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【アジアで会う】エラ・イルハムニさん 革製品専門店オーナー 第284回 羊革の魅力を伝えたい(インドネシア)

Era Irhamni 南ジャカルタ・クバヨランバル地区で、羊革製品の専門店「ディア・ファッション(DEER Fashion)」の経営を1993年に始めた。女性用ハンドバッグを中心に、すべてハンドメードで製作した商品を取り扱っている。日本の百貨店の催事にも何度か出店したことがあり、ジャカルタ在住の日本人駐在員の奥さま方の間では「知る人ぞ知る」存在だ。

手に取ってみたら、まずその軽さに驚く。ディア・ファッションのバッグは、羊革特有の軽さに加え、ソフトな肌触りの良さと、バッグ全体に施されたきめ細やかな編み目のデザインが特徴だ。

羊革に魅せられ、その革を使った製品を売り出そうと思いついたのは20年以上も前。羊革は牛革よりもずっと軽いので、女性用のバッグにこそふさわしいと考えた。当時はまだ今ほど国民の所得水準が高くなく、本革のかばんはぜいたく品だったが、「今後、女性の社会進出がさらに進めば、革のバッグがほしい人もきっと増える」と確信したという。

編み目模様は、細く裁断した革の幅を変えたり、微妙に染色の度合いを並べ変えたりして、生み出していく。模様のバリエーションはどれぐらいあるのかを尋ねると、さっと目の前に並べてくれただけで8種類以上。エラさんがぜんぶ自分で考え出した。細部にもこだわるだけに、10年の経験がある職人でも、バッグ1個の製作に1週間はかかるという。

  

■皮を捨てたくない一心で

子どものころから革製品が好きだった。実業家だった父親が海外出張から帰国するたびに買ってきてくれた革靴や腕時計のバンドが、いま振り返れば「革との最初の出会い」だった。やがて革について本格的に学ぼうと、畜産学部のあるボゴール農科大学に進学した。

インドネシアは当時、東南アジア諸国連合(ASEAN)で有数の農業国で、政府は食糧自給を目指していた。だから大学で関心が高かったのは、鶏卵か食肉に関する分野。畜産業界でも重要なのは食肉としての加工で、牛であれ羊であれヤギであれ、その皮は見向きもされずに廃棄処分されていた。皮を無駄に捨てずに、革製品に加工することで経済価値をつけられないだろうか。そう考えて、卒論のテーマに選んだ。

ところが、革の加工に関する参考文献も、研究者も少ない。手探りで研究を進めるうちに、指導教授からの提案で、西ジャワ州の大手製革業者で1カ月間、研修することにした。製造現場でみっちり学んだ経験が、いま手掛けている事業の原点だ。

■羊の飼育方法にもこだわり

ディア・ファッションのバッグに用いる原皮をなめす製造加工は、作業こそ親戚に任せてはいるが、工程については指導する。畜産農家に出向いて、羊の飼育方法に口を出すこともある。放牧した羊を飼育小屋に誘導する際に、枯れ木などで羊の体をたたけば、皮に傷がついてしまう。傷ついた部分は、革製品として使えなくなることもあるからだ。

工房では、編み目の位置まで、事細かく職人に指示する。品質には徹底的にこだわる。編み目の位置がゆがんでいたり、緩んでいたりして不出来な商品ができれば、完成したかばんをたたきつけることもある。温厚そうな表情からは想像もつかないが、「スタッフには、かなり厳しい人間だと思われているようね」と屈託なく笑う。

海外の機関などから認定書や表彰を受けたこともある。認知度を高めれば、国内はもちろん海外に販路を拡大するチャンスも増える。しかし今はそれよりも、自分が培ったノウハウを職人に伝えていくことが大事だと考えている。

だが、伝統産業を担ってくれる人材の確保は、次第に難しくなっている。エアコンの効いたショッピングモールや工場で働いて月給をもらいたいと考える若者が増えてきたからだ。今後は都会のジャカルタを離れ、地方都市に工房を設けて、若者を一から育成する計画も検討している。

革のビジネスで一山当てようとして、この商売を始めたのではない。「私は羊革を心から愛しているから」。次世代に伝えたい、革への飽くなき探求は続く。(聞き手=インドネシア編集部・山本麻紀子)


関連国・地域: インドネシア
関連業種: その他製造小売り・卸売り

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