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【アジアインタビュー】日立、中国の昇降機事業を深化 保全サービス注力、工場を一層活用

日立製作所が中国のビルシステム事業を深化させる。新型コロナウイルスの影響で日本市場の落ち込みが予想される中、中国で昇降機の保全サービスやリニューアル需要の取り込みを強化するほか、中国工場の一層の活用で、同国以外のアジア市場の開拓にも本腰を入れる。在宅勤務が進み、オフィスビルの必要性が見直される状況下、非接触技術やモノのインターネット(IoT)を駆使し、新たな付加価値も提案していく。4月に日立製作所ビルシステムビジネスユニット最高経営責任者(CEO)兼日立ビルシステム取締役社長に就任した光冨眞哉氏に事業戦略を聞いた。

昇降機事業のアジア戦略を語る光冨眞哉氏=6月30日、東京(NNA撮影)

昇降機事業のアジア戦略を語る光冨眞哉氏=6月30日、東京(NNA撮影)

日立は5月末に開いた2020年第3四半期の決算発表会で、新型コロナの影響を織り込み、ビルシステム事業の21年3月期の売り上げ(売上収益)の見通しを当初の社内計画である6,100億円から5,500億円に引き下げて公表した。ただ、売り上げの半分近くを占める中国事業の回復が予想よりも早いことから、その後5,900億円に上方修正。光冨氏は「6,100億円にどう近づけていけるか」と意欲を見せる。

新型コロナの震源地とされる中国では、感染が拡大した2月以降に昇降機の据え付け工事などが一時停止を余儀なくされたが、政府の厳格な感染封じ込め策などで経済活動が早期に再開され、受注残を順調に消化。4~6月期の売り上げが前年同期を上回る上々のスタートを切ったという。

■後付け需要が拡大

中国の昇降機の新設需要は年間約60万~70万台で、世界需要の5割超を占める。エレベーターが大半で、日立は1995年の現地法人設立以降、いち早く現地化した運営を武器に事業を拡大。2019年度は米オーチス、スイスのシンドラー、フィンランドのコネ、独ティッセンクルップの世界のビッグ4の現地法人などを抑え、2年連続で新設受注台数シェアトップ(同社調べ)を維持した。

近年は市場の伸びに陰りが見られ、競争も激しさを増しているが、依然として成長の余地は大きいと見込む。高齢化社会への対策として政府が進める古い団地へのエレベーターの後付け需要を取り込むほか、耐用年数(一般的に25年程度)を過ぎたエレベーターのリニューアルでも商機が大きいとみる。

日本などで広く普及しているエレベーターの遠隔監視サービスは、今後中国でも普及が見込まれており、すでに準備を整えていることから、保全サービスの成長性にも注目する。中国ではエレベーターを納入して2年間の無償保全サービス期間が終わると、保全の義務が生じるが、同社の有償保全サービスの契約率は約4割にとどまる。この割合は、日本やシンガポールなどの7~8割と比べて低く、今後の伸びしろが大きいという。

19年に株式の公開買い付け(TOB)を実施した台湾の昇降機最大手、永大機電との相乗効果にも期待。日立グループの出資比率を11.7%から40%弱に高めており、21年度中に連結子会社化する計画だ。永大機電が持つ台湾と中国本土での販売チャンネルを活用し、中低価格帯のラインナップ拡充などで事業を強化する考え。同社の19年度の売り上げは約500億円だった。

■中国製をアジア全体に供給

広州と上海など4都市の7工場合わせて年産能力が約10万台に上る中国の生産能力も今まで以上に活用していく。従来は日本とタイの工場の連携が中心だったが、今後は中国とタイの連携を強化し、新たなバリューチェーンを構築。価格競争力の高い製品を拡販していく考えだ。

中国以外のアジア事業は、中東と合わせて売上比率は5%強と小さい。ただ、将来的に30%程度まで拡大する潜在性を秘めるとみており、市場開拓を加速したい考え。

中でも08年に進出したインドは、中国に次ぐ新設需要を抱える有望市場。光冨氏は、地域の多様性があり、市場開拓は簡単ではないと指摘した上で、「地場メーカーとの合弁や合併・買収(M&A)を通じた現地生産も視野に入れて戦略を見直す」と語る。

■コロナ禍で付加価値の創出課題

コロナを機に、日本や中国を中心に非接触でビル内を移動できるタッチレスソリューションへの引き合いが増えている。ただ光冨氏は、非接触をキーワードとした需要はコロナの収束とともに落ち着くとみている。「コロナを機に在宅勤務が普及したことで、オフィスビルの価値があらためて問われている」と語り、ビルに新たな付加価値を提供していく必要があると危機感を強める。

非接触の需要に対しては、カメラによる発熱者検知システムや、顔の画像認識でエレベーターを呼べるソリューションの提供を始めている。さらに、従業員のIDを使ったビル内の情報提供やサービス利用といった「オフィスに来て楽しい」と思われるような演出を実現するなど、ビルの付加価値を高めるソリューション開発に力を入れているという。

光冨氏は「製品の機能だけで勝てるような時代ではない。重要なのはブランド力とコスト競争力」と語る。日立グループが持つ人工知能(AI)やIoTなどの技術力とネットワークを生かし、中国での成功を成長エンジンにアジア事業を加速していく構えだ。(江康慧)


関連国・地域: 中国台湾インド日本ASEAN
関連業種: 電機その他製造建設・不動産IT・通信

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