゴム手袋の世界需要は今年、3,600億枚に達する見込み。マレーシアは、このうち2,500億~2,700億枚を供給するとみられる。
トップグローブは、外国人労働者向けの寮で新型コロナの大規模なクラスター(感染者集団)「テラタイ」が発生したことを受け、クランの生産施設28カ所の操業を17日から段階的に停止している。
同社の25日付声明によれば、テラタイが発生した同社の従業員寮では約5,700人の入寮者全ての新型コロナ検査を終了し、今週中には工場28カ所の従業員1万人以上を全て検査し終わる予定。24日時点でテラタイの感染者(同社従業員以外を含む)は4,036人に拡大しているが、25日の新規感染者は17人に減った。
保健省によると、テラタイから地域住民へ感染は広がっていないという。
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