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【オセアニア在外公館便り】第2回 シドニー総領事館 シドニーの歴史を作る日本人

シドニー大都市圏には、約3万5千人の日本人が在住しています。在留邦人数では、ロサンゼルス、バンコク、上海、ニューヨーク、シンガポールに続く6位です(2019年10月時点)。私は昨年10月の着任以来、さまざまな行事に出席する中で、多くの日本人がシドニーの歴史を作ってきたと実感しています。今回のオセアニア便りでは、その中で印象に残ったことをいくつか紹介させていただきます。【紀谷昌彦・シドニー総領事】

■戦争を乗り越えて

今から130年前(1890年)、大阪の実業家の兼松房次郎氏がシドニーに渡航して兼松商店の支店を開設し、以前は英国経由だった豪産羊毛の直接輸入を始めました。シドニーに領事館が開設されたのはその後の1897年です。

1929年には兼松豪州会社創業40周年記念に「兼松記念病理学研究所」の寄贈を決定、33年に完成しました。この研究所は、63年と70年に2人のノーベル医学賞受賞者を輩出するなど、医学に大きく貢献しました。研究所の建物は82年に取り壊されましたが、銘版はシドニー病院の看護博物館に大切に保存されています。

兼松記念研究所の銘板前にてエリノア・ウローベル学芸員と筆者

兼松記念研究所の銘板前にてエリノア・ウローベル学芸員と筆者

第二次大戦では日豪は戦いを交え、42年6月の日本軍特殊潜航艇によるシドニー湾攻撃は、大きな衝撃を与えました。

豪海軍は、犠牲となった日本人乗員にも海軍葬を行い、遺灰を日本に引き渡しました。攻撃を受けたクッタバル海軍基地には慰霊碑が設置され、今も日豪犠牲者の追悼式典を毎年行っているほか、防衛関係者の交流の場となっています。私も、戦後75周年を迎える本年6月に式典に参列し、和解と協力の進展を実感しました。

■シドニーオリンピックから現在へ

戦争直後は強い反日感情が残る中、日本人はわずかで、60年代初頭まで日本食レストランも日本食材店もありませんでした。戦後初のシドニーの日本食材店は66年創業の「姉川商店」です。当時を知る人から話を聞いたので行ってみると、今はアーターモン駅近くにあり、姉川暁子店長は元気に接客されていました。50年以上の間、シドニーの日本人社会が大きく発展する一翼を担ってこられたと思います。

2000年のシドニーオリンピックも、歴史を作る大行事でした。オリンピック公園には、女子マラソンで優勝した高橋尚子選手の写真がマラソンコースの説明パネルに掲示され、聖火台広場にも高橋選手の名前が刻まれたプレートがありました。来年の東京2020+1に向けて、国際オリンピック委員会の調整委員会で活躍しているコーツ委員長もオーストラリア人です。スポーツも、シドニーや豪州と日本を結ぶ大きな柱と感じています。

シドニー湾で引き上げられた特殊潜航艇の松尾艇(豪戦争記念館所蔵)

シドニー湾で引き上げられた特殊潜航艇の松尾艇(豪戦争記念館所蔵)

そして、06年の日豪友好協力基本条約署名30周年を機に、シドニーで「祭りジャパン・フェスティバル」が始まりました。本年は残念ながらコロナで中止となりましたが、来年は15周年を迎えます。会場のダーリングハーバー地区にある、らせん形パネルが美しい図書館・コミュニティセンターThe Exchangeは、建築家の隈研吾氏が設計したものです。また現在建築中のニューサウスウェールズ州立美術館新館は妹島和世氏と西沢立衛氏のSANAA、パラマタのパワーハウス博物館はモロー楠建築設計が貢献し、建築家の高田浩一氏はシドニーを拠点に世界中で活躍しています。

■歴史を知る、歴史を作る

最近デジタル化された「オーストラリアの日本人:一世紀をこえる日本人の足跡」などを読んで、オーストラリアの歴史を作ったさまざまな日本人について知りました。当館ホームページの在シドニー総領事通信でも、日本人の活躍や貢献を紹介しています。

オーストラリアは多文化社会です。これからのシドニーの歴史は、当地の日本人の皆様も一緒に作りあげていくものです。私も皆様の一層のご活躍を応援しています。(了)

<次回11月16日は「パース総領事館」です。お楽しみに>


関連国・地域: オーストラリア
関連業種: 社会・事件

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