第3回目の今回は、パース総領事館です。2019年初頭にパースに着任した私は、西オーストラリア(WA)州政府のロバーツ警察相を表敬訪問した際、ロバーツ警察相から「外国人旅行者の中でパースから北のはずれまでホテルも予約せずに車で旅行する無謀な旅行者がいますが、北部の町までは空路3時間かかることを忘れず、日本人のレンタカー旅行者には計画的な旅行日程を作成するよう注意喚起してほしい」と釘を刺されたエピソードがあります。【鈴木徹・パース総領事】
そのエピソードの通り、西オーストラリア州の第一の特徴は、オーストラリア全体の3分の1に相当する広大な大地にあります。
パースから東海岸までは乗り換え時間を含めると、時差もないインドネシアやシンガポールといった近隣外国の方が近く、オーストラリアの東海岸と3時間の時差(夏時間)があることも手伝って、シドニーやキャンベラは外国のように感じます。
総領事館が所在するパースには、昨年10月に全日空(ANA)の直行便が新たに開設されました。
観光客誘致に熱心なパパリア観光相から日本人観光客誘致の秘訣を問われ、日本ではあまり知られていない、パース近郊ロットネスト島のみに生息する哺乳動物クオッカを宣伝することを提案しました。
クオッカは日本でも徐々に知名度と人気が出てきた矢先だけに、新型コロナウイルスの影響で国境封鎖され、パース成田直行便が一時停止になったことは残念です。
現在、国境・州境ともに越境には制約がありますが、西オーストラリア州への往来が自由になる際には、読者の方々にも一度、自然豊かなロットネスト島へクオッカに会いに来られることをお勧めします。
■西豪州と日本の特別な関係
広大な大地に加え、西オーストラリア州の第2の特徴は、鉄鉱石やLNG(液化天然ガス)に代表される豊富な天然資源にあります。
1960年代に始まった対日鉄鉱石輸出は、戦後の日本経済の発展を支えましたが、同時に西オーストラリアの経済発展にも大きく貢献しました。
当時のチャールズ・コート州首相(任期74―82年)は日本を頻繁に訪れ、日本の政財界に広く人脈を築き、日本と西オーストラリアの関係を「互恵関係」と称して、日本との関係を大切にされてきました。
この関係は、御子息のリチャード・コート州首相(同93―2001年)に引き継がれ、さらにリチャード・コート氏は17年4月から2020年10月まで駐日オーストラリア大使として、日豪の「特別な戦略的パートナーシップ」を、さらに強固なものとされました。
■盛んな姉妹関係交流
資源関係では鉄鉱石にとどまらず先端技術に不可欠なレアアース(希土類)やリチウムも豊富で、最近は将来のバッテリー産業の育成を目指しており、西オーストラリア州側は日本企業との連携を強く希望しています。
西オーストラリアには、日本との互恵関係を基礎に姉妹都市が計10都市あります。州内すべての姉妹都市を訪問しましたが、中学高校レベルで姉妹都市間の相互訪問は大変盛んです。各姉妹都市で、西オーストラリア州の学生たちが日本の学生との友情を育み、日豪関係の重要性を理解する次世代の若者が多数育っていることを実感します。
姉妹都市や日本との交流を進める西オーストラリア州の若者の中から、互恵関係の基礎を築き発展させてきたチャールズ・コート元首相、リチャード・コート前大使の後継者たちが出てくることを秘かに期待しています。
<次回掲載の11月30日はブリスベン総領事館が担当します。お楽しみに>
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