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経済界のTPP待望論が再燃 米政権交代で、RCEPは署名へ

米大統領選で民主党のバイデン前副大統領が当選を確実にしたことを受け、環太平洋連携協定(CPTPP、TPP11)への加盟議論を求める声が、タイ経済界から再び出ている。いったん離脱した米国が交渉を再開するとの見方があるためだ。ただ国内では先に起きた加盟反対運動を受けて発足した特別委員会が検討結果をまとめたばかりで、議論は段階的に進められるとみられる。一方タイ政府は、合意間近とされる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)には署名する見通しだ。

タイ商工会議所(TCC)のカリン会頭(中央)は、バイデン氏が当選した場合に米国がCPTPPへ復帰する可能性があるとの期待感を示した=4日、タイ・バンコク(タイ工業連盟提供)

タイ商工会議所(TCC)のカリン会頭(中央)は、バイデン氏が当選した場合に米国がCPTPPへ復帰する可能性があるとの期待感を示した=4日、タイ・バンコク(タイ工業連盟提供)

タイ東部3県(チョンブリ、ラヨーン、チャチュンサオ)の経済特区(SEZ)「東部経済回廊(EEC)」の開発を担当するEEC事務局のカニット事務局長は10日、さらなる投資を誘致するためにCPTPPや各種の自由貿易協定(FTA)を締結することを政府に提案した。

EEC事務局は5カ年投資計画(2020~24年)での投資誘致目標を、現在の1兆7,000億バーツ(約5兆9,100億円)から増やす考えだという。EECとしては、バイデン氏が気候変動対策に注力するとみられるため環境に配慮した産業や、第5世代(5G)移動通信システム、各種のFTA動向を注視する必要があるとした。

ベトナムがCPTPPや欧州連合(EU)とのFTAを批准していることもあり、タイもこれらのFTAを締結すれば投資誘致を図れるとして、政府に検討を求めた。

これまでもCPTPPの交渉開始を支持してきた、タイ工業連盟(FTI)、タイ商工会議所(TCC)、タイ銀行協会(TBA)の民間3団体で組織するタイ商業・工業・金融合同常任委員会(JSCCIB)は今月4日、バイデン氏が勝利した場合に、米政府はより自由貿易路線を取り、CPTPPの交渉を再開する可能性があると期待感を示した。その上で、政府に対して、関係機関と民間部門で加盟に向け課題を検討する作業部会を設置すべきと提案した。

タイの商業銀行大手カシコン銀行傘下の民間総合研究所カシコン・リサーチ・センターは、バイデン氏が勝利した場合のシナリオとして、「米国がCPTPPの交渉に復帰すれば、タイがグローバル・サプライチェーン(調達・供給網)から外れて、電子機器類の輸出が減少する」と指摘した。

ただし、バイデン氏がCPTPP交渉の再開を明言していない現段階では、バイデン氏の当選確実の恩恵を受けて、タイの来年の対米輸出額は前年比10~12%増の367億~373億米ドル(約3兆8,700億~3兆9,300億円)まで拡大する可能性があると予測している。

■加盟検討は政府の補償が前提

タイのCPTPPの新規加盟を巡っては、政府が当初、今年8月のCPTPP委員会に加盟交渉の申請をする意向を示し、4月末と5月中旬に閣議で決定しようとした。しかし、新型コロナウイルス感染症の第1波が収束していない段階だったため国民が強く反発し、一部の閣僚も反対に回った。これを受け、下院に特別委員会を設置して是非を検討することとなった。

反対運動で焦点となったのは、CPTPPの加盟する場合に義務付けられている、種子の育成者の権利保護を目的とする「種子の植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV1991年条約)」の批准により、種苗コストが上がるといった懸念だ。

また薬の特許規定の強化により、ジェネリック医薬品(後発薬)の抗HIV薬の供給などが滞る可能性が指摘され、国民皆保険制度への影響なども懸案事項となった。

CPTPPの特別委員会はこのほど、およそ4カ月間の協議結果を報告書にまとめた。特別委の副委員長を務めた連立与党「民主党」のキアット下院議員が、10日に明らかにした。

同委員によると、◇政府はCPTPP加盟による好影響と悪影響を踏まえて政策決定するための適切なデータを持たなければならない◇政府は交渉過程で、市民の意見を聞くための枠組みを設けるべき◇政府は、自由貿易の推進により影響を受ける人を補償する基金を設立する必要がある――などを提言したという。

■RCEP、貿易収支は赤字増

一方、15日にも合意すると伝えられている、日本や中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)などが参加するRCEPには、タイも署名する見通しと地元各紙が伝えている。

RCEPは秘密裏に交渉が行われ、条文は妥結後に公表されるため詳細が不明。複数の国際非政府組織(NGO)の見立てでは、RCEPには、新興国の懸念が強いUPOV1991年条約の批准義務化は含まれていないという。ただ、コロナ禍で医療機器や医薬品などの過度な輸入依存が、各国で起きたことなどを考慮して条文の見直しがなされたわけではないとの指摘もある。

国連貿易開発会議(UNCTAD)が10日公表した試算によると、RCEP発効後のタイの加盟国との貿易額は、輸出・輸入とも2.6%増となるものの、もともとRCEP参加国との貿易は収支が赤字であるため、結果的に貿易赤字が1億米ドル拡大する。自動車・同部品、乳製品、モーターなどの輸入が増えるとみられている。


関連国・地域: タイ
関連業種: マクロ・統計・その他経済

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