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【アジアで会う】エマニュエル・パストリッチさん 民間シンクタンク所長 第261回 米国と東アジアをつなげる(韓国)

えまにゅえる・ぱすとりっち 1964年米国テネシー州生まれ。民間シンクタンク、アジアインスティテュート所長。東京大学で修士号、ハーバード大学で博士号をそれぞれ取得。専門は東アジアの古典文学など。韓国在住12年。著書に「韓国人だけが知らない別の大韓民国:ハーバード大学の博士が見た韓国の可能性)」(21世紀ブックス)などがある。このほど、初の日本語書籍となる 「武器よさらば:地球温暖化の危機と憲法九条」(東方出版社)を上梓した。

日本語と韓国語、中国語に堪能なパストリッチさん。南部ナッシュビルで生まれ、中部ミズーリ州セントルイスで幼少を過ごした。サンフランシスコにある高校でのアジア系学生との出会いが、パストリッチさんの人生を方向付けた。

■中国文学を専攻したイエール時代

83年に入学したイエール大学では中国文学を専攻。明・清時代に書かれた「水滸伝」や「三国志演義」など白話小説の勉強に打ち込んだ。

日本語は4年生になって本格的に学び始めたという。「アジアの2言語をマスターすれば、将来活躍できる場が一層広がると思った」と同時を振り返る。ところが「本業」の中国語よりも相性が良かったのか、日本留学を決意。東京大学の修士課程に進み、江戸時代後期の南画家として知られる田能村竹田などが書いた漢詩や漢文を研究した。

修士取得後は東大博士課程に進むも、「母国で活躍したい」と米ハーバード大学の博士課程に方向転換。98年に博士号取得。イリノイ大学で日本文学の助教授として教え始めた。

■韓国大使館で働く

パストリッチさんは05年、ジョージワシントン大学で教授の職を得る。大学で教える傍ら、近くにある在米韓国大使館で韓国の外交官や学者、記者を相手に米国政治に関してブリーフィングする仕事も始めた。当時、韓国は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で、ブッシュ政権との関係は決して良好とは言えない状況だった。ワシントンにはアジアの専門家と呼べる人材が少ない。ハーバード時代に1年間、ソウル大学に留学した経験が買われた。

韓国大使館では、政治経済や社会などを学ぶゼミ「Korus House」も月2~3回のペースで主催した。大学での仕事よりも魅力を感じ、水を得た魚のように活動した。しかし、活動場所は韓国大使館内だったため、次第に限界を感じるようになる。

そこでパストリッチさんの人生に転機が訪れる。知人を通じて出会った李完九(イ・ワング)忠清南道知事(当時)から補佐官として招請を受けたのだ。悩んだ末、「大使館での仕事より面白そう」と韓国行きを決意。ジョージタウン大学を辞し、07年から南部大田市で生活を始めた。

■アジアインスティテュート設立

大田市は韓国を代表する科学技術都市。パストリッチさんは、名門韓国科学技術院(KAIST)などさまざまな研究機関で行われる共同研究といった各種プロジェクトに参加。筑波大学の研究機関にも訪問したという。環境問題に目覚めたのもその頃だ。知事を補佐する傍ら、「Korus House」を発展させる形で、民間シンクタンク、アジアインスティテュートを設立。自ら所長に就任した。自由な発言の場を得たパストリッチさんはこれまで、米政治学者フランシス・フクヤマ氏やジョセフ・ナイ氏など世界の碩学たちと対話を重ねてきた。

11年からはソウル市に活動の拠点を移し、慶熙大学で教え始める。執筆活動にも力が入った。これまで韓国語で5冊を上梓し、うち3冊がベストセラー。中でも、「韓国人だけが知らない別の大韓民国」は朴槿恵(パク・クネ)元大統領が高く評価し、講演やテレビ出演も多くこなした。

今年7月には、待望の日本語書籍「武器よさらば:地球温暖化の危機と憲法九条」を出版した。ニュースサイト「ハフィントンポスト」に寄稿した文章などを加筆修正したもので、これまでの執筆活動の集大成という位置付けだ。パストリッチさんは本の中で、今後の日本の安全保障について「環境問題の解決なしにあり得ない」と指摘。大田市時代に日本の科学技術力を知った経験を基に、「日本は『新安全保障』でイニシアチブを取る能力と資格が十分にある」と訴える。

■東アジアと米国をつなげる

パストリッチさんは来月、12年間の韓国生活を整理し、母国に戻る予定だ。拠点は政治の中心ワシントン。「韓国と米国だけでなく、東アジア全体と米国をつなげる役割を果たしたかった」と話す。その基盤となるのがアジアインスティテュートだ。ワシントンとソウルの他に、日本にも法人を設立。ベトナム・ハノイにはオフィスを開設した。

「米国では海外生活を通じて大きく成長した姿を見せたい」と話すパストリッチさん。活動の舞台は整った。アジアインスティテュートを世界的なシンクタンクとして育成すべく、大きな一歩を踏み出そうとしている。(韓国版編集部=坂部哲生)


関連国・地域: 韓国
関連業種: 社会・事件

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