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【アジアで会う】クリステラ・アドリエンネさん 日イ漫画翻訳家 第267回 二足のわらじの少年漫画好き女子(インドネシア)

Christella Adrienne 1994年生まれ。首都ジャカルタ出身。小学生のときから日本の少年漫画を読み始め、日本語を学んだ。ビナ・ヌサンタラ大学(BINUS)日本語学科に在学中から漫画の翻訳を開始した。卒業後は日系企業に勤める傍ら、個人事業主として翻訳を請け負っている。

自称「夜行性」。ついつい夜更かしして気づいたら朝の6時。仮眠だけとって出勤なんてざら。昼まで寝るために休日はある。「時々寝不足になるけど、漫画やアニメは癒やし」なのでやめられない。そんな彼女のことを友人は、親しみを込めて「漫画オタク」と評する。クリステラさんは「インドネシアでは多くの人が『オタク』は褒め言葉だと思っているんです」とはにかんだ。

好きなのはもっぱら少年漫画。オタク友達はボーイズラブ(BL)や少女漫画にはまっているがなかなか共感できない。色恋の機微を表す言い回しが多い少女漫画は、翻訳対象としても興味が湧かない。少年漫画が好きなのは、主人公などの努力や成長が描かれ、バトルシーンがあり、キャラクターの持ち味を生かした「必殺技」が繰り出されるから。今の一押しは、少年たちが現代版ベーゴマ「ベイブレード」で戦う漫画の最新シリーズ。といっても、これまで担当編集者から翻訳を依頼されたのは、少女漫画やホラー漫画ばかり。少年漫画はまだ任せてもらえない。

■漫画との出会いは小学生

小学5年生のとき、書店でたまたま漫画を手にした。そこから日本の漫画にのめり込み、原文で読みたいという意欲の高まりから日本語を勉強し始めた。日本語音声で英語字幕のアニメDVDなどを繰り返し見ては少しずつ語彙(ごい)を増やしていった。高校生になる頃には日本好きの友人もできて趣味を共有するようになった。

初めて仕事として漫画を翻訳したのは学生時代。メディア大手コンパス・グラメディア系列の会社に履歴書を送り、トライアルを経て個人事業主として翻訳を委託された。インドネシアでも人気の少年漫画『黒子のバスケ』を訳した大学の担当教員が推薦してくれたことも効いた。

日本語の漫画をインドネシア語に訳す。これまでに小説も2冊訳したことがあるが、「やっぱり漫画の翻訳の方が楽しい」。日中は日系のコンサルティング企業で働いており、趣味を兼ねた副業として翻訳を請け負う。本業が忙しくなったため、現在は翻訳の仕事を一時休業している。

1冊訳すのにもらう締め切りは大抵2週間。終業後や休日に集中できる家で作業する。まずは編集者から受け取った原稿をざっと読む。「まだ翻訳されていない漫画を無料で読めるのも楽しみの一つ」。セリフや効果音など翻訳するべき箇所に番号を振っていくと、1冊で約1,500~2,000カ所になる。これだけやって翻訳料は50万~60万ルピア(約3,700~4,500円)。「安いとは思うけど趣味だから」と稼ぎはあまり気にしていない。

■オノマトペの難しさ

「私の弱点は少女漫画」と認識している。少女漫画を訳したときはセリフの真意を巡って、担当編集者に「ロマンスの深さを分かっていない」と指摘されたこともあった。漫画の翻訳で特に難しく、編集者と議論になることが多いのはオノマトペ(擬音語や擬態語)の訳し方。同じ「ザバッ」でも水をかぶる音なのか、草むらから飛び出す音なのかなどインドネシア人には分かりにくく、文脈によってどうインドネシア語で表現するのが最適かと頭をひねる。

無料動画サイトや出版社が運営する漫画配信サイトなどが普及したことで、日本の最新コンテンツの収集にも事欠かない。漫画やアニメを通じて日本の音楽も好きになった。動画サイトなどで人気を広げた歌い手「まふまふ」さんのファン。昨年6月には彼の主催公演「ひきこもりでもLIVEがしたい!」を見るために友人と初訪日を果たした。好きなアニメ声優が出演するコンサートも見に行った。

仕事にする以前から「楽しいから」と趣味として漫画を翻訳してきた。孜孜汲汲(ししきゅうきゅう)としたようすはおくびにも出さないが、クリステラさんの友人に彼女の印象を聞くと、「真面目」「努力家」「頑張り屋」と口をそろえる。仕事としての翻訳を休眠している現在も、念願の少年漫画の翻訳を任せてもらうために、「いくつか翻訳させてもらいたい漫画を研究している」と自己研さんに余念がない。(インドネシア版編集部・多田正幸)


関連国・地域: インドネシア
関連業種: 社会・事件

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