インドネシア国営企業系のQRコード決済サービス「リンク・アジャ」を運営するフィンテック・カルヤ・ヌサンタラ(フィナルヤ)は10日、シンガポール系配車アプリ大手グラブや国営企業から計1億米ドル(約105億円)の出資を受けることで合意したと発表した。民間企業から出資を受けるのは初めて。調達資金は中小零細企業や中間所得層向けのサービス拡充に充てる。
今回の調達はシリーズBラウンド(成長段階で行う資金調達)で、通信テレコムニカシ・インドネシア(テルコム)子会社の携帯電話サービス最大手テルコムセル、バンク・ラクヤット・インドネシア(BRI)傘下の投資会社BRIフェントゥラ・インベスタマ、マンディリ銀行傘下のマンディリ・キャピタル・インドネシアの国営3社はそれぞれ追加出資した。出資額の内訳は公表していない。
グラブ・インドネシアのネネン・グナディ・マネジングディレクターは、インドネシアの金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)を支援するとして、グラブが提携する電子商取引(EC)サイト運営大手トコペディアや財閥リッポー・グループ傘下の電子マネー・ポイントサービス「OVO(オボ)」と協力し、キャッシュレス化を後押しすると述べた。
フィナルヤは2019年1月、テルコムセルの子会社として設立。これまでに各銀行の投資子会社や石油プルタミナの小売り子会社プルタミナ・リテール、ジャカルタ首都圏の通勤電車を運営するクレタ・コミューター・インドネシア(KCI)など複数の国営企業が投資している。19年末時点のテルコムセルの株式保有率は26.6%。
リンク・アジャの登録者数は5,800万人、うち8割は中核都市の居住者という。新型コロナウイルスの影響で非接触型決済の普及が加速したため、7~9月の取引回数と取引額は前年同期に比べて3倍近くに増えた。
調査会社イプソスが実施したアンケート調査によると、10月にインドネシアで最も利用された電子決済サービスは、シンガポール系ECサイト大手ショッピーが展開する「ショッピーペイ」で、回答者の34%が利用した。オボは28%、配車アプリ大手ゴジェックの「ゴーペイ」が17%で、リンク・アジャは7%にとどまっていた。
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